【ネタバレ注意】ガラスの仮面第2巻その⑨【熱が40度・・・】
2016/07/31

劇団つきかげの創立第一回公演「若草物語」が初日を迎えた。
客席には姫川歌子・亜弓親子。
大都芸能の速水真澄、劇団オンディーヌの演出家小野寺一。
その他女優や記者、評論家など関係者ばかり。
上演のベルが鳴り月影千草が壇上挨拶を始めるとフラッシュの嵐。
「うっ 記者がなぜこんなに!?」
さすがの月影先生もうろたえる。
「邪魔者は消せということですよ。」
すべては速水真澄の策略だった。
記者達を煽り、評論家達を呼び寄せ、
劇団つきかげを再起不能なほどにこき下ろし、
息の根を止めるというものだった。
父親譲りの仕事の鬼っぷり。
「人間的な暖かい血がその胸に通うことはないのかね?
君に憧れている女優達も多いというのに」
「ははは冷酷な鬼が誰かを愛してはおかしいでしょう。」
小野寺と真澄の会話が、速水真澄の鬼っぷりをさらに引き立てる。
一方、関係者だらけの観客を見て緊張する劇団員達。
マヤはとりわけ青い顔。
グラスを落として割り、立ち上がるとよろめき、
他の劇団員達も心配する。
幕が開いた。
客席ではかつて月影千草の内弟子であり、
紅天女を虎視眈々と狙っていた姫川歌子。
そして仕事の鬼速水真澄。
舞台袖では月影先生。
「速水真澄。小野寺一。わかったわあなた達の魂胆が。」
そんな月影先生に話しかけるのは不遇の寄宿生・春日泰子だ。
「マヤちゃんのことでお知らせしたいことが。
熱が40度あるんです。
黙っていてくれって言ったんです彼女。
でもお知らせしておいた方が・・・と」
「熱が40度・・・」
舞台袖で花束を落とす音。
「本当ですか、それは?」
差し入れを持った桜小路優だった。
ツッコミどころは非常に多い。
まず同じ舞台人とはいえ、舞台袖まで他団体の俳優が入って来れるものなのか?
そして月影先生、一緒に住んでいるのにマヤの容態に気づかなかったんか?
そして春日泰子。
黙っていてくれと言われたが、お知らせしておいた方が・・・て
上演開始後に言うなら黙っておいた方がましやわ。
そんな舞台袖はさておき、若草物語は上演されて行く。
とりわけ目立つのはジョー役の青木麗。
客席では少年の女装疑惑も持ち上がるほど。
マヤは熱のせいか頭がくらくらして台詞を飛ばす。
客席では酷評。
というか上演中にしゃべるな。
一方ロビーで出会った姫川亜弓と桜小路優。
亜弓は冷水機で水を飲んでいた模様。
上演開始直後や。席にいとけ。
しかもセレブなんやから水道水飲みにくるな。
客席に戻る亜弓。
「おそろしいわ・・・あの子」
「あの子がどうか?」
そうつぶやいた亜弓に訪ねる真澄。
「あの子病人よ。
40度の熱を出しながら平気な顔で舞台に立っているのよ。」
衝撃の真澄さん。以下かなりの長い独白
「40度の熱・・・まさかあんなに明るい笑顔なのに
しかし病気だなんてみじんも感じさせない
なんて子だ・・・・
なぜそこまでやるんだ?
その笑顔の仮面の裏に
様々な苦しみや悲しみを隠しているというのか?
一体何が・・・?」
一体何がって、役づくりで雨に打たれて高熱。
苦しみ悲しみって真澄さん勘ぐり過ぎ。
そして早速人間的な暖かい血がその胸に通い、
冷酷な仕事の鬼設定が崩壊した。
一方舞台上のマヤ、ミルクの壷を落として割ってしまう。
舞台上で固まるマヤと出演者。
そして客席で固まる速水真澄。
お前は固まらんでよし。
第三章に続く。