【ネタバレ注意】ガラスの仮面第5巻その⑥【あなたは演劇をやめられはしない】

      2016/09/24

ガラスの仮面・第5章
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全日本演劇コンクールにて入賞を逃した劇団つきかげ。
一週間後には現在の劇団研究所から退去しなければならない。
月影先生の借金はどうなるのであろうか。
その後返済している形跡はない。
というかお金を稼いでいる形跡すらない。
往年の大女優恐るべし。

東京に戻ったメンバー。
今後のことが心配だ。
これからどうすればいいのか。
大道具と小道具をめちゃめちゃにしたやつのせいだ。
あれがなければ入賞できたのに。

出て来るのは不安と愚痴ばかり。
自分たちが出演していれば入賞間違いないという自信。
マヤが一人で乗り切ったからこそ、
あれほどの評価を得たのだとも思うが。

一方月影先生は夜空を見上げていた。
劇団を失うことになるにもかかわらず心は晴れやかだ。
悲しみも腹立ちもない。
むしろマヤが一人芝居で見せた天性の輝きに魅了されていた。

「あの子はやはり見込み通り、いや見込み以上だった。
 紅天女をやれるのは日本中でただ一人・・・・」

マヤ以外の劇団員達が慕ってくれているにも関わらず、
もはやマヤ以外は眼中にない外道は
天罰が下ったかのように咳き込む。

その様子を見ていたマヤ

「ごめんなさい、私のやったことが演劇精神を汚すことになるなんて」

「いいえマヤ。先生は満足よ
 大会の勝ち負けなどどうでもいい
 観客はあなたを選んだ。それだけで満足よ」

気持ち悪いくらい優しい月影先生は二度と現れることはあるのか。
そしてその優しさに便乗するマヤ。

「あたしも先生と一緒にいきます。連れてってください!
 あたしお芝居やめたくありません。
 先生にもっと演劇を教えてもらいたいんです!」

そのマヤの心の叫びを聞いた月影先生。

「そうマヤ・・・やめられはしない
 あなたは演劇をやめられはしない・・・」

洗脳にも似たこの言葉。闇の深さを感じる。
己の野望の種を手放さずに済み一安心と言ったところか。

そこに現れたのは
麗、美奈、泰子、さやかの四人

「マヤ!抜け駆けはずるいわよ」

「先生、私たちも着いて行きます。
 麗とマヤは先生と一緒に
 私と美奈と泰子は仕送りをもとに下宿し
 演劇の勉強をしようってさっき話し合ったんです。」

今後のプランのみならず部屋割りまで決めてしまうという。
先生には着いて行きたいけど、
先生と同じ部屋はちょっと・・・という
補欠の距離感が感じられて悲しい。

そして秋には公演をやって、オンディーヌに負けないと意気上がるメンバーたち。
その姿を見て感極まる月影先生。

ぱっと見感動的なシーンではある。
しかし実のところどうか。
先ほど月影先生は「紅天女をやれるのはマヤ一人」と確信している。
他のメンバーが全国から才能と実力を見込まれスカウトされて来たとはいえ、
もう結果は目に見えているのである。

ドラフト1位が集められても、エースになれるのは一人なのである。
演劇を続けるのはかまわないが、
つきかげにいても「紅天女の芽はない」と伝えるべきではなかろうか。
それともマヤを慢心させず、咬ませ犬としての役割を与え、
「仲間」というキーワードでマヤをつなぎ止めておく作戦なのだろうか。
恐るべし劇団つきかげ。

そして引越の日がやってきた。
演劇研究所は青柳プロのタレントスクールになるそうだ。

先生とマヤと麗は六畳一間のアパート。
その他は近くのパン屋の二階に引っ越す。

「ねえ、麗の家は東京なんでしょ。
 なのになぜ家に帰らないの?」

マヤの問いに思い詰めた表情の麗。

「家・・・か・・・!
 演劇が好き。
 みんなが好き。
 だからここにいる。
 それだけさ」

非常に意味有りげで寂しげな麗の表情。
家庭に問題を抱えているのか、役者をやることに反対されているのか。
この麗が実家に帰らない理由はのちのち
明かされることはない。

あからさまにあざといほどに、
はり巡らされた伏線を
一切回収しない、美内マジック炸裂である。

一方大都芸能。
社内ではマネージャーと思しき社員達が談笑している。

「最近めぼしい新人がいない」
「どこかにいい新人おらんか」
「そう言えばこの前演劇大会でたった一人で観客を釘付けにした少女がいた」
「引き抜き屋の名スカウトマン、取手氏が目を付けたそうだ!」

その社員の会話を耳にした若社長・速水真澄。
そのただならぬ雰囲気に圧倒される社員達。

「大都芸能がいただく・・・
 あの少女は俺が・・・」

大都芸能なのか、俺なのかどっちやねん。
おそらく後者。
とても卑猥だ。

そして引越を終えたマヤ。
アホみたいにはしゃぎながら買物に出かける。
その姿を車から見ていたのは姫川亜弓だ。

「全くなんて立ち直りの早い子
 劇団がつぶれてどんなに気を落としているかと思ったら・・・」

わざわざ見に来たのか・・・?

「あの子がいつどんな形で世の中に現れるか
 それが恐ろしい・・・・」

マヤを巡る人達の様々な思いに気づくことなく、
マヤの新生活がスタートしたのだった。

つづく

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第5巻・あした草(1)