【ネタバレ注意】ガラスの仮面第8巻その①【もし愛しているのなら席へ戻れ!】

      2016/10/23

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笑顔で走ってくるキャサリン。

「行こうキャシー!荒野へ!」

キャサリンの手を取るヒースクリフ。
もちろんこれは演出を無視した真島良のアドリブだ。

舞台袖では大人になった後のキャサリン役・夏江梨子と
大人になった後のヒースクリフ役・加川英明が青ざめていた。

「まいった。このあともあの二人に舞台を任せたくなってきたよ」

と敗北宣言?
役者としてはキャリアも長く、ネームバリューもあり、名前だけで見にくる客もいる。
この「嵐が丘」は3/4までは夏江梨子と加川英明の舞台である。

「我々の方が有利なんだ。本来なら問題にもしないところだ。なのに・・・」

真島良はともかく、マヤのひたむきで情熱的な演技に妙に惹きつけられ不安を覚えるのだった。
子役と侮っていたものの、自分たちの存在感が脅かされることを察知し、
同じ役でないマヤに対して「有利」とか「問題」とか、
VS役者の競争意識を感じてしまうのは夏江梨子も同様であった。

そして荒野に向かった二人。
マヤ演じるキャサリンはヒースクリフを見つめたまま動きもせず、
ただひたすらセリフを言い続ける。
ヒースクリフはキャサリンから視線を外すことができない。
広い舞台でただ二人至近距離で見つめ合いながらセリフを言い合う二人の芝居。

まず舞台袖の共演者がその異常事態に気づき、
真島良の恋人風の絵川由紀が気づき、
速水真澄が気づき、桜小路優が気づき、
他の観客が気づき、舞台袖の演出家が気づく。
演出家気づくの遅すぎ。
しかも演出家はその稚拙ながらも舞台でただ見つあうというそのアドリブに感心しきっている様子。
観客も当初はざわつきながらも、その直球勝負に魅了されていったのだった。

しかし一人耐えきれないものがいた。
桜小路優は席を立ち、会場を後にしようとする。

「最後まで見てやれ。あの子が好きなんだろ。」

彼を止めたのはずっと劇場入口の扉付近で見ていた速水真澄。

「自分の好きな少女が一生懸命舞台をつとめているんだ。
 もし愛しているのなら席へ戻れ!
 どんなことがあっても最後まで見ていてやれ!」

「あなたに何がわかるっていうんですか!
 僕の気持ちなんか何も・・・
 何もわかりゃしないくせに!」

速水真澄無言でスルー。もちろん彼の気持ちは彼以上にわかっているからだ。

「失礼しました。言葉が過ぎました・・・・」

劇場を去っていく桜小路優と入れ替わりに現れた秘書の水城冴子さん。
敏腕の彼女、帰りの車を手配してくれたのだが、
当の若社長は

「最後まで見ていく・・・」

このやりとりから見るに、速水真澄も遅れて見に来て終わる前に帰る予定だったようである。
しかし桜小路優に対して言葉を重ねるうちに、自身の気持ちへも重なっていったのか。
それとも途中で帰った桜小路優に対して最後まで見ることで優越感を感じていたかったのか。

仕事の鬼と言われる速水若社長のスケジュールは、
本人のその日の気分によってフレキシブルに変更される。
それに臨機応変に対応する水城さんの手腕は生半可なものではない。

舞台は子役二人が登場する場が終わった。
客席は静寂でその場を見送った。
舞台袖では二人を共演者とスタッフが迎える。
しかしキャサリンの仮面を被り続けているマヤは近寄りがたい雰囲気。

「この夏江梨子ともあろう者がどうしてあんな子が気になるのかしら?
 なぜこんなにも不安で、こんなにも動揺するのかしら?
 わからない・・・わからないわ・・・!」

ザ・大女優、夏江梨子さんはこうして本番に向かっていった。

一方のマヤ、楽屋にてコールドクリームでメイクを落とし、
衣装を脱ぎ、普段着に着替える。

「こんにちは、あたし」

鏡の自分に向かって満面の笑顔。

これまでになかった、仮面を脱ぐ瞬間の演出である。
以前は仮面を被る際の目がいってる表情や、
共演者やスタッフが毎回のように驚かされる雰囲気だけであったが、
今回の嵐が丘キャサリン役では、仮面を外す際にも儀式が必要なのか。
それほどキャサリンの仮面はでかかったのか。
それとも毎回この「こんにちはあたし」を一人楽屋で行っていたのだろうか。
いずれにしても頭おかしい。
そして何より、「こんばんは」の時間帯である。

今回の嵐が丘では、稽古中ならびに本番では共演者(とくにヒンドリー役の彼)をサンドバック状態にし、
本番中では自身の演技や気持ちを優先させることで、衣装を引き裂き、舞台の段取りや動きを無視。
これでは舞台あらしと命名されても仕方なかろう。
そしてカーテンコールでは子役の二人は登場しないのだろうか。
大女優が舞台に登場しているにもかかわらず、先にメイクを落とし衣装を脱いでしまって、
役者の仁義としてよいのだろうか。

そんな感じで嵐が丘は続いていく。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第8巻・舞台あらし(2)