【ネタバレ注意】ガラスの仮面第8巻その⑧【死んでもいや・・・か】

   

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病院に戻った一同。
ベッドには月影先生、
そして傷口を消毒してもらっているマヤ。

「正気じゃない・・・全く。
 あなたもこの子も。」

お前もな。速水真澄。
中学生女子の服を脱がしたにもかかわらず、
涼しい顔をして病室でタバコを吸っている。

「あなたにはわからないのよ。真澄さん。
 情熱をかけられる何かがあるってことの幸せが・・・」

しれっと真澄の悩みを言い当ててしまう月影先生。

「私の子供の頃のこと、お父様に聞いたことある?」
「少しは・・・」

ついに月影千草の過去が明かされる。
長いので以下抜粋

  • 思い出したくもないほど悲惨
  • 両親はなく、貧しかった。
  • 盗み、すり、かっぱらい、なんでもやった。生きるために。
  • 何のために生きるでもなく、ただ命があるから生きていた。
  • ゴキブリやネズミのように、虫けらのように生きていた。
  • 劇作家の尾崎一蓮と出会い、演劇の世界を知り、初めて生きがいということを知った。
  • 生きがい=命をかけられるもの、これがなくなったら死んでしまうかもしれない激しいもの。
  • 生きがいである演劇をすることで、生きている自分の価値を知った。

子供の頃というか、生きがいの話である。
そして「生きるためになんでもやった」と武勇伝を語るわりには、
「盗み、すり、かっぱらい」全部窃盗。
名前を変えただけで全部罪状は同じである。

そして「生きがい」の話はマヤに向けられる。

  • あの子もそう。どんなことがあっても演劇を捨てられはしない。
  • どんな人間でも生きている価値がある。
  • マヤの場合はそれが演劇。
  • 演劇を取ってしまったらただ時を過ごすだけの人生を送ることでしょう。

演劇以外のマヤは無価値な人生ということらしい。

そしてまだ続く月影先生の昔語り。

「生きがいがあるということは人間として生きることの価値を自分で見出すこと。
 尾崎一蓮も私にそう教えてくれたわ」
「尾崎一蓮を愛されていたのですか?」
「ええ・・奥様のあるあの方をね・・・
 彼は私を女優としては愛してくれたけれども
 生涯女としては愛してくれなかった・・・
 奥様の亡くなった後もね・・・
 尾崎一蓮が死んだ時、私に演劇がなかったら立ち上がれなかった・・・
 きっとともに死んでいたわ。
 尾崎一蓮、彼を自殺に追い込んだのは真澄さん
 あなたのお父様、速水英介よ。」

窃盗歴に始まり、生きがい、恋愛、恩人の死とその真相。
なかなか壮大な話である。
しかし何事もなかったかのように、読者は次の展開を強いられてしまう。

治療を終えたマヤが病院を後にすると速水真澄が待ち構えていた。

「送っていこうかケガ人。」

嫌がるマヤの腕をとり、突き飛ばして車に押し込み、ドアのロックもかけるという暴挙。

「鍵かけてあるのね!どこへ連れて行くの人さらい!誘拐犯!おまわりさ・・・」

叫ぶマヤの口をふさぐ。
ストーカー、誘拐、拉致監禁の手口である。

そして何事もなかったかのように、近況と今後をリサーチする念の入りよう。
生活、今後の設計、進学など。

しかしマヤは高校に進学できる余裕もなく、
中学校を卒業したらバイトしながら演劇を勉強するとのことだ。

ここから変態おじさんの攻勢。

  • 君の年頃で働きながら演劇を学ぶのは難しい。
  • 学歴はさておき演劇をやる上で余分な知識はあったほうが良い。
  • 自分の将来を大切にしたいのなら今のところを出ろ。
  • 大都芸能が一人前の女優に育てよう。
  • 寮の部屋を提供。
  • 高校の学費も援助として出資。
  • 月影先生から離れろ。

なかなかの圧倒的好条件である。

「嫌だと言ったら?」
「大都芸能の速水真澄にたてつく気か?」
「ええ」
「後悔するぞ」
「死んでも嫌です」
「死んでも・・・いやか・・・」

上記のストーカー誘拐拉致監禁と合わせ、
恐喝にも及んだ模様。

無事に?家にたどり着いたマヤ。

「たとえこじきになったって、大都芸能のお世話になんかなるもんですか!
 早く行かないと石ぶつけるわよ!」

走り去るおじさんの車。

「死んでもいや・・・か」

大事なのことなので二回言った車内のおじさんの顔は悲しげであった。

そして後日。
学校で先生から呼び出され校長室に行くマヤ。

何と奇特な人がいて、マヤの高校進学の入学金や学費を援助してくれる人がいるというのだ。
進学先は一ツ星学園。

何でも演劇活動で有名で、高校の演劇大会では毎年のように優勝。
芸能人やタレントも通う特別コースもあるとのこと。

当然驚くマヤ。いったい誰が?
しかし、校長も依頼人の依頼人から聞いただけで詳しいことはわからないが、
マヤの演劇の素質を非常に買っており、
学園生活を楽しみながら演劇の才能を伸ばしてほしいとのこと。

そしておきまりの紫のバラと手紙。

「一ツ星学園は演劇活動の盛んな学園です。
 ここなら伸び伸びと演劇をやりながら学園生活を送れることでしょう。
 どうか好意を受け取ってください。
 あなたが女優として成長していくのを楽しみにしています。
 あなたのファンより」

マヤ号泣。
そしてその好意に報いるためにも今後の精進を誓うのだった。

自然稽古にも熱が入る。

「へーまるで足長おじさんだね!」

稽古場の仲間たちもマヤの進学が叶ったことを喜ぶ。
ただしその実は変態ロリコンおじさんである。

そしてマヤはそんな経緯も知らずに
人形の心をつかむ決意をするのだった。

今回のポイントは2点。
まず、月影先生の過去が語られたということ。
窃盗のくだりはさておき、
月影千草の演劇の師であり、恩人であり、愛した男である尾崎一蓮。
その人物を自殺に追いやったのが速水真澄の父、速水英介であるということが明かされた。

もう一点はマヤに大都芸能の援助を申し出るも断られた真澄が
紫のバラの人として、高校進学の援助をしたということである。

月影先生の入院費を援助したのに続き、
二回目の金銭的援助である。

速水真澄は裕福そうなのでその金額は彼にとっては大したものではないのだろうが、
それと引き換えにロリコン変態の称号をさらに極め、
さらにはストーカー誘拐拉致監禁脅迫まで重ねてしまったのはかわいそうである。

そういえば、マヤと同い年の水無月さやかはどうしたのだろうか。
彼女はマヤと同じく寄宿生として寮に暮らしていたが、
マヤのように家出少女ではないから親の援助で普通に進学するのだろうか。

かたや家出少女の素人は圧倒的な才能を認められ、
役は優遇され、注目を受け、見ず知らずの他人から学費まで援助してもらい、
かたや月影先生にスカウトされて中学生ながら上京したものの、
鳴かず飛ばず、同い年の素人に先を越され、便利屋として使われ、
劇団は実質解散、当初予定していた進学もなくなり、
実家の親に泣きついたということだろうか。

マヤの進学を喜ぶコマに描かれているのは、
青木麗と春日泰子、劇団一角獣の団長と恵子さんである。
さすがに美内すずえ先生も、このコマでさやかを描写するわけにはいかなかったということだろうか。

つづく

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第8巻・舞台あらし(2)