【ネタバレ注意】ガラスの仮面第9巻その②【さようなら。キャシー・・・・】

「石の微笑」は大好評のうちに千秋楽の前日を迎えた。
終演後にもかかわらず劇場前は人だかり。
「麗さま!握手して」
多数の女性ファンに囲まれて困惑する青木麗。
「僕たちここの劇団に入りたいんですけど・・・」
「ようし。今度の日曜にテストしてやる。」
ここ数日の大入りのためか、かなり上から発言の劇団一角獣堀田団長。
そしてマヤにもお客様が。
「嵐ヶ丘」にてマヤと共演して以来というもの、
キャシーの幻影に囚われすっかりおかしくなってしまった真島良である。
「毎日見に来てたんだよ。気づいてた?」
ストーカーやん。
完全な狂信的ファン心理に基づく発言。
「ええ」
と返事するマヤの背後に「ええ、ヒースクリフ」とキャシーの幻影を重ねる真島良。
頭おかしい。
そして二人は喫茶店にて雑談。
今後の事、高校進学の事、進学を援助してくれたファンの事。
「うらやましいなあ。そんなファンがいて。」
「やだあ。真島君なんかファンがいっぱいいるでしょ!」
「そんなことないさ。僕自身誰かのファンだったりするもの。
毎日君を見に来てる・・・
つきあってくれませんか?ぼくと」
何のことのない会話から一気に告白へと持ってくこのスタイル、
真島良のトークセンスはなかなかのものである。
その突然の告白に当然戸惑うマヤ。
しかし百戦錬磨の真島君は一気にかぶせる。
- 舞台の上のキャシーは僕の理想
- 今まで知り合った女の子とは違う
- やさしさと愛情が激しさとなって感じられる君のキャシーに惹かれた
結局舞台上のキャシーの幻影を追いかけていることを告白する。
- 真島君には由紀さんという素敵な人がいる
- あたしは何のとりえもないつまらない子
- 舞台の上のキャシーとは違う
とまどいながらも答えるマヤ。
キャシーに惹かれたという切り口は失敗だったようだ。
- キャシーの面影を求めている僕はバカだ
- 舞台の上の君が好きだと言わずにはいられなかった
- 舞台の上の君のキャシーに恋していた
- 誰か好きな人でもいるの?
もうひと押しすれば落ちそうにも関わらず、深追いはしない。
真島良の作戦負けである。
そしてうなずくマヤ。
「そうか。初めて振られたな。」
ただただ謝るマヤ。
「いいよ謝らなくて。どんな人?」
「ええ。とても優しくて親切なの。
いつも私の事を気にかけてくれるの。」
「それは恋なの?」
「恋!?」
真島良のこの質問は実に的確である。
優しい、親切、気にかけてくれる、いずれも桜小路くんからの気持ちやアクションであり、
マヤが彼に対して何を思ったか、何をしたのか、という点がわからない。
つまり、本来「Give&Take」であるべきものが、「Take&Take」であるというマヤの天然魔性っぷりを裏付けている。
喫茶店を出た二人は別れる。
「嵐ヶ丘の舞台のあいだ、僕は幸せだったよ。ありがとう。」
まだ言うか。
そして去りゆくマヤの背を見ながら
「さようなら。キャシー・・・・」
まだ言うか。
一方のマヤは泣きながら走る。
「ごめんなさい真島君、あんなにいい人なのに・・・
桜小路君、今度の舞台にはどうして一度も来てくれないの?
会って話したいことがいっぱいたまってる・・・
桜小路君・・・・」
結論すべてマヤの自己都合である。
客観的に見て振り回されているのは桜小路君だと思うのだが。。。
天然魔性女、恐るべしである。
そして翌日。いよいよ千秋楽。
「いよいよ千秋楽だ。
これが成功したら次がやりやすくなる。張り切るぞ!」
支度をしながら張り切る青木麗。
「頑張るぞ」はよく聞くが「張り切るぞ!」というのは珍しい。
当初いやいやながらも男役になり、
公演中にも女性ファンに囲まれ複雑な気持ちだった麗も
いよいよふっきれた感がある。
一方のマヤにはお客さんが来ていた。
なんと横浜の悪名高き中華料理店・万福軒の娘、杉子だ。
劇団つきかげが潰れてからマヤの行方がわからず、ようやく見つけたらしい。
「いい?マヤちゃん、これから話すことをよくきいてちょうだい」
- マヤの母さんが行方不明
- 去年の秋ごろから胸を患い、今年に入ってからは寝たきりだった
- この前店をやめて、山梨の結核療養所へ。
- しかし三日前、行方不明になったと療養所から連絡が来た
- マヤに会いにこっちに来ているのではないかと。
「マヤちゃん、おばさんの行方に心あたりはないの?」
「ううん・・・母さん行くところなんてどこにもないもの・・」
衝撃のあまり杉子に持たれてしまうマヤ。
この二人こんなに仲良かったか?
杉子さんもしばらく見ないうちにいい人になってる。
しかしマヤの母親。
意を決して退職、療養所入りを決めたにもかかわらず、
早々に行方不明になるとはどういうことなのか。
やはり列車の中でマヤが活躍している週刊誌の記事を見たことで
いてもたってもいられなくなったのであろうか。
本当にこの話、本番前には何かが起こる。
つづく