【ネタバレ注意】ガラスの仮面第9巻その④【並の子じゃありませんよ。】

      2017/02/11

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「石の微笑」千秋楽の夜。
マヤは自宅のアパートにて麗と話していた。

「お母さんが行方不明・・・そうかそんなことがあったのか・・・・」

麗はどうやらマヤの母親の事情を初めて聞いた様子。
朝のただならぬ雰囲気でわかりそうなもんだが。

  • 役者はどんな時でもその仮面を外しちゃならない・・・
  • どんなに悲しいことや苦しいことがあってもそれは自分自身の悲しみや苦しみであって、役の人物とは関係ない。
  • 演技をする前にまず自分を押し殺さなければならない・・・ガラスの仮面だな・・・
  • 私たちはガラスのようにもろくて壊れやすい仮面をかぶって演技している。
  • どんなに見事な演技をしているつもりでも、どうかすればすぐに壊れて素顔がのぞく。
  • なんて危なっかしいんだろう
  • このガラスの仮面をかぶり続けられるかどうかで、役者の才能が決まる。

と一方的に今日の出来事から演劇論を語りだす麗。
劇中で「ガラスの仮面」というワードが出てきたのは初めてである。

聞いているマヤは紅天女を目指す自身の今後、
そして自身が挫けたら台頭するもう一人の紅天女候補のことを思い、
さらには布団の中では今朝見かけた母親を思い涙を流すのだった。

翌朝、麗が目覚めるとマヤはいなかった。
母親を探すため東京中を歩き続けていたのだった。
帰宅は夜11時。

「馬鹿だね。この東京中歩いて探しまわるつもりだったのかい?」
「だってだって家の中でじっとしていられなかったんだもの・・・」
「東京中歩き回ったって、おふくろさんと出会える可能性は千万分の一もないよ!」
「千万分の一でもいいの。ほんのわずかでも可能性があればそれに賭けたいの。」

ちなみにその「千万分の一の可能性」は昨日の朝、
本番に向かう途中に発動済みである。

呆れながらもマヤのために濡れタオルを用意した麗。
玄関ではマヤが力尽き眠っていた。

「無茶な子だよ本当に・・・
 この子のやることは見当もつかない・・・
 紅天女候補・・・
 ほんとにこの子が演劇界の幻の名作・紅天女を演る日がくるんだろうか・・・
 このマヤが絶世の美女、神秘的な梅の木の精を本当に演れるんだろうか・・・
 ねえ・・・マヤ・・・・」

普段は状況の解説要員として長口上が多い麗であるが、
この独白はかなり珍しいものである。
力尽き眠ったマヤに対して語り続ける麗。
その描写はシルエットで哀愁を感じさせるものがある。

かつては劇団つきかげ寄宿生の最年長。
月影千草に才能を見出されスカウト、経験者のAクラスでメインを張り、
劇団つきかげのエースと目されていたにもかかわらず、
後から来た素人の北島マヤにあっさりと紅天女候補の座を奪われてしまった。
劇団つきかげの設立の経緯からして、
青木麗も「紅天女候補」の候補であったと思われる。
にもかかわらず、マヤをはじめつきかげメンバーの兄貴として慕われ、
愚痴一つこぼさず地下劇場のアイドルとしての立場に甘んじている。
当然紅天女や自身の今後に対して思うところが多々あるだろう。
そんな青木麗が紅天女を語ると、なんだか深いものがある。

翌朝もマヤは東京中を母親を探し歩き続けていた。
なかなかの豪雨の中、傘もささずに。
それでも母親のことだけをただ思い続けていた。

所変わって大都プラザ劇場。
こちらでは若社長・速水真澄が関係者に囲まれてご満悦だ。

  • 先月の歌謡ショーは大都芸能の力で大成功。
  • 今回の「夢宴桜」は大都芸能の名優ばかりが集まって豪華絢爛。
  • 中でも姫川亜弓の華族の令嬢役は大評判で主役の大人たちを完全に食っている。
  • やはり姫川亜弓は姫君役や令嬢役が一番ぴったり
  • 将来どんな大女優になるか楽しみ。

どうやら「夢宴桜」の本番直前のようである。
そしてその本番直前にハプニング。
役者の一人が階段から足を踏み外して捻挫、
急遽代役を探さなくてはならないことに。
開演一時間半前に、10代の女優を探すという無理難題である。

速水真澄が劇場の外に出ると、「都合よく」マヤが雨宿りしていた。

「ズブ濡れじゃないかどうしたんだ?」
「ほっといてください。」
「ほっとけないな。この劇場は大都のものだ。その前でべそかいていられたんじゃ、人は何かと思う。」

とマヤの腕を強引に掴む。
弁舌さわやか、大都劇場の面目を守るためという理屈だが、
中学生女子の腕を掴んで離さない男をみたら、人は何かと思うだろう。

「君に出演依頼だ。誰か演出家の太田先生に知らせて来い!代役が見つかったとな。」
「代役!?」

いぶかしむマヤ。

「この子は!」

そして呼ばれてやってきた演出家の太田先生もマヤを見て驚く。

「ご存知でしたか?」
「ええ、私も全日本演劇大会は観ていましたから。
 それに正月の東洋劇場の嵐ヶ丘も観ました。」

なかなか演劇界では名前と顔が売れてきているようである。

「では話が早い。この子に何をやればいいか教えてやってください。」

「あたしはまだ引き受けるともなんとも!」

「これは正式な舞台の出演依頼です。
 大都芸能はケチではありませんよ。北島マヤさん。」

大都芸能と速水真澄はケチではないが卑怯であることは周知の事実である。

そして急な展開に驚き、心配になる太田先生に対しても

「並の子じゃありませんよ。」

の一言で一蹴。さらに

  • バイトをやるつもりだったんだろう。これこそいいバイトじゃないか。
  • 個人的な恨みだけで役を選ぶほどちっぽけな役者じゃないと思うがね。
  • 以前話していたたった一人の熱烈なファンもこの劇場へ来ているかも知れない。

最後の一言が決め手となり、マヤは出演を決意したのだった。

しかしながら速水真澄の弁舌には驚かされる。
太田先生もこの大舞台の演出を任されているほどの方。
その方の心配を一蹴する勢い。
マヤに対しても金銭的理由、役者としてのプライド、紫のバラの人という心の支え、
多角的に理由や根拠を並べ立て、ロジカルにかつ、物心両面から揺さぶり、
相手を口説き落とすというスキルはなかなかのものである。
しかしこれが中学生女子に対してというのが大問題であるが。

当のマヤもついさっきまで母親を探し、母親を思い涙に暮れていたにもかかわらず、
舞台への出演を決意するという不思議なメンタル。
この切り替えの早さと集中力、まさに「ガラスの仮面」である。

そして太田先生に連れられて楽屋に入り紹介されたマヤ。

「北島マヤ・・!?」

ざわつく楽屋。やはり演劇界では名前が売れ始めているようだ。
そしてもちろん、楽屋には姫川亜弓がいる。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第9巻・舞台あらし(3)