【ネタバレ注意】ガラスの仮面第10巻その③【闇と沈黙の中で・・・】

   

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なかなかヘレン役が掴めずにいるマヤ。
ここでマヤならではの思い切った行動に出る。

「そうだ、ヘレンとして生活すればいいんだ!」

思い立ったら即変態行動のマヤは、
倉庫番の山下奥さんに

「おばさん粘土ある?粘土!?」

いきなり粘土を求める女子高生はどう考えておかしい。

「ええ、ありますよ裏の物置に。」

子供がいるでもないのに、物置に粘土を常備し、
なおかつそれが「当然やろ。知らんの?」と言わんばかりのおばさんもおかしい。

そしてご丁寧にも「粘土」と書かれた容器に入った粘土をちぎると両耳に詰め、
さらに目隠しをしたマヤ。

「なるんだ!ヘレンと同じに。
 暮らしてみよう闇と沈黙の中で・・・
 三重苦のヘレンケラー!」

マヤの独白はいちいち芝居がかっていて素晴らしい。
特に「闇と沈黙の中で」の言葉のチョイスが気に入った。

そして翌朝。
別荘番の山下夫妻が食事の準備にやってきた。
インターホンを鳴らすも反応がない。
山下旦那が異変に気付いた。
全ての雨戸が閉められていた。

鍵を開けると屋内は真っ暗。

「こりゃあ一体全体・・・何があったんだ!?」

真っ暗な屋内には倒れて破損した石膏像、
同じく割れた食器類。
すっ転がった椅子や、破れたカーテン。
泥棒でも入ったのかと思う現場の惨状である。

マヤを心配した夫婦が二階へ上がると
鏡は割れ、花瓶は倒れ、カーテンは破れ、
そして衣服はボロボロ、キズだらけのマヤが呆然と座り尽くしていた。
この状況、誰が見ても婦女暴行の現場である。

マヤのただならぬ雰囲気にためらいながらも
マヤの肩に触れる山下さん。

「誰?あたしに触った?誰の手?
 別荘番の山下のおじさんにおばさん?
 じゃあ今は朝・・・・」

山下夫妻の心配をよそに、的確に状況を判断して時間を確定するマヤ。

「どうしたんだマヤちゃん?
 これはいったいどういうわけなんだ?」

警察への通報も辞さないほどの山下さんのテンション。
しかしマヤは山下さんの手を取ると、
手のひらに文字を書いた。

「し・ん・ぱ・い・・・し・な・い・で・・・」

めんどくさいので一気に書く。

  • 心配しないでこれは演技の稽古
  • 三重苦のヘレンケラーの役をやるためにこんな格好をしているだけ
  • ヘレンの気持ちとヘレンの生活をつかめるまでこうして暮らすつもり
  • どうかこのままにしておいて、あたしに構わないで

そしてあっさり帰っていく山下夫婦。

「大丈夫かねえマヤちゃん。あのままにしておいて・・・」

マヤだけではなく、別荘の方も心配である。
食器は割られ、家具は破壊され、カーテンは破られ、
もちろん金銭的な損害を山下さんが被ることはないであろうが、
管理人としては心中穏やかではあるまい。

教会が取り壊されたことで稽古場の確保がままならなくなったマヤに、
稽古場を提供する意味で別荘に招待したのだが、
さすがの速水真澄もマヤがここまで破天荒な行動にでるとは思わなかったであろう。

「演技の稽古をするなり遊ぶなり思いっきり好きにしてください」

の範疇を大きく逸脱している。

しかしマヤはそんな自身の非常識にも気づかず、
腹が減ったので階段を降り、
足元つまづきながら、冷蔵庫にたどり着き、
パックの液体を飲み、(おそらく牛乳か?)
ハムと思しき物体をそのまま食べる。

昼か夜かもわからない空間の中で、
退屈を覚え、眠り、腹を空かしてまた起きるを繰り返していた。
だんだんうまくなっている様子。

缶詰を発見し、缶切りを探し、
ノールックで缶を開け、
スプーンを探し当てるも、
やっとの思いで開けた缶をひっくり返してしまう。

無常を覚えたマヤは、母のこと、桜小路くんのことを考えていた。
月影先生や、麗のことは思い出さないあたり非情である。

一方、とあるパーティー会場。
ここでは速水真澄主催のパーティーが催されていた。
とある酔客が、速水真澄に語りかける。

  • 政界財界のお偉方や文化人の集まる避暑地
  • 大都芸能のスターたちを集めてやるパーティーはすっかり名物になっている
  • いい宣伝になっている
  • それだけではなく確実に速水真澄は人脈を広げている
  • 毎年大都芸能はあらたな実力者とつながり拡大していく

避暑地ということは、マヤが招待されている場所と同じであろうか。
そして酔客に本音をあっさりとズバリ見透かされている速水真澄。
本当にわかりやすい人だ。

「真澄くん、君は人間をそんな目でしたことがないのかね?
 仕事を発展させる道具としてしか
 人間らしい愛情をもって仕事抜きで接する人物はいるのかね?」

この酔客、なかなかタイムリーな話題に切り込む。
しかし思わぬ乱入者が。

「いるわけないでしょうこの方に。
 私の魅力すら無視していらっしゃるくらいだもの。」

乱入者は謎の美女。
ゴージャスな巻き髪と衣装、派手なメイクに包まれ、
私の魅力と言い切る自信家。
口ぶりからして大都芸能のタレントではなさそうである。

「どう真澄さま、
 この中にもあなたに憧れているチャーミングな女性がいらしてよ。
 スターやタレント、政界や財界の大物の令嬢。
 さああなたの仕事にとって一番プラスになる女性を選べばどう?」

なかなかの挑戦的な発言である。

「きみ!酔っているのか!?きみ!」

これには先ほどの酔客も止めに入るが、
乱入美女は態度を改めない。
よほど速水真澄が好きなのか、それともひどい仕打ちでも受けたのだろうか。

「選択は慎重にやりますよ。
 コンピューターにかけてでもね。
 大都芸能にふさわしい女性を。
 失礼!」

大してうまくもない対応でその場を切り抜ける速水真澄。
これには酔客も乱入美女も唖然。

「なんて男だ・・・」

そして速水真澄のもとへ部下が。

「真澄さま、山下さまとおっしゃる方がお目にかかりたいと・・・」

いよいよマヤの無鉄砲ぶりをチクリに来たのだろうか。
しかし山下さん夫婦、とても気のいい別荘番だが、
こういったパーティーのような場所には似つかわしくない人たちである。
部下は山下さんのことを知らない模様。
パーティー会場にいきなりやってきた、関係者とも業界人とも思えない未知の来訪者を、
あっさりと若社長に会わせてしまう大都芸能の管理体制の甘さ。
人脈作りより先にやることがありそうである。

つづく

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第10巻・炎のエチュード(1)