【ネタバレ注意】ガラスの仮面第11巻その③【私情を表に出すな】

大都新ビル9F劇場オープン記念「奇跡の人」
顔寄せが行われていた。
原作では「奇跡の人」だったり「奇蹟の人」だったり、
表記がコロコロ変わっているのだが、ここでついに統一されたということだろうか。
大都芸能としても、新劇場オープンのこけら落としであり、
なんとしても素晴らしいものにしたいと、山脇専務取締役のあいさつ。
そして出演者紹介。
アニー・サリバン役には姫川歌子。
父・ケラー氏役には神野克彦
母・ケート役には松山道江
次々と出演者が紹介され、そして二人のヘレンが紹介される。
姫川亜弓と北島マヤ。
二人が並ぶと、マヤは亜弓の引き立て役である。
というのが下馬評。
無事に顔寄せが終わり、マヤが会場をでるとそこには速水真澄の姿が。
「おやこれは、未来の大女優のお通りだ。
ヘレン役にうかったそうだな。おめでとう。」
「それはどうも」
「大都新ビルのオープンの大事な芝居だ。頑張ってくれたまえ。」
「もちろん速水若社長にバカにされないように頑張りますわ」
明らかに速水真澄を敵視しているマヤ、
顔をそっぽを向き、言葉にもトゲがある。
それを察した速水真澄、おもむろに手を伸ばし、マヤの顎をつかむ。
「こっちを向いたらどうだチビちゃん
大都芸能の速水真澄が話しかけているんだぞ。
礼儀も知らんのか?」
以下説教。
- 芸能界じゃ挨拶や礼儀は演技より大事なことだぞ!
- いくら才能があっても人に嫌われたらこの世界じゃ生きてはいけん。
- 俺が嫌いならも構わん。しかし私情を表に出すな。
- 特に関係者は大事にしろ!
- いいか、それができないようではこの世界では生きていけんぞ!
そしてマヤを突き飛ばすと
「いいか!よく覚えておけ!」
と言い放ち去って行ったのだ。
業界最大手の大都芸能のTOPから直々に
芸能界を生きる術を教わるというのはなかなかであり、
なおかつ正論である。
しかしこの発言自体が私情が表に出ているという矛盾。
速水真澄、小野寺一、姫川亜弓、姫川歌子、月影千草、
現時点で芸能界と呼べるところに出てきている出演者は少ないが、
みんな私情の塊である。
一方では劇団オンディーヌ。
ヘレン役のダブルキャストとして、
姫川亜弓と北島マヤが選ばれたことで桜小路優が騒然としていた。
「北島・・・あのマヤちゃんが、亜弓さんとダブルキャストを・・・
気まずくなってからもう随分長いこと会っていないけど、
ずっと心の底で尾を引いていた・・・
大丈夫だろうか・・・
亜弓さんとダブルキャストだなんてきっと不安にちがいない・・・
気になる・・・・」
ほんまこいつはええやつや。
かつて、オンディーヌの稽古を塀から覗き見していたあの素人が、
ついに看板の姫川亜弓と同じ役にたどり着いたという快挙だけでなく、
その先のマヤの不安まで見据えている。
いいように男心を弄び、関係者を大事にしてこなかった
マヤの最大の犠牲者であるとも言える。
つづく