【ネタバレ注意】ガラスの仮面第11巻その⑤【やっぱり君が好きだよマヤちゃん】

      2017/08/20

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意図せず稽古場の人気者になってしまったマヤ。
自身の演技に向けられる奇異の目にさすがのマヤも参ってしまった。
夜の公園で一人落ち込んでいる。

「笑われちゃったみんなに・・・
 あたしの演技ってそんなに変なのかしら?
 やっぱり亜弓さんとじゃぐっと差がついてしまうなぁ・・・」

すると突然マヤの方に置かれた手。
驚いたマヤが振り向くとそこにいたのは桜小路優だった。

「桜小路くん」

「今君の家に行ってきたんだよ。
 さっきまで待ってたんだけど帰らないので
 きっと稽古で遅くなるんだろうと引き上げてきたところなんだ
 久しぶりだね。」

冷静に読むと恐ろしいセリフである。

気になる女の子の家に行き(訪ねたとは言っていない)、
待ち伏せしていたものの帰ってこないので、
稽古帰りに寄っていそうな公園を当たってみたところ久しぶりに会えた。

かなり重度かつ狡猾なストーカーであるが、
イケメンが言うとこうも違うものか?
速水真澄が同じことを言ったとしてもこうもいくまい。
桜小路くんは、変態臭のしないストーカーなのだろうか。

そんな疑惑もさておき

「桜小路くん・・・なんだか前より背が大きくなったみたい・・・」

見た目の変化より、偶然でもなく公園に現れたその事態を疑え。
桜小路くん、おそらく高校生だろうがまだまだ成長期か。

「そう・・・?」

と言いながら遠くを見つめていきなりブランコになる。
イケメンやなかったらただの頭おかしい奴である。

「長いこと会わなかったけど元気にしていた?」
「うん・・・桜小路くんも?」
「気にしていてくれたの?」
「もちろんよ。どうして?」
「・・・・」

思わず黙ってしまう桜小路くん。
平気でこういう思わせぶりなことを口にするマヤの魔力にかかっている。

うつろな桜小路くんに対し近況を連発するマヤ、

「あたしね、今度、奇跡の人に出ることになったの。ヘレン役で。」
「聞いたよ」
「亜弓さんとダブルキャストなの」
「そうだってね」

狡猾な仮面ストーカー・桜小路くんはすでにそこいらの情報は収集済み。
そして自らの思わせぶりな態度が招いたにもかかわらず、
うつろな桜小路くんに業を煮やしたマヤ。
ブランコに乗っている桜小路くんを押す。

「なんだ?」
「せっかく久しぶりに会ったのに桜小路くんたらそっけないんだもん。」

お前のせいである。

「ねえ、石の微笑見にきてくれなかったでしょ!?
 ハガキで知らせたのに!」

お前のせいである。

「マヤちゃん・・・」
「べーっ!」

昭和の顔芸を披露するマヤ。

「こら!」
「あははは!」

昭和の追いかけっこをする二人。

「やっぱり君が好きだよマヤちゃん。
 今の君が好きだ。
 普通の女の子として明るく笑っている君が好きだ!」

ハアハアと息を切らしながらマヤを追いかける桜小路くん。

桜小路くんやから許される描写。
速水真澄ならロリコン金の亡者。
小野寺先生なら変態演出家。
劇団一角獣の堀田団長ならただの犯罪者にしか見えないだろう。
イケメンはずるい。

そしてベタな展開でジャングルジムに登って行く二人。
そしてベタな展開で二人の手と手が触れ合う。

「マヤちゃん・・・」

しかしそこに邪魔が入るのもベタな展開である。
巡回中の警察官に諭され家に帰るのだった。

「送るよ」
「いいの家まで近いから!」
「マヤちゃん・・・」
「さようなら桜小路くん、じゃあまた!」

警報機がなり、遮断機が降りかけている踏切を渡っていくマヤ。

「ああ、マヤちゃん今度いつ?」

二人の間を間を電車(おそらく中央線)が引き裂く。
電車が走り去った時にはマヤの姿はもうなかった。

「じゃあまた・・・
 じゃあまたっていつだいマヤちゃん?
 ドジな子・・・
 君の頭にあるのはいつも演技のことばかり・・・
 訪ねるのはいつも僕の方ばかり・・・」

またもやマヤの天然魔性に振り回されてしまった桜小路くん、
彼こそ本作一番の被害者なのかもしれない。

「やだ・・・
 焦っちゃう・・・どうしてこんなにドッキンドキンするんだろう?
 桜小路くんに手を掴まれただけなのに・・・」

自身の天然魔性っぷりが一人の少年を苦境に追い込んでいるとも知らず、
絶賛被害者ビジネス展開中である。

ここで脱線。
マヤや劇団つきかげのメンバー、そして桜小路くんなどは
JR中央線(連載当時は国鉄か?)沿線に住んでいると思われる。
潰れてしまった劇団つきかげは杉並区。
描写される電車は高架を走っており、車体のフォルムなどから
中央線であることが推定される。

また、マヤはつきかげに入団当初、
花見の名所で売店や池がありボート遊びができるI公園で、
売店の手伝い(8時〜18時日給1500円)のアルバイトをしていた。
桜小路くんも手伝っている。
吉祥寺周辺が生活圏であろう。

ところが今回二人を遮断した踏切、地上にある。
2010年に三鷹〜立川間が全線高架化されたものの、
連載当時の1979年は三鷹以東しか高架化はされていない。
マヤはこの踏切から「家は近い」と言っている。
つまりマヤたちが暮らしている白百合荘は、
三鷹駅ないし武蔵境駅周辺なのだろうか。

余談はさておき、病院の一室。

「どうして!どうしてですか月影先生!
 どうして今回はマヤに演技を教えてやらないんです!?」

「あの姫川亜弓と一日交代で同役!くらべられるんですよ!」

青木麗と水無月さやかが月影先生に詰め寄っていた。

「亜弓さんも誰の力も借りない・・わたしはそう聞きましたよ。」

「でもあっちには小野寺演出家が・・・」

「大丈夫、小野寺は身動きが取れないでしょう。
 見てらっしゃい。小野寺はマヤを無視するしかできない・・・
 それでいいんです。無視された方があの子は実力を発揮出来る・・・」

まるで全てを見てきたかのようにお見通しの月影先生。

「姫川亜弓との二人のヘレン・・・
 どういう勝負になるか実力で闘わせてみましょう。」

月影先生の洞察と意見に黙らざるをえない麗とさやか。
そして月影先生はおきまりの大爆笑。

「オーホホホ!
 これは奇跡の人たのしみだこと!」

自身の一番弟子が破門の危機(破門するのは月影先生本人であるが)にあるにもかかわらず、
その事態をまるで楽しむかのような月影先生。
最終最後、やはりこの人が一番恐ろしい。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第11巻・炎のエチュード(2)