【ネタバレ注意】ガラスの仮面第11巻その⑥【いやな相手だわ・・・】
2017/09/02

白熱する連日の稽古。
姫川歌子&亜弓の親子は相変わらず激しい稽古を続けている。
三重苦のヘレンがサリバン先生の力に屈服させられて食事をするシーン。
共演者という名の野次馬の注目が集まる。
「さあヘレンお行儀良くするのよ。
自分の椅子の上で自分のお皿で
手づかみではなくてフォークでお食事するのよ・・・ヘレン・・・」
抑え込む歌子さんも、抑え込まれる亜弓も息絶え絶えだ。
抵抗する亜弓演じるヘレンがフォークを振り回すと、
歌子さん演じるサリバンの右腕を突き刺した。
「おう!」
という得体のしれないリアクションとともに血がほとばしる。
お芝居では一番やってはいけない、相手に怪我をさせるという行為である。
さすがにギャラリーも稽古を止め、治療をしようとする。
しかし止めたのは小野寺先生。
続けられる白熱の芝居。
ヘレンの手がサリバンの顔面をしばくと、
サリバンも平手で応酬する。
そして床を引きずり回されるヘレン。
「ほんとにあれで母親かよ・・・」
「娘も娘だが・・・」
「演技とはいえ・・・まるで鬼だ・・・」
暴力上等の稽古にギャラリーもドン引きだ。
姫川歌子さんはかつては月影先生の弟子だった人。
喧嘩上等暴力上等の稽古は望むところなのであろうか。
「おい!もう一人のヘレンは?」
「いたぞ!あそこだ!」
用務員室で休憩しているマヤ。
稽古場に用務員室ってなんだ?
マヤは亜弓の稽古を見ることなく、用務員室でお茶を飲みながら大福を食っていたのだった。
その光景に呆れるギャラリー。
以下マヤの独白
- 亜弓さんがどんな演技をするかあたし見ないんだ。
- 亜弓さんのヘレンとあたしのヘレンは違う・・・!
- でも亜弓さんの稽古を見てしまったら私の中に亜弓さんのヘレンが残る。
- 意識すまいと思ってもやっぱり意識してしまう・・・
- それがこわい・・・
- 亜弓さんがどんな天才でどんなに見事にヘレンを演じようとあたしとは関係ない・・・!関係ないんだ!
と、マヤなりに自分の演技のことを考えて、あえて亜弓の演技を見ないようにしているのだった。
亜弓さんの演技はあたしとは関係ないが、
だからといって稽古中に大福を三つも食っていていいわけでもない。
亜弓の稽古の番が終わり小休止に入った模様。
マヤとすれ違う亜弓。
しかし亜弓は一瞬笑うと、言葉をかわすこともなく去って行ったのだった。
そして次はマヤの稽古の番だ。
「ちょっと!今度はあの北島マヤって子の番よ!」
「ああ、あの子なんだかおもしろいよな!」
「今までのヘレンとは一味違った感じだぜ!」
「見に行こう見に行こう!」
完全に二人の稽古は見世物と化している。
姫川亜弓はそんな見物人達に背をむけると用務員室に入っていくのだった。
「おばさん熱いお茶とその大福くださる?」
ここの稽古場には用務員室があって、山盛りの大福があってしかも食べ放題のようである。
「今の子亜弓さんと同じ役だそうだけど稽古見に行かないんですか?」
「わたくしとは関係ありませんわ。」
そして大福をばくばく食べる亜弓。
やはりマヤを強烈に意識するが故の無視なのであろう。
マヤが稽古場に入ると、姫川歌子さんは先ほどのフォークによる刺し傷の治療中だ。
顔面や首筋にも傷跡や絆創膏が。
毎回こんなことやってて、再起不能に陥らないのだろうか。
さすがは月影千草門下生である。
「失礼します」
「ちょっと待っててね。今傷の手当が終わるから。」
平穏を装いながらも歌子さんの心中は穏やかではない。
- いやな相手だわ・・・
- なぜだか知らないけれどそう感じる・・・
- とりたててうまい演技とも思えないのにこの私がひきずられる・・・
- よくいつの間にかこの子のペースに乗せられている・・・
- この子・・・なんてことはない普通の少女なのに・・・
マヤと絡んだ誰もが抱くのと全く同じ感想である。
かつては姫川亜弓が、そして栄進座の原田菊子が感じたように。
姫川歌子さんもさすがプロの大女優だけあって、
セリフや段取りを重視し、台本通りに演じた上でなおかつその上に自身の個性を乗せる役者である。
しかしながらマヤと絡むことで、少しずつ段取りが狂い、自身の想定している個性が崩れつつあるのを察しているのだろう。
しかしそれは姫川歌子さんにとって、もう一つの芝居の楽しさを知らされるきっかけでもあったのだが・・・
つづく