【ネタバレ注意】ガラスの仮面第11巻その⑧【うらやましい・・・】

   

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「大都新タウンビル完成!!」

  • 1階〜6階 ショッピング街
  • 7階・8階 食堂街
  • 9階 大都プラザ劇場

大都芸能の威信をかけ、大々的にオープンした割には意外と小さい。
外観は中野サンプラザ風。

気になったので調べてみたのだが、中野サンプラザは1973年完成、地上21階、地下2階。
このガラスの仮面連載当時と同時代のビルである。
やはり小さい。
それとも渋谷は建造物の高層制限があるのだろうか?ないか。

そして、この大都プラザ劇場のオープニングとして「奇跡の人」が上演されるのである。
TVや映画で顔を見た業界関係者や、有名な劇評家、演出家などがわんさか集まる中、
のこのことやってきたのは劇団つきかげのメンバー。

青木麗、沢渡美奈、春日泰子、水無月さやかの4名である。
マヤと同居している麗以外の生存確認。
彼女たちは地下劇場で、
劇団つきかげのおまけに成り下がってしまった劇団一角獣のメンバーとともに活躍しているのだろうか。
その辺りは全く触れられていない。

会場には多数の花が。
どれも姫川歌子・姫川亜弓あてのものだ。
一方北島マヤはその名も知られず、全く評判にも上らない。

そして客席にはアカデミー芸術祭演劇部門の審査員たちが。
大賞・主演・助演、どれでもこの芸術祭で賞が取れたら、
新人でも一挙スターダムにのし上がるのだそうな。

「まあマヤなんかにはまだ無理だろうけど
 せめて審査員たちにいい印象を与える演技はしてもらいたいね。」

この究極上からの発言は、マヤの同居人兼保護者兼引き立て役の麗である。
マヤの置かれている状況をものすごく客観的に見ているような発言でもあり、
マヤと自身の実力差をものすごく理解していないような発言でもある。

「奇跡の人」初日開演。
アニー・サリバン 姫川歌子
ヘレン・ケラー  姫川亜弓

開演直後、劇場内に不穏な黒い影が。

「お客様、どうぞお席にお着きください。」

「いいえ、私はここで結構。」

客席の一番後ろの壁際に腕を組んで立っているのは
月影千草大先生。

「ちゃんと切符はあるわ。
 ここにいた方が真正面から演技が見えるの。
 わたしはここにいます・・・・」

演劇の正論風の理屈をぶちまけ、案内役のお姉さんを困らせる。
劇場は他の観客への影響や、安全性の観点から客席を用意し、
基本立ち見や増席は行っていないはずである。
「金さえ払えば何でも許される」というモンスター観客の精神。
真正面から演技が見える席は取れなかったのであろうか。
やはりこの方は、不健康なジャイアンである。

一方ロビーではマヤ。
関係者であるにも関わらず、ロビーでたい焼きを絶賛暴食中。
手元の袋には、たい焼きが推定10尾。
劇場関係者もその姿には呆れている。

「亜弓さんのヘレンを気にしない」という考えなのだろうが、
他の共演者もあるにも関わらず、
我関せずロビーでたい焼きを食べるというのはいただけない。
せめて楽屋など客の目につかないところでやるべきである。

劇場に迷惑をかける師匠と、
関係者に迷惑かける一番弟子と、
実力の程をわかっていない補欠の弟子たち。

劇団つきかげ、その実力はともかくモラルがやばい。

場内ではいよいよ姫川亜弓演ずるヘレンが登場。
父親役の俳優をしばき、
初対面のサリバンの顔面をどつき、
「奇跡の人」は姫川母娘の格闘劇であることを予感させる。

ロビーでは引き続きたい焼きを食べているマヤ。
開演から1時間弱食べ続けていることになる。

「お茶でもおいれましょうか?お客様。」

そこに現れたのは速水真澄。
大都芸能の威信をかけた大都新ビル(わずか9階)のオープンだけに、
ばっちり正装で決めている。

慌てるマヤ。
なんせ前回には「挨拶が・・・」「礼儀が・・・」と説教されたばかりだ。

「こ、こんにちは・・・
 ごきげんよろしゅう・・・
 その後おかわりもないようで・・・」

劇団つきかげの一番弟子、挨拶や礼儀もやばい。
これには速水真澄も爆笑。

「いやこれは失礼。
 ご丁寧な挨拶痛み入ります。
 美味しそうなたい焼きだね。
 僕にも一つご馳走してもらえませんか?」

返礼からスムーズにたい焼きをせしめるのが芸能界の挨拶であり礼儀なのであろうか。
速水真澄はジュースを買い、マヤの隣でたい焼きを食べ始めた。

多くの関係者が来場しているだろうにも関わらず、
劇場のTOPにして最高責任者の速水真澄がロビーでたい焼きを食う。
これが大都芸能の挨拶であり礼儀なのであろうか。

「なぜ舞台を見ない?」

「みたくないんです・・・亜弓さんの演技・・・」

亜弓の演じるヘレンを意識したくないという理由を語るマヤ。

「なるほど・・・
 だが気になるのでロビーから離れられないってわけか。」

納得している場合か。
先日礼儀やら、関係者を大事にしろとか言ってたやつとは思えない。
そして仕事そっちのけで核心に迫ろうとする変態若社長。

「なぜそんなに演劇に夢中になる?
 そんなに好きなのか?他人を演じることが。
 もっと楽で幸せな自分自身の人生を演じてみたいとは思わないのか?
 ボーイフレンドを作ってデートしたり、
 友達に囲まれた楽しい学園生活を過ごしたり、
 普通の女の子として幸せに楽しくいきたいとは思わないのか?」

これまでの経緯を知っているだけに後半はお前の願望やろ?と思ってしまう。
この場に秘書の水城さんがいたら、また涼しい顔でネチネチと辱められることであろう。

「わからない・・・あたしには・・・
 なにが幸せでなにがそうでないか・・・」

以下マヤの演劇に対する思いの抜粋。

  • わかっているのは、お芝居をしていると胸の中が熱くなって勇気が湧いてくる。
  • あたしにはこれができるんだって思いが体の中を駆け巡って
  • あたしは生きているんだなって気がする。
  • わかっているのはそれだけ。

「うらやましい・・・」

「えっ?」

その会話を遮るように速水真澄の取り巻きたちが現れる。

「真澄さま!こちらにいらっしゃいましたか?
 店長が是非ご挨拶をと・・・」

「わかった。すぐに行く。」

ショッピング街や食堂街の店長であろうか。オープン初日だけに、演劇だけでなく、ビル全体に関わる業務も多いのだろう。
やはり仕事をサボっていた説が濃厚である。

「たい焼きをありがとう。
 なつかしい味だったよ。
 子供の頃よく食べたんだ。」

そして満面の笑みを浮かべ退場。

「聞き間違いかしら?
 今、うらやましいって・・・たしか・・・・」

速水真澄は何を羨んだのだろうか。
大都芸能の仕事の鬼と呼ばれながらも、
自身が夢中になれる、生きていると実感出来る瞬間がなく、
芝居を通じてそれを実感出来るマヤを羨んだのであろう。
だから、仕事をサボってたい焼きを食っていたのだろう。
そしてたい焼きを食って、生きていると実感できたのだろう。
彼が何を考え、どう生きているのか?
それはこの後のストーリーで語られる。(と思う。)

演劇界の重鎮でありながら、劇場に迷惑をかける月影千草。
もう一人の主役でありながら、ロビーで飲食する北島マヤ。
マヤの最大の理解者でありながら、実力不足な発言の青木麗。
大都芸能の仕事の鬼と呼ばれながらも、ロビーで飲食するという不徹底な速水真澄。

今回はどいつもこいつも突っ込みどころが満載だ。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第11巻・炎のエチュード(2)