【ネタバレ注意】ガラスの仮面第12巻その①【その野心を砕いてやる・・・】

   

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姫川母娘の壮絶な格闘劇・奇跡の人。
亜弓演じるヘレンが不意に顔面を強打し、鼻血を出すというハプニング。
しかし天才少女姫川亜弓はさすが。
そのハプニングを利用し、血だらけの顔面で正面を切り、
演出に変えてしまった。

大喝采の拍手。
迫真の演技に対してなのか、
怪我をも恐れない役者魂に対してなのか、
単純に血を見て興奮しているのか。

さらに続く本格バトル演劇。
両者息を切らし、顔面は紅潮。
共演者や観客たちに寒気を覚えさせるほどの
母娘とは思えない格闘を繰り広げる。

食べ物を口から吹き出し、
床を転げ周り、
普段は優雅なイメージの大女優・姫川歌子、
そして天才美少女と言われた姫川亜弓。
二人のイメージを覆すほどの体当たりの演技で、
審査員たちをうならせ、観客たちは熱狂していくのだった。

要所では確実に拍手をもらい、
演出の小野寺先生もご満悦。

「い、いきますよこりゃあ!
 芸術祭で大賞が取れるかもしれない!」

テンション上がる取り巻きのスタッフに対して

「そうとも。
 なんとしても大賞をとる・・・!
 この姫川歌子亜弓の母娘でだ・・・!」

なんとしても・・・というあたりに、小野寺先生の策謀を感じる。
これまでも数々の黒い策謀を用い、
演出力ではなく政治力で大演出家の地位を勝ち取った男である。

「その時こそ月影千草・・・
 その野心を砕いてやる・・・」

野心満々のあんたに言われたくない。
月影先生の野心てなんだ?
紅天女の復活?
もともと紅天女は月影先生のものなのだから、
野心とはちょっと違うような・・・

紅天女の上演権を虎視眈々と狙う方が野心と呼ぶにふさわしい。

舞台はさらに佳境に。
迫力満点の格闘が功を奏し、
徐々に成長を見せるヘレンに観客は感動。
姫川歌子演じるアニーサリバンの心の叫びに劇場は涙する。

そして例のあの名台詞が飛び出す。
暴れたヘレンを抱え、サリバンは井戸へ。

「水よ!W・A・T・E・R
 これが名前!」

「ウォウォ・・ウォーワー!」

姫川亜弓は両手を天にかざし、
イオナズンでも炸裂しそうな体勢からのWATER!!

これには審査員も驚く。

「なんという表現だ・・・まるで雷に打たれたような・・・」

雷ではなく洗濯機に感電したのだが。

もちろん奇跡の人初日は大成功。
観客も審査員もご満悦だ。

「まるで水に感電したかのようなあの演技表現、さすがですな!」

姫川亜弓の感電死未遂の一部始終を見ていたかのような論評。

楽屋でも共演者スタッフが亜弓を讃える。
しかし当の本人は浮かない顔。
出待ちのファンにサインを求められても

「今日は疲れているから・・・」

とそそくさと劇場を去っていった。

大成功となった奇跡の人姫川母娘バージョン。
感動の大作であることは間違いないのだが、
なんとも釈然としない。

観客は姫川母娘のネームバリューとその本格的格闘技に興じ、
そのギャップで感動をさらったような気がする。
それ自体はアリかもしれないのだが、
両人はあざや傷はもちろん、流血シーンも。

大都芸能の威信をかけた大作だけに、長期間の公演となるのであろう。
一回の舞台でこれだけ怪我をするというのはいかがなものであろうか。
それこそ格闘技の興行であれば大成功であるが、
舞台演劇、しかも日本を代表するスターの舞台としては間違っているような気がする。

そして翌日には北島マヤがヘレンを演じる、
もう一つの「奇跡の人」が上演されるのだった。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第12巻・炎のエチュード(3)