【ネタバレ注意】ガラスの仮面第12巻その②【これがあたしのヘレンです!】

   

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「奇跡の人」2日目
アニーサリバン 姫川歌子
ヘレン  北島マヤ

初日は姫川歌子・姫川亜弓母娘の共演というネームバリュー
そして息のあった本格格闘劇で大成功を収めた。

引き換え今日は劇場も客は減っている。

「二日目ということもあるけど、なんといってもヘレンが無名」
「役者も無名なら劇団も無名。」
「弱小劇団にいると気の毒。」

口さがない劇場の客たちは、二日目減員の理由を考察。
それを聞いてカチンときているのは劇団つきかげのメンバー。
二日連続で観劇とは、弱小劇団もなかなか優雅なものである。

一方楽屋のマヤは珍しく緊張していた。

  • あたしあがってる・・・
  • こわい・・・亜弓さんと較べられるのが・・・
  • 北島マヤという劣等生の自分を捨てきれない・・・

これだけ結果を残してきているにも関わらず、
劣等生という自己評価である。
まあ相手が姫川亜弓であればそう卑下するのも無理はない。

すると楽屋にいきなり青木麗が乱入

「マヤマヤ!ちょっと来てみてごらんよ!早く!」

招待されているとはいえ、主役の義兄弟とはいえ、
さっきまでロビーにいた麗が、簡単に楽屋に入れるものなのだろうか。
大都芸能の威信をかけた大都新ビルのセキュリティに不安を覚える。

マヤがロビーに行くと、天井に届かんばかりの紫のバラの花が。
そしてマヤの手にはメッセージカード。

「あなたを見ています。
あなたのファンより」

定番のストーカー宣言。

「来てくれているんだわ!紫のバラのひと!
見てくれているんだ、この広い場内のどこかで!
あたしのヘレンを・・・!」

ストーカーに見られているということに感動し、
自身のヘレンを演じる覚悟を決めたのだった。

開演のベルが鳴る。
ロビーには姫川亜弓。
昨日のマヤと同じ場所で、たい焼きを十数尾食べている。
この姿には劇場関係者も驚愕。
姫川亜弓ほど芸能界慣れしている女優が、
開演直後に客席近くのロビーで
たい焼きを食らうとは、言語道断である。

芸術祭の審査員席では開演直後にも関わらず
北島マヤにまつわる私語が展開されている。

「聞いた噂では、姫川歌子がこの子を恐れているとか・・・」
「姫川歌子が?そんな馬鹿な?」

私語の内容は週刊誌レベル。
「奇跡の人」の関係者はどうなっているのか。

ストーリーは進み、いよいよマヤ演じるヘレンの登場シーン。

「紫のバラのひと!
ああやるわ!あたしやります!
もうこわくない・・・・!」

紫のバラのストーカーに勇気付けられ、
自分を取り戻したマヤ。
共演者や観客を驚かせるほどの物音を立てて登場。

「これがあたしのヘレンです!」

床にすっ転がっていた。
この演技には審査員も驚愕。
そしてサリバン役の姫川歌子さんも素に帰ってしまった。

「なに・・この子・・・
稽古の時とはまるで雰囲気が違う・・・
まるで別人のような・・・」

思わず見入ってしまい、芝居の間合いを外してしまう。
我に帰り、芝居を続行するも
稽古の時とは違うマヤの反応や動きに歌子さんは戸惑うばかり。

「ちがう・・・何かがちがう・・・」

そしてマヤの予想もつかない動きに思わずリアクション。

「しまった・・・ここは平然としてヘレンを観察するところだったのに・・・」

大女優姫川歌子の芝居の段取りすら変えてしまうマヤの芝居。というかアドリブである。
時には笑いを誘い、
そして観客が不思議に思うほどの間を取って
自身の演技を行う。

観客も、歌子さんも、審査員も、小野寺先生も、
このマヤの芝居に驚きながらも惹きつけられるのだった。

「緊張と緩和・・・
それを生み出せる役者は注目を集める・・・
あの子はまだ気づいていないけれど本能でそれを知っている・・・!」

マヤの演技をこう評したのは名解説者の月影千草先生。
さすが、緊張しか生み出せない人の言葉だけに説得力がある。

芝居は進行して人形を奪い合うシーン。
そこでも歌子さんはマヤのペースに乗せられ、
ヘレンに顔面をひっぱたかれるシーンにも関わらず。
本能的に身をかわしてしまうのだった。

劇場には笑いも起こる中、審査員の一人はこう言う。

「不思議だ・・・あの子のそばに闇が見える・・・」

床に落ちたケーキを匂いで探り食べようとするヘレン。
それを咄嗟のことで奪い取るサリバン。
そのやりとりに観客は爆笑。

そして舞台袖には花束を持った桜小路優。

「マヤちゃん・・・」

桜小路くんが観劇に来るのはいい。
花束を持ってやってくるのもいい。
しかしなんで、共演者でもない奴が舞台袖に花束を持って
本番中に芝居を見ているのか。

しかし舞台袖の闖入者を気にとめることもなく、
小野寺先生はイライラしていた。

「どうしたんだ姫川歌子は。あの子に振り回されている・・・」

姫川歌子の中では何かが狂い始めていた。
そして「奇跡の人」の歯車が違う方向へ回転を始めたのである。

1幕終了。
百戦錬磨の大女優、姫川歌子さんは汗びっしょりで退場してくる。
出演者を迎える小野寺先生。

「小野寺先生、お願いしたいことが・・・
この舞台を私に任せてほしいんです。」

姫川歌子突然の宣言。

  • あの子のヘレンと存分に闘ってみたい
  • あの子と闘うには普通のサリバンではダメ
  • あの子とやっていると演技ができなくなる
  • 演技のつもりがいつか本気になっている
  • こんなことは初めてだわ!
  • 私も役者です!この舞台を成功させるためにも!

理解はできるが、プロの役者としては危うい発言。
しかし小野寺先生、苦笑いをしながらも

「行きたまえ。わしは君に賭けよう。
舞台の上は役者の世界だ。」

「ありがとうございます。」

舞台に向かった姫川歌子。

小野寺先生が姫川歌子のこの申し出を受け入れたのは意外である。
もう一つ「姫川母娘バージョン」で賞を取れるという確信があるから、
「北島マヤバージョン」はどうでもよくなったのだろうか。

しかし驚くべきは北島マヤである。
大女優の演技を演技でなくしてしまうほどの存在感。
それはそれで素晴らしいのだが、それを本番初日にやってしまうのがよくない。
もちろん舞台は生き物であるから、その場で生まれる感情や演技はある。
しかし、日本でも最高峰のプロが集う大都芸能の舞台で、
稽古場ではなく本番でやってしまうところが、頭おかしい。
舞台を私物化しているといっても過言ではないだろう。

そして他の共演者がいるにも関わらず、
「私に任せてください!」と懇願してしまう姫川歌子さんもおかしい。

「あの子のヘレンと闘う」という発言もおかしい。
連日の姫川亜弓との格闘で、演劇=格闘になってしまったのだろうか。

そういえば姫川歌子さんはかつては月影千草先生の内弟子。
鉄拳制裁も辞さない月影先生の指導を受けたはずである。

「演劇は闘い」

娘ほど年の離れた、妹弟子にあたるマヤの芝居を見て、
かつての鬼の月影道場を思い出したのであろうか。

そして第2場が始まろうとしている。

つづく

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第12巻・炎のエチュード(3)