【ネタバレ注意】ガラスの仮面第12巻その③【驚いた舞台度胸だわ】

      2017/10/24

Pocket

「奇跡の人」二日目・北島マヤバージョン
第二幕が始まった。

ロビーではまだたい焼きを食べ続けている姫川亜弓。
開演から一時間は経っているだろうに、
そんなにたくさん食っているのか。それとも食うのが遅いのか。

そしてその横を慌てて駆け出す記者たち。

「全くもう何だって、こんな大事な時にフィルムが切れたりするんだ!
 舞台のチャンスを逃したらどうするんだ!」

「しかしそれにしてもなんてヘレンにサリバンだ・・・・
 こんな奇跡の人ってあるんだろうか・・・?」

たい焼きのことも忘れて愕然とする姫川亜弓

「何ですって・・・・?
 今のは一体どういう意味?
 この扉の向こうで一体何が起こっているというの?」

場内では、観客も呆然としていた。
椅子に縛り付けられたマヤ演じるヘレン。
そしてテーブルをおもむろに運ぶ姫川歌子演じるサリバン。

「違う・・・稽古の時の演技と違う・・・
 姫川歌子さん・・・なぜ・・・・?」

第一場で散々やり倒したお前が言うな。

テーブルを運び終えた歌子さんはニヤリ。
手当たり次第にそこらにあるものの名前を指文字で伝える。

「D・O・L・L! B・O・O・K! C・U・P!」

「何これ・・・歌子さんは何をしようとしているの?
 どうしてこんな稽古の時やらなかったようなことを・・・
 あたしどうすれば・・・」

だからお前が言うな。
ぶっつけ本番でアドリブかまされる共演者の気持ちがわかっただろうか。

「そうよ・・あたしはヘレンなんだ・・・
 何をされようと、どう変わろうと、
 この舞台の上ではヘレンなんだ・・・」

姫川歌子さんのこの芝居の変化が、
そもそも自身のアドリブがもたらしたということに気づかず
さぞかしポジティブである。

割れるカップ。
椅子から逃れようとするヘレン。
それを押さえつけるサリバン。
ヘレンが縛られたまま立ち上がると、椅子がサリバンの顔面を強打。

「おおう!」

押さえつけようとするとキックが飛んでくる。

「あう!」

大女優・姫川歌子さんは二日連続でアクション女優だ。

次第に二人の演技は演技ではなく本気になる。
痛みと怒りで椅子から逃れようとするヘレンと、
それを押さえ、指文字を伝えようとするサリバン。

「驚いた舞台度胸だわこの子・・・!
 私の演技の変化に戸惑いもしない・・・
 ヘレンとして本気で私に向かってくる・・・」

あんたも大概やわ。

そしてこの二人の演技の変化に観客も気付き始める。
中には昨日の姫川母娘バージョンとの違いに戸惑う客も。
審査員もおろおろし始めるのだった。

舞台ではもはや何が起こるかわからない。

「いいかね。さっき話したように稽古中とはだいぶ違う。
 歌子さんに合わせて演ってくれ。」

舞台袖で出演者に指示を出す小野寺先生。
ちゃんと演出らしいこともやっている模様。
この辺りのリスクマネジメントはさすがの政治手腕か。

しかしその何が起こるかわからない段取りなしの演技に観客ものめり込んでいった。
食事のマナーを教えようとするサリバン、
それに抵抗するヘレン。
食材が飛び、食器が割れ、テーブルクロスを引っ張りあっての格闘。

格闘の結果、ボロボロになった大女優の姿は爆笑をさらう。

「ヘレン、あなたは人間なのよ!」

顔面を強打され、髪の毛を引っ張られ、
ヘレンにしてやられたサリバンの心の叫びが観客の涙を誘う。

出演者ですらこのあとどんな展開になるのかわからないガチンコバトル。
その緊張感が観客を引き付け、笑わせ、泣かせるのだった。

というわけで第二場に入ったわけであるが、
冒頭のマヤの心の声がマヤの全てを物語っている。

自分が散々やりたい放題やっていながら、
人が違うことをするとそれに驚き戸惑い、
最終的にはそれを自分の力に変え、
観客を共演者を魅了する。

そうしたところが、マヤの人間として欠落した部分であり、
だから時には嫌われ妬まれる。
しかしながら、その舞台の上を生きる力が役者として最も優れた部分であり、
観客に共演者に評価されるのだ。

真面目コツコツ努力常識よりも、
天才天然非常識が評価される。

そら姫川亜弓でなくとも、正直やってられへんと思ってしまう。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第12巻・炎のエチュード(3)