【ネタバレ注意】ガラスの仮面第13巻その①【大切なのは今ではなくてこれから・・・】

   

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アカデミー芸術祭演劇部門の表彰式が始まった。
舞台大賞・舞台美術賞・衣装デザイン賞・舞台効果賞・演出賞と
次々と候補者が挙げられ、そして大賞が発表されていく。

そしていよいよ演技賞。
まずは助演男優賞。
以下、作品・役名・俳優である。

  1. 「赤い狼」中野刑事役 阿佐ヶ谷透
  2. 「ブルー・カフェイン」グリュック役 吉祥寺一
  3. 「釈迦の一日」ヨガ僧役 荻久保博
  4. 「時の過ぎゆくままに」狂人役 美内すず人
  5. 「夜明けまで待って」服部ひろし (役名不明)

中央沿線3人組と美内さんを差し置いて、5番の服部さんが受賞。
これは関係者ではニヤリとしてしまうネタなのだろうか。

続いて助演女優賞の候補者発表

  1. 「武蔵野閑話」不良少女番長役 井之頭みどり
  2. 「ミッドナイトインベーダー」ウェイトレス役 西荻万里
  3. 「すずらん通り」古本屋主人役 神保町子
  4. 「奇跡の人」ヘレン役 姫川亜弓
  5. 「奇跡の人」ヘレン役 北島マヤ

一瞬色めき立つ場内。
同じ役で候補に選ばれた、天才少女姫川亜弓と無名の北島マヤの戦い。
それよりも個人的には1番と2番が気になって仕方がない。
なんせマヤや亜弓と同じくノミネートされている以上、
えげつない舞台のえげつない役なのだろう。

「発表します!助演女優賞!
 奇跡の人・ヘレン役・・・・北島マヤ!」

どよめく場内。
殺気立つ姫川亜弓。
そして呆然のマヤ。

周囲に促され壇上に上がるマヤ。

「これは夢だ・・・夢なんだ・・・」

「北島マヤ様。奇跡の人におけるあなたのヘレン・ケラー役は、
 従来にない驚くべき新鮮さと
 演劇的魅力と感動をもたらし・・・」

表彰状を読み上げるプレゼンテータ。

「そうか・・・そうだったのね・・・
 わかった!わかったわ!」

何かがわかったらしい姫川亜弓。

そして壇上でコメントを求められたマヤは
相変わらずイタいコメントとリアクションで会場を失笑させ、
青木麗を赤面させている。
そして姫川亜弓の表情は敗れたにも関わらず晴れやかであった。

そんな中いきなり会場に現れたのは月影千草。
サプライズの登場である。
姫川歌子とマヤの師匠とは言え、予告なしに入場して許されるものなのか。
まあ月影先生は何をしても許されるらしい。

「どうぞ。愛弟子の受賞を見にいらしたんですか?」

如才なく席を進める速水真澄。

「ええ。これからの愛弟子たちをね。」

「えっ?」

月影先生のこの意味深な発言には流石の仕事の鬼も意味がわからないらしい。

表彰は進み、主演女優賞は「奇跡の人」アニー・サリバン役の姫川歌子。
表彰理由の描写はないが、本格格闘劇と筋書き無しのアドリブ劇を演じきったというところか。

母とライバルがアベック受賞してしまった天才少女初の敗北。
しかし亜弓は笑顔で立ち上がると、
主演女優賞の姫川歌子と助演女優賞の北島マヤを祝福するのだった。

しかしマヤに対しては祝福だけではなかった。

  • 受賞されたのはあなただけど私は負けたとは思ってやしない
  • 今日この表彰の言葉を聞いてあなたと私のヘレンの差がわかった
  • 私はヘレンを完璧にやり通したと自負している
  • もしあなたが私以上に完璧なヘレンをやったというなら私の負けになる
  • けれどあなたのは新鮮なヘレン
  • きっとあなた個人の魅力溢れるヘレンをやったのね
  • つまりあなたのヘレンは私とは別人であったということ
  • 完璧なヘレンこそは私であったと改めて自信を持ったわ!

負け惜しみともとれるが、本人は至ってご満悦である。
賞が目的ではなく、完璧なヘレンが目的なのであろうが、
姫川歌子と観客と審査員は、新鮮なヘレンを選んだという事実は認めるべきである。

その間隙を縫うようにステージ下に現れたのは月影先生。
これにはマヤも仰天。

「審査委員長!月影千草ですよ!往年の大スター「紅天女」の!」

主催者すらも当惑させる往年の大スター。

「ステージに上がってよろしいかしら?」

「ど、どうぞ!」

この迫力で断れるわけがない。
勝手に会場に現れ、強引にステージに上がる、
往年の大スターは病弱なジャイアンである。

「これは珍しい祝い客のお越しです。
 往年の大スター、演劇界幻の名作と言われる紅天女の名女優、
 場内の中には昔のファンであり、ご存知の方も多数おられると思いますが、
 本日の主演女優賞・姫川歌子さんのもと師、
 助演女優賞の北島マヤちゃんの現在の演劇の先生、
 月影千草さんです!」

司会者にとって一番のサプライズにも関わらず見事な紹介である。

「どうです月影先生、ご自分の生徒の舞台をご覧になって。
 紅天女を任せられる女優になりそうですか?」

「ええ・・・この二人のヘレンには稀な素質がありますね。
 ともに紅天女候補としてふさわしい少女たちです。」

当惑するマヤと亜弓、ざわつく場内。

「亜弓さん、今後このマヤとともに、紅天女を目指す意志はありますか?」

亜弓「月影先生!」

真澄「しまった!」

小野寺「真澄くん!」

亜弓「喜んで!ええ喜んで!月影先生!」

どっかの居酒屋チェーン店員のようなリアクションの姫川亜弓。
どさくさでしてやられた速水真澄と小野寺先生。

「皆様、今夜はこの席を借りまして
 かつて私が演ってまいりまして今は演劇界幻の名作となっております紅天女
 この紅天女候補の二人を紹介いたします。
 北島マヤに姫川亜弓です。」

スクープにどよめく場内。

「この闘いはたった今始まったばかりです。
 今後この二人が女優としてどう伸びていくかどう成長していくか、
 それを見てこの二人のうちいずれかを紅天女に決めたいと思います。」

やはり演劇は闘い。これぞ月影イズムである。

「しまった!先手を打たれた!何てことだ!」

悔しがる速水真澄。というかあんたは最近後手に回ってばかりや。

「月影先生・・・若い頃先生のおそばにいた時から
 紅天女は女優としての私の憧れでした・・・
 他の誰が演るのもいや!そう思っていました・・・
 でも・・・この二人になら許せるような気がします・・・」

本日の主役の座を奪われ、なおかつ長年目指してきた
紅天女の道を閉ざされたにも関わらず
聖人的発言は姫川歌子さん。さすが大女優や。

「ありがとうございます。月影先生。
 きっと先生のご期待にそえるような女優に成長したいと思います。
 紅天女めざして・・・」

賞レースでは敗れたものの、完璧なヘレンは自分であったことを確認し、
おまけに紅天女候補に選ばれた亜弓はご満悦で去っていった。

「マヤ、大事なのは今ではなくこれから。
 これからの女優としての成長こそが大切なこと。
 闘いなさい!」

やはり演劇は闘い。

「してやられましたね、紅天女は僕が買い上げて
 この手で日本中の大女優をこぞって出演させたかったんですよ。」

「その方が宣伝になるし儲かるからでしょう?」

「その通り、おまけに二人の候補が紅天女を演じるようになるまで
 まだあと数年成長を待たなければならない。
 せめて大都芸能での独占上演は希望を持っていいんでしょうか?月影先生」

泣き言を言った挙句にお願いまでしてしまう仕事の鬼。

「上演権は手放しませんよ。死んだって。
 速水さんあなたのお父様にもそう言っておいて。
 へんな小細工はさせませんよ。これだけの証人がいるんですからね。
 では私はこれで。」

今にも死にそうな人のセリフだけに説得力抜群。
そして会場に乱入、強引にステージに登壇、
サプライズの大発表をやって式次第を大幅に変更したにも関わらず、
何事もなかったかのように帰る。
大女優である。

「大切なのは今ではなくてこれから・・・」

心にそう命じるマヤ
トロフィーを抱えたマヤの周りには取材陣。
マヤの周囲が変わろうとしていた。

というわけで今回の大事件としては紅天女候補の発表である。
というか、速水真澄の野望と、月影千草の思惑が
初めて詳しく語られた回でもある。

速水真澄としては、大都芸能が「紅天女」の上演権を買い取り、
プロデュースを一手に行うことで注目を集め、
興行を成功させるというのが目的である。
(それ以外の因縁も追って語られるが)

そのためこれまでも、表立っては月影先生を訪問して買収を試み、
それが効かないとわかると陰に陽に策を弄し、
劇団つきかげを解散に追い込み圧力をかけていたのだった。

しかし月影先生としては上演権を手放す気は毛頭なく、
逆にこの芸術祭授賞式のタイミングで二人の紅天女候補を発表。
多くのマスコミや演劇関係者の前で、
紅天女の行く末は、月影千草の一存にかかっていることを周知させることに成功。
これにより、大都芸能の横槍は無意味となった。

そしてあくまでも「紅天女候補としたのが至高の一手。
「紅天女」が決まってしまえばまた大都芸能の横槍が入る可能性もあり、
候補として二人を競わせ見極めるということで時間稼ぎにもなる。
自身の寿命は時間稼ぎが許されそうもないのに。

そしてマンガ的にもおもしろくなったのであるが。
そう考えると、亜弓さんは時間稼ぎのために候補に選ばれたような気もしてしまう。
やはり最強の噛ませ犬なのか。
でも今回の亜弓さんはとても嬉しそうでよかった。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第13巻・華やかな迷路(1)