【ネタバレ注意】ガラスの仮面第13巻その⑤【先生、あたしが邪魔だったの・・・?】

   

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MBA大河ドラマ「天の輝き」に出演が決まったマヤ。
その周囲が慌ただしく動き始めた。

学校では注目の的。
もともと芸能人やタレントが多い一ツ星学園にあっても、
大河ドラマ出演のマヤは注目の的だ。

自宅の白百合荘にも近所のおっさんおばさんが押し寄せてくる。
その喧騒を見守る月影先生。

台本を読もうにも六畳一間のアパート。
隣では麗が寝ており大きな声も出せない。
アパートの廊下で本読みをすれば
オンボロアパート。住民から苦情。
その様子を見守る月影先生。

MBAでは収録に先立ち台本の読み合わせ。
主役やベテランに混じって参加するマヤ。

「ばあやったら!私は信じないわ。そんな話!」

「そこもう一度やってみて。」

「ばあやったら!私は信じないわ。そんな話!」

「もう一度」

「ばあやったら!私は信じないわ。そんな話!」

字面ではさっぱりわからんが、三度演技を変えて読んだマヤ。
驚く共演者。マヤの引き出しの数に驚いたのか?
それとも一貫性のなさに驚いたのか?

「何だね3回とも別人みたいじゃないか。」

「はい・・・あのまだ沙都子がつかめなくて・・・・
 どういうふうにやれば自分の沙都子ができるかと・・・」

「まだ若いのに生意気だね。自然にやってればいいよ。」

この演出家はどうやら無能である。
そして「自然に」という指示に戸惑うマヤ。

続いては殺陣の稽古。
沙都子は薙刀の達人。
しかし素人のマヤはただの棒振りになってしまい殺陣師にダメ出しされまくる。

そして先ほどの無能演出家。

「あんた日舞をやったことは?」

  • 下地ができていないんだな
  • 普通演劇研究所で日舞やダンスを習う。なぜか?
  • 踊るわけじゃない。ふりと型を覚えるんだ。美しい身のこなし動作。
  • 君の薙刀は棒振りだ。身のこなしがまるっきりの木偶の坊だ。
  • 緊張感を伴ったリズムがない。
  • 本番前には何とかしたまえ。

いうだけ言って具体的な指導は何一つない無能である。
そしてそんな小手先のテクニックを凌駕するほどの演技力を
まさかこのマヤが持っているとは知る由もない。
稽古やリハーサルと、本番のマヤは別人である。

所変わって大都芸能。
激忙の速水若社長の元に珍しい来客が。

「なんだ?今忙しいんだ当分客は入れるなと言っておいただろう」

「それが、月影千草と名乗る方でどうしても若社長にお会いしたいと・・・」

「わかった応接室にお通ししろ。15分してからいく。」

このやり取りだけでツッコミたいことが山ほど。

まず速水真澄。ほんまに忙しいんか?
15分で大方目処が立つような仕事である。
それとも来客の重要性を察知し、
山積みの難題の中から断腸の思いで優先順位をつけたというのだろうか?
それにしてはあっさりである。

そして月影千草。
大企業の社長相手に、アポなしで突然面会を申し出るあたり大女優の思考である。
「客は入れるな」と言われていたのに
見るからにヤバそうな謎のおばさんを通してしまったのだから、
相当の勢いで押し切ったのであろう。
前回劇場で案内のお姉さんを困らせたように、
大都芸能の受付でごねている描写が眼に浮かぶようである。

そして大都芸能の応接担当者。
このコマでは描写はないがおそらく秘書の水城さんとは別の人物であろう。
「月影千草と名乗る方」という物言いから、往年の大女優を知らないようだ。
かつての大女優とはいえ、芸能界のある意味重鎮、
そして大都芸能が単独上演を目論む「紅天女」の上演権所有者である。
その人物を名前すらも知らないとは、従業員のレベルも知れている。

とまあ余談はさておき、応接室。

「これはどういう風の吹きまわしですか?
 月影先生の方からお越しくださるとは。
 いよいよ紅天女を大都芸能に任せてくださる気になっていただけましたか?」

こんな自虐にも似た冗談が言えるほどご機嫌の速水若社長。

「ホホ・・・そうでないことくらいよくおわかりのはずなのに・・・」

冗談に乗っかってやるようなサービス精神は一切見せず一刀両断した月影先生。

「おや、ではなんでしょう?」

「役者を一人預かっていただきたいんです。
 有能な子ですわ。
 北島マヤを大都芸能に入れたいんです。」

月影先生の目が光った。
速水真澄の目が光った。
そして同席していた水城さんの目もなぜか光った。

「これはありがたい!
 どんなに口説いてもなびかなかったあの子を先生が差し出されるとは!」

いちいち言葉尻がエロい。

「未来の紅天女候補、大河ドラマ出演となかなか話題豊富な子だ。
 喜んでいただきますよ」

喜んでいるのは話題豊富であるからだけではあるまい。

「で、条件は何です?
 ただで宝物を手離されるわけではないでしょう?」

「ええ・・・」

条件は明かされることなくマヤの元には秘書の水城さんがやってきた。

「月影先生からの用事でここへ来たの。
 荷物をまとめなさい。あなたはここを出て行くのよ。」

「ここを出て行く!?」

驚き逆らうマヤに、月影先生承諾の契約書を見せる水城さん。
それでもマヤは先生に会って本当のことを聞くと抵抗する。

  • あなたはね、どれだけ月影先生に迷惑がかかっているかわからないの?
  • 退院したばかりでまだ体も丈夫じゃないのにこんな狭い部屋の中で
  • 学校の宿題や演技の稽古など先生にとって煩わしくないとでも思っているの!?

マヤを強引に連れ出すため多少芝居がかっているとはいえ、
なかなかひどい物の言いようである。
水城さんは速水真澄に対してだけでなく、
丁寧な口調で相手を責めたてるという
新しいジャンルの開拓者なのかも知れない。

「月影先生はね・・また演劇研究所の教師になられるのよ。
 よかったこと。大都芸能が先生のお力になれて。」

「演劇研究所の教師・・・
 じゃあ先生はその引き換えにあたしを・・・
 邪魔だったの・・・先生、あたしが邪魔だったの・・・?」

号泣するマヤ。
車の中でも泣きわめくマヤを何とか大都芸能の用意したマンションに連れて行く。
これからマヤは、芝居にだけ集中できる生活が待っているのだった。

「そりゃあ随分手こずりましたわ。
 マンションについてからもずっと泣いていましたもの。」

武勇伝風に報告する水城さん。

「そうか・・・」

「何だか嬉しそうですわね。真澄さま。」

水城さんのその言葉に答えもしない速水真澄は本当に嬉しそうである。
そして水城さん、あんたもよくわかってるクセにいちいち言わんでよろしい。

翌日よりマヤは学校へも現場へも車で送迎。
学校を早退してセリフの稽古、
衣装合わせ、ポスター撮影、日舞の稽古と分刻みのスケジュールを入れられるのであった。

衣装合わせを終え、共演者とともにポスター撮影に臨むマヤ。
月影先生に捨てられたこともあって表情が暗い。
そんなマヤを共演者たちは侮る。

しかしスタジオの扉を開くとそこには
文明開化の街並みと原寸大の船のセット。

「こんなところでお芝居するの?
 舞台とは違う・・・何もかも・・・
 こんなところであたしは沙都子になるの・・・・?」

出演者たちが勢ぞろいしポスター撮影。
しかし沙都子が憑依したマヤは一人、
勝手に船の上に登っていた。

そのマヤを咎めることも一切なく、

「あれ、あの子なの???がらりと違う・・別人じゃないの・・・」

演技力のオーラの一端を見せつけたのだった。

今回の目玉は何と言ってもマヤの大都芸能入りである。
これまで大都芸能および速水真澄とは一貫して敵対関係にあった月影先生。
単独大都芸能を訪れ、条件と引き換えにマヤを大都芸能に入れたのだった。

直前の描写から、月影先生がマヤの環境を心配していたことは伺える。
学校でも自宅でも注目の的となり、
狭いアパートでは十分に演技の準備をすることもできず、
学校と現場との行き来で疲れ、
日舞など必要な素養を身につける時間もない。

テレビの世界に身を投じたマヤを芝居に集中させるべく、
あえて大都芸能にマヤを入れることで、
住居、芝居の環境、移動など最高のものを用意。
そして業界最大手の大都芸能の力でマヤをサポートしてもらおうと思ったのだろう。

演劇研究所の教師は交換条件ではなく、
マヤに「月影先生に捨てられた」と思わせ、
退路と甘えを絶たせるための方便。

つまりマヤを大都芸能に入れる交換条件は
マヤを徹底的にサポートし売り出すというものであっただろう。

大都芸能にとっては全く損のない内容、
月影先生は演技の教師としてのギャラ以外には何の見返りもない。
そう言った意味では謎の取引である。

月影先生はそこまでマヤの将来を思っていたのだろうか。
それともかつて青柳プロを動かしたように、
見えないところで多額の金銭が動いていたのだろうか。
はたまたマヤがスターになることで、
紅天女候補レースに箔がつくと考えたのか。

いずれにしても月影千草おそるべしである。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第13巻・華やかな迷路(1)