【ネタバレ注意】ガラスの仮面第14巻その①【ひたむきな瞳・・・】

   

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「恋・・・?里美さんにあたしが恋?」

自身が恋をしているということが自覚できないながらも、
セリフを忘れるほど彼の姿を追い、
気がつけば彼の言葉だけが脳裏に響いているマヤ。

思わず自分が出てしまい、沙都子の仮面をかぶれず、
沙都子のふりをしているだけの自分に戸惑う。
マヤにとっては初めての感覚。

「桜小路君にはこんな気持ちじゃなかったわ!」

かつて桜小路君に抱いていた感情と比較し、
あらためて桜小路君の存在はなんだったのかと問いたくなる。

「恋していない・・・私の聖子は恋していない・・・」

一方の帝都TVで撮影中の姫川亜弓は至って冷静であった。

  • 愛ですって?恋ですって?
  • ときめきせつなさやるせなさ熱い思い・・・
  • 人を恋うる熱のこもった眼差し・・
  • 今にも壊れてしまいそうなガラスの感情・・
  • うかつだったわ・・・今までは舞台の上で恋していると錯覚していたのかしら・・・
  • こんなことが弱点になるなんて・・
  • どうすれば聖子の気持ちを掴める・・・
  • どうすれば聖子の気持ちを演じられる・・・

恋に振り回され、芝居どころではなくなっているマヤに対し、
あくまでも演技の技術やアプローチとして恋を捉えている亜弓。

「恋をしていない」と共演者に陰口を叩かれ、
「恋をしている」気持ちや演技を会得するというなんともおかしな話である。

そんな彼女の前にうってつけの獲物が現れた。
見るからに冴えない若手俳優。
スタジオの隅で台本を片手にブツブツとセリフ合わせ。
大道具さんの行方を阻んで怒られ、
モニター前に立って怒られている。

劇団風人の下っ端劇団員・間進である。
これまでに二、三度端役でTV出演の経験はあるものの、
緊張か、物覚えが悪いのか、まあどんくさそうではある。

「ずいぶん熱心なのね・・・」

「姫川亜弓さん・・・」

いきなり主役に話しかけられた端役の間君。
まさか自分とは思わず戸惑う。

「声かけたりしてお邪魔だったかしら?
 セリフやってらしたんでしょう?」

「あ、ぼく本番始まるまで台本読んでないと、不安で落ち着かないんです。
 うまく演れるかって・・・」

「一生懸命なのね・・・素敵だわ・・・本番頑張ってね!」

いきなり主役の天才美少女に話しかけられ。
「素敵」と言われ戸惑う。
そして間近で見た芸能界のサラブレッドは
画面や舞台で見るよりも美しかった。

そして間くんの登場シーン。
もう出番はないはずの姫川亜弓がスタジオで彼の演技を見ている。

「みてる・・変だな亜弓さんが俺を見ている。
 まさかオレ見るため?おいうぬぼれるなよ進!
 あんな高嶺の花がオレなんか相手にするわけないだろ!」

わずかな出番に集中するため、スタジオに本番直前までセリフ合わせをしていたにも関わらず、
まさかの主役の気まぐれにより、出番に集中できない可哀想な間君であった。

なんとか本番を終えた間君が局を出ると外は雨。
傘を開くとそこに入ってきたのは姫川亜弓。

「地下鉄の駅まで送ってくださる?」

「ええ、そりゃもちろん。でも亜弓さんなら車で帰れるんじゃないですか?」

「あらいやだいつもそうとは限らないわ。
 ほんとは地下鉄好きなのよ。」

ほんとは地下鉄好きって、どんな感情だ?
恋する瞳よりも、ほんとは地下鉄好きの感情の方が難しい。

「あなたってとても稽古熱心なのね。
 今日はずっとあなたの演技見てたのよ。
 今度会ったらあなたのこと聞かせてね。
 もっとあなたのことが知りたいわ。」

と主役の天才美少女にこんなこと言われて舞いあがらな方がおかしい。

そして後日。
亜弓とすれ違う間君。

「あ、亜弓さん、ジュース飲みますか?」

「いただくわ」

完全に魔性に籠絡された間君。

「そうよこの眼だわ!ひたむきな瞳・・・」

というわけで今回は魔性の姫川亜弓。
今回のこのエピソードは姫川亜弓の様々な特徴や性格を物語っている。

まず、「恋をしたことがない」という人生経験の不足から
「恋をしているふりをしている」と共演者に陰口を叩かれたにも関わらず、
間君の恋する瞳を見つけて、それをマスターするという本末転倒な話。
結局「恋をしているふり」である。

そしてその「恋をしているふり」を習得するだけのために
全く無名かつ接点もない端役に話しかけ、
出番でもないのに、スタジオに残り、
そしてその瞳を引きずり出すという謎の行動力。

そして「この眼だわ!」と本質を見抜く眼力。
そしてそれを見ただけでマスターする演技力。

ライバルのマヤは恋をすることで自身の演技もままならず、
結果それが芸の肥やしになっていくのであろうが、
姫川亜弓は結局それを、演技の心ではなく技術として把握し、
人生経験ではなくテクニックとして自身のものとし、そして真似る。

この辺りが演技の天才姫川亜弓の物凄さであり、
そしてその表面のもろさであるとも言える。

つづく

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第14巻・華やかな迷路(2)