【ネタバレ注意】ガラスの仮面第14巻その⑧【みかんで! よし!カメラを回せ!】

   

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これまでマヤがやられた嫌がらせ(犯人もしくは容疑者)

  1. 刃物を持ってうろつく(里美茂の親衛隊)
  2. 車を大破され抗議文(巴万里のファンか?)
  3. 撮影で使うパイにガラス片
  4. 撮影衣装の襟に、カミソリを仕込まれる。
  5. マヤのポスターがズタズタに引き裂かれ、トイレに晒される。
  6. 撮影セットの船のマストのボルトが抜かれ、宙づりに。
  7. 人力車の踏み台に細工され、転倒
  8. 小道具の櫛に接着剤べっとりでカメリハ中断
  9. 小道具のタオルに胡椒を仕込まれカメリハ中断
  10. セットの上から水入りバケツ落とされずぶ濡れに

嫌がらせを通り越して傷害事件であり、大河ドラマに対する威力業務妨害でもある。
しかし困難になればなるほど実力を発揮し、
その類いまれなる演技の才能で敵を黙らせ、周囲を納得させ、仲間を増やしていくという、
北島マヤである。

「なんですって?天井からバケツが!?」

こちらは巴万里の楽屋。熱狂的なファンが楽屋に集っている。
里美茂といい、巴万里といい、会いに行けるアイドルがたくさんいる。

  • あの子を目の敵にしている人物は多い。いい気味だ。
  • でも濡れたまま演技を続けて前よりも目立つ結果になってしまった。
  • 誰だか知らないけど、水ぶっかけたくらいじゃめげない。
  • もっとすごい手を使わないと。

人気歌手の巴万里さんはなかなかの美貌の持ち主で、
マヤの撮影現場を偵察していたファンどもの報告を
髪の毛をセットしながら鏡ごしに聞いている。

「水に濡れたまま演技を・・・
 驚いたそれはちょっとすごいわね。
 あの子見かけより骨があるのね・・・」

ファンたちの報告に驚く巴万里。
水をかけたのはどうやら彼女たちの仕業ではないらしい。
しかしマヤに対して何らかの嫌がらせを仕掛けていることは
巴万里も黙認しているのだろうか。
人気アイドルも闇が深い。

そしてもう一人。

「水に濡れたままで演技をやり続ける度胸・・・
 一人舞台で一般投票一位ですって?
 只者じゃないわ・・・
 もしかしたら私などおよびもつかないほどの才能を秘めてる少女かも・・・」

端役の吉川さん。
スポンサーの日向電機がマヤを推したせいで出番が大幅に減った不遇の女優である。
苦労の下積みを経て大河ドラマにようやく出演できたらしく、
ぽっと出のマヤに役を削られ恨みに思っている。

しかし上記の発言から判断するに、「お前は売れない!」と言ってやりたい。
そら下積みをしてきたあんたからみれば、マヤはぽっと出の事務所ゴリ推しかもしれんが、

「天下の大都芸能の仕事の鬼の名前を言ってはいけないあのお方」

のハートを鷲掴みにするほどの魅力を持つ女優である。
只者ではないし、もしかしなくてもお前はおよびもつかないし、
才能を秘めるどころか発揮している少女である。
その辺のマヤと自分の実力差や、事務所の力関係などの状況判断もできず
自分の立ち位置を勘違いしている吉川さん。「お前は売れない。」

案の定、マヤとの絡みでも普段のマヤからは想像もつかない貴族のオーラに圧倒される。

「かなわない・・・かなわないわ・・・
 服の襟にカミソリを入れたりして意地悪をしたこともあるけれど
 負けたわ・・・」

自らの罪状を自白し、そして敗北宣言。
天下の大都芸能のイチオシ女優に対して傷害を働いた無名の端役女優。
こともあろうか、衣装にカミソリを仕込み、
大河ドラマ製作陣の誇りをも傷つけたその罪は断じて許しがたい。
事件は表沙汰にはならなかったが、彼女はこののち芸能界を去ったと思いたい。

スタジオではシーンNo.21の撮影の段取りが組まれていた。

  • 沙都子の腹違いの妹、お福の葬列のシーン
  • お福は沙都子の父・田沼伯爵と女中の間に生まれた子だが、世間体を重んじ、女中の子として育てられていた。
  • そのことを知った沙都子はお福が好きだったお手玉を投げ、わらべうたを歌いながら葬列を見送る。
  • 気丈な沙都子が初めて涙を見せるシーンでもあり、田沼の非情さ、貴族階級の悲哀を表すシーン。

とまあ、いろいろ詰め込まれている。
しかし自他共に認める不器用なマヤ。
肝心のお手玉がうまくできない。
来る日も来る日もテレビ局の廊下でお手玉の練習をするマヤ。
ちゅうか楽屋でやれ。
スターは努力を人前で見せるものではない。

そこを通りかかる巴万里。
相変わらず熱狂的なファンも一緒だ。

「ごめんなさいお手玉の稽古していたもので・・・
 あたしぶきっちょだから下手くそなの・・・」

これと言ったリアクションもなくその場を去る巴万里。

そして夜になり、彼女が仕事を終えテレビ局を出ようとすると、
同じ場所でお手玉を投げているマヤがいた。

「あなたまだやってたの・・・?」

「ええだいぶうまくなったでしょ?
 巴さん、映画の主役のことごめんなさい。
 あたし知らなかったんです。あなたが内定してたってこと。
 あたしあなたほどにはやれないかもしれないけど
 あたしなりに精一杯やるつもり・・・
 あたし、お芝居が好き・・・!」

これと言ったリアクションもなくその場を去る巴万里。
いきなり謝罪から入り、しかも自分は知らなかったと言い訳、
挙げ句の果てに映画への意気込みと、芝居への情熱を告白。
この一連への正しいリアクションは何か?と問われればそれは
黙ってその場を立ち去ることである。

しかしこんなマヤのコミュニケーション下手が相手に気持ちが伝わり、
その演技力が相手を納得させるのだからすごい。

撮影当日。
お手玉とわらべうたで葬列を見送るシーン。
段取りとしては寄りのカットでは目薬で涙を演出するとのこと。
そしてスタジオには巴万里もいる。

「何なの私をここへ呼び寄せて?」

「今日の大河ドラマの撮影は万里ちゃんに是非見てもらいたいの。」

巴万里をスタジオに招待したのは、巴万里ファンクラブの首領格。
何度もいうが、誰でも入れるテレビ局である。

いよいよ佳境のシーン。

「これは田沼のお嬢様・・・
 お嬢様に送っていただければお福も喜びましょう・・・
 これを・・・あの子の好きだったお手玉です・・・」

沙都子がお手玉を受け取り、宙に投げると、
お手玉が炸裂し小豆が飛散。

スタッフが用意した時やマヤに渡された時には壊れず、
マヤがお手玉を投げた瞬間、それも掴む時ではなく、放り投げた頂点で炸裂。
時限爆弾かよ。

「お手玉の糸が全部切れています!」

「予備にとっておいたものも全部糸を抜かれています!」

騒然とするスタジオ。
くすくすと笑う巴万里ファンクラブ。

「あなた達!まさか・・・」

驚きの巴万里。

しかし当のマヤ。葬列の一人が持っているみかんを借りると

「続けてください!そのままカメラを回して!
 場面No.21やります!」

いやいや、お手玉がカット変わってみかんになってたらギャグやろ。
お福の好きだったお手玉はどこに行った?
お福はみかん好きだったんか?

「そうか・・・みかんで!
 よし!カメラを回せ!」

そうか!やないわ。ディレクター。
カメラまわしとる場合か。二週連続で台本の雰囲気が大幅に変わってしまった。

そしてカメラの先には大粒の涙を流す沙都子。
みかんを放り投げながら号泣するマヤの絵面はなかなかにシュールである。

今回もたぐいまれなる演技力で周囲をねじ伏せたマヤ。
しかしどう考えてもみかんはやりすぎ。

「お福の大好きだったお手玉」という伏線があってこその感動が生まれるのだ。
「お福の大好きだったお手玉」の代わりにみかん投げたてたら頭おかC。

撮影は大成功。なのか?
編集、あるいはOAの段階で誰か気づいたのだろうか。

そしてもう一人頭おかC人の登場。

テレビ局の廊下では巴万里ファンクラブの会長が鉄拳制裁を受けていた。
鉄拳を振るうのはもちろん、人気歌手の巴万里だ。
罪状は以下の通り。

  • よくもああたしに恥をかかせてくれたわね。
  • 本番前にお手玉の糸を切っておくなんてなんて卑怯な真似するの!
  • あの子に抗議文送りつけて脅したり、もう余計なことはやらないでちょうだい!
  • 夏の主役を取られてくやしい思いをしたけどあの子なら許せる。
  • あの子には正々堂々と演技させてやりたいわ!
  • 今度あの子に何かしたら私が許さないわよ!

前回の会話の雰囲気では、ファンクラブの人たちがマヤに嫌がらせをしているのを黙認していませんでしたか?
やのに、今回は鉄拳付きで怒られるという、ダブルスタンダード。

さらにはマヤの前にファンクラブメンバーを連れてきて謝罪をさせるという念の入り用。

  • 私のファンクラブの人たちなの。
  • 夏の映画の主役を取られて悔しくて、抗議文を送りつけたり、お手玉の糸を切った張本人達
  • 本当にあなたには失礼なことをしてしまった。謝ります。
  • こんなことは二度とさせない。
  • 夏の映画の主役を取られて本当は悔しかった。
  • 夏の映画「白いジャングル」あなたの実力を見させていただくわ。頑張ってね!

そして去っていく巴万里とその一味のもの。
一件落着。大喜びのマヤ。

「ありがとう!いい人!認めてくれたんだわ私のこと!
 あ・・・抗議文送りつけたりお手玉の糸切ったりとか言ってたっけ・・・?
 じゃあ、一体誰が・・・
 誰がパイの中にガラス片入れたり、
 バケツを天井から落とすよう仕組んだんだろう?
 他にもあった意地悪や邪魔は?
 一体だれの仕業なの?」

一連の事件のうち、一部が解決しただけで、
大半は未解決であることに気がつき、恐ろしくなるのだった。

しかし今回は巴万里ですよ。
最後は自らのファンクラブの人たちを鉄拳制裁し、
自らマヤの前に連れて出て謝り、
一部の熱狂的なファンの暴走がマヤの妨害をしたが、
それを抑え、自ら一部始終を明らかにした正義の人。
みたいな感じになっているのが納得いかない。

当初の楽屋での会話を見る限り、抗議文を送ったりしているのは黙認している節がある。
にも関わらず、お手玉事件では手のひらを返して制裁。
もちろん、ファンクラブの人たちの行動は許されることではないし、
マヤのひたむきさをみて心打たれたというのもあるだろう。

しかし何というか

「自らの不祥事を官僚のせいにする政治家」

に似たものを感じる。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第14巻・華やかな迷路(2)