【ネタバレ注意】ガラスの仮面第15巻その④【嫉妬しているのか?なんてざまだ!】

      2018/04/28

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「花の中心だ!中心を狙え!」
「ここよ・・・白い魔境だわ・・・ついに見つけた
 生きるものが何もかも白いという伝説の魔境・・・」
「わーあれはなんだ!?鳥よ!原始鳥だわ!」

夏休みの超大作娯楽映画「白いジャングル」のセリフである。
どんな話やねん。
パーティー会場では多くの関係者を招き、「白いジャングル」の特別試写会が行われていた。
この前クランクインしたと思ったらもう試写かよ。
「天の輝き」の撮影と並行しているにも関わらず怒涛のスケジュールである。

大人だらけの関係者にはさぞかしつまらない映画だろう。
しかし会場は大盛況。

  • 素晴らしい冒険ぶりだった
  • うちの息子や娘にも見せてやりたいね
  • 演技とは思えないくらい自然で好感の持てる少女だった
  • 大河ドラマの沙都子もよいが、この冒険少女未央も実にいい
  • 完全に子供達のアイドルになるね!
  • 夏休みの公開が待ち遠しい。
  • 大河ドラマの沙都子で一躍人気、この映画であの子はスターになる!

マヤの評判は上々である。
それとも大都芸能の工作を慮っての、徹底的な持ち上げなのだろうか。
そして速水真澄にも群がる関係者。

「大都芸能の売り込みが成功したようですな。」
「うちの娘があの子のファンでね。」
「ありがとうございます。」

しかし速水真澄に対してはイエスマンばかりではなかった。

「この映画の主役をとるために大都は
 内定していた巴万里やライバルタレントや他の芸能事務所を蹴落としたり
 陰で随分苦労なさったようだが
 ともあれ狙いどころは成功したようですな。真澄くん。」

大都芸能に蹴落とされた側の人間であろうか、
ちょっと酒の入った酔客の関係者に軽く皮肉を言われる。
ここは大都芸能のホームグランドともいうべき試写会会場。
意外な勇者の登場に会場も凍りつく。

「おかげさまで・・・
 僕は過程よりも結果にしか興味ありませんので!
 結果が勝利と成功ならばそれでいいと信じております。失礼。」

なぜかやり込められ悔しがる酔客。
いまいちよくわからないし、大して上手いことを言ったわけではないのだが。
結果が勝利と成功ならばそれでよいということか。

そして主役のマヤの元に向かう速水真澄。

「ちびちゃん。おめでとう。なかなかいい映画だ。ヒットするよ。」

「ありがとうございます。大都芸能の速水若社長にそう言っていただけて光栄です。」

「苦虫を噛み潰したような顔していうもんじゃないよ。そういうセリフは。
 舞台を降りると君は突然演技が下手になるんだね。」

久々にマヤと接触できてとても嬉しそう。
しきりにマヤをイジり続ける。

「からかうのはやめてください!

「君は大都芸能の金の卵だ。からかったりするもんか。
 たいせつにするさ・・・」

どさくさに紛れて手を握ると、上記のセリフも他意をありありと感じる。
まあ、結果として手が握れれば過程には興味はないというわけか。

「北島マヤ様に花束が届いております。」

恒例の紫のバラと手紙。

「映画の完成おめでとう!
 あなたの姿が映画の大画面で見られるなんて夢のようです!
 沙都子役も頑張ってください。
 いつもあなたを見ています。
 あなたのファンより」

前後の脈略がなければただの熱狂じみたストーカーの手紙。
しかしマヤはモーレツに感動。

そして感動するマヤを当人の目の前で見ている送り主。
変態である。
そして紫のバラを一輪とると、マヤの襟元に飾った。

「大都芸能の未来のスターに。よく似合うよ。」

そして去っていく。
意味がよくわからんが、結果マヤが喜んだからよいということか。

そして会場は意外な人物の登場にざわついていた。
大女優の山崎竜子。

日向電機のポスターCMの仕事を新人のマヤに奪われ、
しかもポスターは大人気。
プライドを傷つけられた極悪大女優は無関係のくせに試写会場に乱入だ。

「この山崎竜子をあなどると怖いってことを
 あの世間知らずの小娘と大都芸能に思い知らせてやるわ!」

別にあなどったわけではないが、さすが大女優。
取り巻き連中を引き連れ、息のかかったマスコミに悪評を言い立てるつもりだ。
しかも陰で大都芸能がどんな汚い手を使ったかを、
私立探偵に調べさせた調査書も持参という手の入りよう。

「やはり私立探偵が嗅ぎ回っていたのか!」

意外な強敵の登場にもひるまない速水真澄。

「山崎竜子さん、どうでしたか、主役の北島マヤさんについて何か?」
「そうですわね。あんな演技はとても・・・」
「お久しぶりです山崎先生。やっと捕まりましたね。
 お話しできる機会を狙っていたんですよ。」

記者に意見を求められ、マヤをディスりはじめた瞬間に割って入った速水真澄。
記者たちから山崎先生を引き離す。

「ええ!海外ロケでミューズ化粧品のCM!?」

以下仕事詳細。

  • 世界の代表的な観光都市をバックに、日本を代表する女性として歩いてもらいたい。
  • ミューズ社は大都芸能にこの仕事を一任してきた。
  • キャッチフレーズは「ミセスになってからでも美しい・・・」「世界に誇れる、そんな女性であってほしい・・・」
  • 若いだけの女の子ではダメ。女性としての美しさを落ち着きと洗練された才気を持ったそんな人でなければ
  • 女優・山崎竜子さん以外には考えられません。
  • 日向電機など新人にやらせておけばいい。
  • 山崎竜子さんくらいの方ともなると、海外に名をはせるようなものがふさわしい。

マヤを潰す気合いで乱入してきたものの、速水真澄の見事な餌とおだてに気分良くなる大女優。
さらに畳み掛ける速水真澄。

「大都芸能では舞台に映画に超大作のビッグな企画がいっぱいあるんです。
 そのうち山崎先生にも大女優にふさわしい役柄で登場していただけたらと考えています。
 ではこれで。」

「超大作か・・・それも悪くないわね・・・
 この際大都と手を結んでおいた方が・・・」

「山崎さん、先ほどのつづきですが、主演の北島マヤについて」

「とても可愛らしい女優、まだ高校生というのによくやれたと感心しますわ。
 さすがアカデミー芸術祭助演女優賞!将来有望ですわ!」

速水真澄に見事籠絡され、マヤを大絶賛。
さらには日向電機ポスターにはマヤの方がふさわしいとまでいい、

「映画よかったわよ。
 これからも頑張って早く私のような女優におなりなさいね。」

と全くありがたくもなければ参考にもならないアドバイスを送る始末。

「山崎竜子に何やったんです?若社長?」

「別に・・・違う仕事を紹介しただけだよ。」

見事である。自社の仕事を他社の山崎竜子に振ることで、
自社の利益は減るかもしれないが、マヤのスター街道の障害を取り払いその先の利益を取る。
過程ではなく、先の先にある結果を見据えた見事な手際である。
しかしそんな速水真澄を休ませないように次なる刺客が現れた。

「沙都子がどんな冒険少女を演じるのか見たくて、すっとんできたんですよ」

「里美さん・・・」

またしても白いジャングルとは無関係の、里美茂登場。

「里美くんはわざわざここへマヤちゃんの演技を見にきたんですか?
 お二人は仲がいいんですね。里美くんはマヤちゃんが好きなんですか?」

意外なスターの登場にざわめくマスコミ。

「ええ・・・好きです。」

「里美さん・・・!」

「一人の女の子として僕はマヤちゃんが好きです。
 妹のようにでなく、友達のようにでもなく、
 僕は彼女が好きです。」

スターのいきなりの告白スクープに色めくマスコミ。
桜小路くんといい、この里美茂といい、
速水真澄のライバルたちはみな、潔くて爽やかである。
自身の気持ちと言葉に一点の曇りもない。

「まやちゃんはどうなの!?」
「里美くんが好き!?」

マスコミの質問がマヤに集中だ。

「みなさん!その件に関しては・・・!」

敏腕マネージャー・水城冴子さんが場を制し、マスコミからマヤを引き離そうとする。

「まて!待つんだ!」

なぜか水城さんを止めた速水真澄。
記者に囲まれたマヤ。

「好きです・・・」

まさかの発言にさらに色めき立つマスコミ。
そして速水真澄は瞬間的に握力が強くなったのか
手にしたカクテルグラスを片手で握りつぶすという超人技。
水城さんを止めた挙句、マヤの本心を聞かされ、右手はグラスの破片で負傷。
珍しいタイプのドMである。

そんな中、二人は堂々と交際宣言。
マスコミにお互いの好きなところや好きになったきっかけを聞かれ、
里美茂は水城さんにマヤとのデート許可を取り付けた。
そこんとこの内容はくだらないのではしょる。

「なぜだ・・・!
 なぜあんな小さな少女が気になる・・・
 どうしたんだ・・・俺としたことが・・・
 嫉妬しているのか?なんてざまだ!
 速水真澄・・・俺ともあろうものが・・・!」

いつもの「愛しているだと・・・(以下同文)」よりも長い目の心の中の反省文。
嫉妬してるわ。なんてザマだ。
とでもいいたげに、水城さんが彼を眺めていたのだった。
この後もネチネチとやられたのであろうか。

今回のまとめ。
山崎竜子は恐ろしい。
これまでにも本作には数々の大女優が登場してきた。
ご存知、紅天女の月影千草。
かつて月影千草と芸を競った、栄進座の原田菊子。
そして月影千草のかつての内弟子・姫川歌子。

山崎竜子はそのいずれとも異なるタイプの大女優である。
本作では山崎竜子が演技をしている描写がないためその実力はわからないが、
その発言ややり口から、演技や芸事へのストイックさは感じられない。
月影先生や原田先生とは恐ろしさのベクトルが違う。
もっぱら陰険極悪大女優であり、
清廉潔白、正義の戦う大女優・姫川歌子さんのような人でもない。

ここからは憶測でしかないが、
当初はミューズ化粧品のCMは姫川歌子さんにやってもらうつもりだったのではなかろうか。
姫川歌子さんなら、美しさ、気品、才気、落ち着き、全てにおいて条件を満たしている。
山崎竜子とは年齢層が異なるが、「ミセスでも美しい」というキャッチフレーズにはもってこいだ。
他社の女優よりも、自社の歌子さんの方が、利益的にも、戦略的にも良いはずである。
(劇中姫川歌子が大都芸能所属であるとは明言されていないが、おそらくそうであろうと推測する。)

しかしマヤのスター街道の障害となりうる山崎竜子を味方にすべく、
ミューズ化粧品の海外CMまで餌にした。
速水真澄のこの判断は間違いではない。

しかし今回の速水真澄、相変わらずいただけない。
「過程よりも結果」などと大層なことを言いながらも、
最後の最後は、マヤの本心を聞かされ、マヤのスクープをとられ、
さらに自ら右手を負傷するという謎行動。
過程も結果も最悪である。

ほんまこの人わざとやってるとしか思えない。
センチメンタルな自分に浸ることで悦に入る中学生のようである。

マヤは舞台を降りると突然演技が下手になると、速水真澄にからかわれたが、
速水真澄は仕事ではあんなに機敏で的確な動きを見せるのに、
仕事を離れると急に生き方が下手になる。
下手になるどころではなくて、変態ドM中学生社長である。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第15巻・華やかな迷路(3)