【ネタバレ注意】ガラスの仮面第15巻その⑨【私達が会いたかったマヤはもういないんだ・・・】

   

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マヤが住んでいるスカイハイツマンション。
ここはいうまでもなく、大都芸能が用意した寮なのだが、
タレントが居住しているだけあって徹底している。

「水城さん、またマヤちゃん宛てに手紙が届いていますよ。」

エントランスの管理人のおっさんだ。

「また?このことはマヤには内緒にしてくださっているんでしょうね。」

「もちろんです。マヤちゃん宛てに届く手紙や贈り物はみんな私が受け取ってあなたに渡しています。」

「ありがとう。」

外部からの侵入を防ぎタレントを守るだけでなく、
縁者知人からの郵便も検閲するという徹底した情報統制が行われている。
戦時中か。

「一般の人からのファンレターやプレゼントは全部大都芸能かTV局に届く・・・
 マヤの住所はファンには一切知らせていない・・・
 ここを知っているのはそう・・・」

敏腕マネージャー・水城さんが手にしている手紙の送り主は

「青木麗・さやか・泰子・美奈子より」

姉妹かのような連名。
名前の順番がマヤとの親疎を表していなくもない。

「もうこれで10通目の手紙です。
 いつもテレビを見ています。
 この間は映画・白いジャングルを見てきました。
 生き生きとした主人公がとても楽しくて
 あの頼りなげなマヤじゃないみたい。
 すっかりスターになったのねマヤ。
 返事をかけないくらいに忙しいのかもしれないけれど
 ハガキに一言だけでも私達に・・・」

途中まで目を通すと手紙のを破り捨てる水城さん。

「このことはいつものようにマヤには黙っていてね。」

管理人のおっさんに釘を刺す。
こうしてマヤ宛の手紙は読まれることなく、したがって返事もいくわけがない。

もし読んでいたとしても、上記のような小学生の感想並みの手紙では、
マヤは返事を書かないかもしれないと思ってしまうほど、内容のない手紙である。

そんなことになっているとも知らず、
地下劇場で本番前最後の追い込みに入っている劇団つきかげ。
なし崩し的に吸収され、つきかげの下部組織に成り下がってしまった劇団一角獣も一緒だ。

  • マヤにチケットを送っても観にこられるだろうか?
  • 前の公演のときもチケットを送ったけど何の返事もなかった。
  • スターになってちやほやされていい気になっているのかしら?
  • マヤに限ってそんな?
  • 桜小路くんのことはどうなのか?里美茂と初恋宣言とかどういうつもりかしら?

ちなみに上記の発言、マヤに対して批判的なのはかつてのライバル、水無月さやか。
マヤとは同い年。マヤよりも早くにその才覚を現し、
親元を離れ鳴り物入りで劇団つきかげに入ったにもかかわらず、
突然やってきた、演劇未経験の素人家出少女に取って代わられ、
「若草物語」のベス役も取られ、
かませ犬に成り下がった挙句、
地下劇場で細々と公演をしながらアルバイトの日々。
そういえばさやかは高校に行っているのか?
実家の親が今の彼女の姿を見たらどう思うだろうか?

「ねえみんな!マヤのところにチラシとチケット届けに行こうよ!」

そんなさやかの屈折した思いを無視するかのように提案する青木麗。
麗の提案にノリノリで盛り上がるさやかを含めたつきかげ一同。

「忙しくていないかもしれないけれど、その時は部屋にでも放り込んでおこうよ。」

粗っぽいストーカーのようである。

「郵便受けくらいあるだろう!」

口に出して言うほどの推理か。

「マヤに会えたらうれしいし、会えなくても私達が来たことはわかるわね!」

さっきまで若干マヤを攻撃していたくせに、うれしそうなさやか。
心の病気か。

そんなこんなでスカイハイツマンションを訪れた一同。

「北島マヤさんなんて知らんね。このマンションにはおらんよ。」

水城さんの指示通り、外客をシャットアウトする管理人。

「そんな馬鹿な!いつもここに手紙を出しているんです!
 私達はマヤの昔からの友達なんです!
 同じ劇団にいた仲間なんです!
 マヤからここの住所だと聞いてるんです!」

口調を荒げて食って掛かる麗。さすがリーダーや。

「いや・・・まあその・・・
 ファンの人にかぎつけられるとうるさいから
 世間には内緒にしてるんだよ。
 あんたたち何の用?
 本当に友達なのかね?」

麗の迫力に秒殺で真相を話してしまう。
このおっさんは信用ならない。

「マヤにチラシとチケットを持ってきたんです!
 もしいないというならマンション中家探しして・・・!」

月影千草直伝の圧力を駆使する麗。
もはや軽めの反社会勢力的発言である。

「あ、まったまった、今電話して聞いてみるから・・・」

脅迫に屈したおっさん、マヤの居室に電話する。
このおっさんは信用ならない。
圧力や欲望に負けて裏切る人間である。
大都芸能ちょいちょい人選を誤る。

おっさんを脅迫で屈服させた麗。
ふと脇を見るとゴミ箱。
そしてゴミ箱からあふれ出している破られた手紙。

「私達の・・・手紙・・・・」

衝撃を受ける麗たち。
同時進行でおっさんが掛けた電話に出たのは水城さんだ。

「そんな人たちは知らないといって頂戴。
 やってきた人にいちいちあっている暇はないって追い返して頂戴。」

冷酷ではあるが当然の対応の水城さん。

「あの・・・北島マヤさんはあなたたちを知らないっていってますよ・・・」

受話器をひったくる麗。

「麗だ!みんなと来てるんだよ!マヤ!」

受話器の向こうはもちろん水城さん。
声もなく電話を切る。

「電話を切られた・・・信じられない・・・
 管理人さんこの手紙は・・・・?」

「あっ!」

証拠隠滅が甘い管理人のおっさん。

「いやそのマヤさんが読みたくないから捨ててくれと・・・」

「そうですか・・・
 帰ろうみんな・・・
 私達が会いたかったマヤはもういないんだ・・・」

四人とも顔に縦線が入った陰鬱な表情で去っていった。

そして破った手紙を見られたことで動揺し、
指示されてもいないのに「読みたくないから捨ててくれ」などと
嘘までつく管理人のおっさん。
こいつは人間のクズである。

そんな大事件があったとも知らず
マヤがマンションに帰ってくると足元に紙飛行機が。

近所のガキが麗たちが持ってきたチラシを折って飛ばしていたのだ。
手紙が見つかってあれだけ動揺したにもかかわらず
チラシの後処理もしていない管理人のおっさん。

「おじさん!どうしてこのチラシがここに!」

「あ・・・劇団つきかげの人たちってのが訪ねてやってきて・・・」

「でも忙しいから会えないって、私が断ってもらったのよ。」

またしてもあっけなくマヤに真相を話してしまうおっさんと、
目的のためには恨まれることも厭わず、悪役を買って出る水城さん。
対照的な二人である。

もちろんマヤは激怒&号泣。
タクシーに乗って地下劇場へと駆けつけたのだった。

地下劇場は初日を迎えていた。
看板を見る限り「劇団つきかげ」としか書かれていない。
「ぷらす一角獣」の名乗りすらなくなってしまったのか。

演目は「灰色ドリーミング」
アングラ感満載だ。

マヤが懐かしさを覚えながら地下へ降りていくと
麗たちつきかげのメンバーや、その他大勢に成り下がった一角獣メンバーが熱演。
客席も爆笑に次ぐ爆笑。相変わらず人気のようだ。

「なつかしい・・・なつかしいわ・・・
 元気そう・・・よかった!」

マヤが喜んだのもつかの間、客席がマヤの存在に気づき始めたのだ。

「あ!君は?」
「おい!北島マヤがいるぜ!」
「え?おれファンなんだ!」

次から次へと、観客は舞台そっちのけでマヤに殺到する。

「皆さん今舞台の最中です!
 舞台の最中ですってば!」

マヤが叫ぶも、観客は完全に舞台に背を向けた。
舞台上にむなしく立っている麗たち。

そしてどうやってこの状況を収集したのかはわからんが終演後。

「何しに来たんだいここへ?
 売れっ子なんだってことを見せに来たのかい?
 今日の芝居、あんたのおかげで滅茶苦茶だ。初日だったのに。
 今のマヤは昔のマヤと同じじゃない。
 あんた人気スターなんだろう?
 こんなところへ芝居観に来る暇なんかないはずだ!
 さあ帰っとくれ!二度と来ないで!」

先日のマンション訪問事件の行き違いもあり、
こんな攻撃的な麗は初めてである。

言い訳もむなしく麗の厳しい言葉にむせび泣くマヤであった。

姉(兄?)とも頼む麗に絶縁にも似た言葉をたたきつけられたマヤは
今度は路上の女性に、母親の面影を見る。
さすがは人気スターのマヤ。そこでも人だかりが。
しかしマヤの心はここにあらず、
泣きながら水城さんに抱えられ去っていったのだった。

「母さんどこに行ったのよ母さん!
 どうして現れてきてくれないのよ母さん!
 あたし待ってるのに・・・ずうっと待っているのに!」

念のため確認しておくが、
女優になるため家出したマヤを待っていたのは母のほうである。

というわけで今回。
まず管理人のおっさんや。
あいつはほんまに、社会人としても人間としてもなってない。

水城さんに対してはええ顔しながら、
圧力に負け仕事を放棄し、
仕事を放棄したことがバレると言い訳をし、
しかも手紙やチラシの後処理もできないほど、
やらかしたその後すぐにやらかすタイプの人間である。

それと地下劇場の観客。
まあ今をときめくスターの身でありながら、
お忍びで変装もせず劇場に行ったマヤにも非があるといえなくはないが、
隣にスターがおったからといって、舞台の本番中に声を発するか。
民度が低いわ民度が。
もし気づきそして驚いたとしても、
本番中に私語をしてはいけないという意識のほうが普通は強いと思われるが。

その点水城さんは偉い。
マヤを大スターにするという職務に忠実であり、
そのためにはマヤに嫌われることも恨まれることも厭わない。

この人こそ真の「大都芸能の仕事の鬼」ではなかろうか。
この人こそ仮面をかぶって生きているのではなかろうか。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第15巻・華やかな迷路(3)