【ネタバレ注意】ガラスの仮面第15巻その⑩【今お前のところにいくからね!】

      2018/06/16

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「北島マヤの母親・春を世間に出すのは秋!
 大都劇場『シャングリラ』の初日だ!」

春なのか秋なのかよくわからん発言は速水真澄だ。
長らく大都芸能が病院を買収し、
その存在を隠してきたマヤの母、北島春を公開する指示だ。

「行方不明の母発見!盲目の身で療養中!
 『シャングリラ』の初日、舞台で涙の母娘対面!
 北島マヤにとっても舞台にとってもいい宣伝になる!」

「あなたという方は・・・
 あの少女も母親もお互い死ぬほど会いたがっているでしょうに・・・」

指示を受けたにもかかわらず、いらぬ同情を見せた部下。
速水真澄に襟首をつかまれる。

「この仕事に情けはいらん!
 歌手タレント役者全て商品だ!
 商品はどんな手を使っても売らなきゃならん!
 いいか!それを忘れるな!」

大都芸能の仕事の鬼・冷血漢モード発動。
しかし部下が慌てて部屋を出て行くと

「そうとも・・・仕事に情けはいらん・・・
 なのにこのためらいは何だ・・・?マヤ・・・」

マヤに聞いてもわからんわ。
あっという間にモード終了。
部下に忘れるなと厳命したことを本人がすでに忘れているようである。

そのころ長野県の福井病院。
マヤの母親・春は第二病棟に移され、
医師や看護士の監視の下、ほぼ監禁状態にあった。

離れの第二病棟に一人隔離され、
自由に外に出ることもできず、外部や人との接触もなく、
テレビやラジオは故障、そして病棟の扉は施錠されている。
露骨なやり方に、もっとうまくやれよとも思うが、
経営が厳しい福井病院にとっては大事な金づるである。

そして豪雨の夜。

「おや?薬が切れてる・・・もらってこなくちゃ。」

母親が病室を出ると話し声が。

「ではこれが今月の分・・・」

「いつもすみませんな。大都芸能さんからいつもこんなにいただいて・・・」

「その代わり他言は無用に願います。」

大都芸能と院長の密会だ。
しかし薬を切らして母親をうろつかせたり、
聞かれてはならない密会を、わざわざ第二病棟でやったりと、
前回のマヤのマンション管理人同様、詰めが甘い福井病院。

  • 春さんはまだ感づいていないでしょうな
  • テレビやラジオはわざと故障させている
  • 監禁同様の生活ですから自分の娘のことは何一つ・・・
  • いつまでああやって閉じ込めて・・・いや療養させておけばいいんですか?
  • 今しばらくだ。大都芸能の指示があるまで待ってもらいたい。
  • 今北島マヤの母親に出てきてもらっては困るんだ。マスコミで派手に行方を捜している。
  • 驚くでしょうな。自分の娘が一大スターの仲間入りをしているなんて。

「マヤ・・・・!」

もちろん驚いた春さん。

そして驚くべきことに病院を脱走した。
施錠されているため、カーテンやシーツをつなぎ合わせ、
窓から脱走。盲目の身で。
しかも長野の山の中。暴風雨。
さらには和服でというかなりのハンディ。

結果論ではあるが、あとしばらく待つことができれば
マヤはさらに一段高みのスターダムに乗ったのだが
もはや冷静な判断はできない春さん。

推定1500m級の山岳地帯にある病院を脱走、
盲目かつ単身、徒歩で東京に向かうのだった。
この無鉄砲さはマヤそっくり。
いや、マヤの無鉄砲は母親譲りといったところか。
そういえばマヤも紫のバラの人の別荘で、目をふさいで山中をさまよっていたような・・・

豪雨の山中を手をつきながら、坂というか崖を下る春さん。
健常者でも厳しい道のりを、荒天・病人・盲目の三重苦。

「知らなかった・・マヤ!
 何にもできない馬鹿な娘だと思っていたのに
 会いに行くからね!今お前のところにいくからね!マヤ!」

母の思いは強い。
しかし「馬鹿な娘」と相変わらず評価は低い。

「山を下っていけば町に出る。
 町へ出れば駅がある。
 どんなに乗り継いでも構わない、東京に行くんだ。
 そうよ運賃くらい何とかなる」

理論上はおっしゃるとおりです。
しかしその理論すら覆す悲しい出来事が。

町へ降りたころ、ようやく雨は上がったが
車にあおられよろけた拍子に、財布を落とすという致命的なエラー。

失明してるため、探しても見つけることができない。
草履も片方失い、相当交通量のある国道をふらふらと歩く。
さすがの春さんも涙ながらに天を仰ぐのだった。

しかし神はいた。
春さんの異様さに気づいた親切なトラック運転手に拾ってもらえたのだ。

「しかし無茶だな。おばさんも
 目が不自由なのに歩いて東京まで行くなんて。」

「本当に親切ありがとうございます。
 財布を落としてしまったもので・・・」

財布を落としていなくても相当無茶だが。

「おばさんパン食べる?腹減ってるだろ?」

なかなか親切で話し好きな運転手さん。
飯まで手配してくれる。

「ありがとうございます・・・
 あの北島マヤって子知ってます?」

パンのお礼も早々に、本題に入るのが早い。

「沙都子役の子だね!知ってるよ。俺ファンなんだ。
 奇跡の人のヘレン役で姫川亜弓を破ってアカデミー助演女優賞をとったていうじゃないか。」

マヤの具体的な活躍を聞き、号泣する春さんであった。

「おばさん東京に何しに行くの?」

「娘に会いに・・・娘が東京にいるもので・・・」

「この車が東京に行く便だったらよかったんだけど・・・
 そうだ、二千円しかないけど旅費の足しにしてよ!」

「ええでもそんなこと・・・」

「いいって!今度返してくれたらいいから。」

「ありがとうございます・・・どちらにお返しすれば・・・」

「中村運輸、沼津営業所の運野!
 思い出したときでいいよ!あてにしないから!」

名前からしてまさにトラック野郎。ナイスガイである。
マヤが家出して以来、春さん数年ぶりに人のぬくもりにふれたのではなかろうか。

しかしそのぬくもりもつかの間。

「体が熱い・・・昨日一晩雨の中を歩いたせいだわ・・・」

呼吸すら苦しいまでに咳き込む春さん。

「すごい熱じゃないか!病院で診てもらったほうがいいよ!」

「今はただ一刻も早く東京へ・・・」

療養所から捜索願が出されているかもしれない今、
身元不明のまま病院にいけば、
警察に届けられ、連れ戻される可能性があるのだ。

しかし情けが厚いナイスガイ、進路を変更し病院に駆け込む。

「いいねおばさん、ここにじっとしてるんだよ!
 今先生を呼んでくるからね!」

しかし運野さんが医師看護士とともにトラックに戻ったときには
春さんは姿を消していた。

とてもつらくなってきたので後は箇条書きで。

  • そしてまた降り始めた雨の中、当てもなく歩く。
  • 咳き込んでよろけたところを車にはねられる。犯人は逃走。
  • 激痛で電柱にしがみつく。通行人からは乞食扱い。
  • 吐血。肺炎か?それとも車にはねられたからか?
  • しかし通行人の会話からマヤの映画がやっていることを聞き、懇願し映画館に連れて行ってもらう。
  • 運野さんにもらった2000円で映画のチケットを買う。
  • 上映中の「白いジャングル」の客席に入る

体調不良どころかひき逃げにまであう悲劇。
しかし、スクリーン越しにマヤにあうことができた。

劇場に流れるマヤの声を聞き、
マヤと過ごした楽しい時間を思い出す。
1巻ではあんなに罵倒しまくってたくせに。

「大きくなったろうね・・・
 えらくなったんだね・・・お前・・・
 ああ、この目が見えたらね・・・
 母さん一度もお前が演技してるとこ見たことないんだね・・
 初めて学校の演劇に出たときも観に行かなかった・・・ごめんね・・・
 大河ドラマだって?アカデミー助演女優賞だって?
 あのぐずでのろまで何のとりえもなかったあたしの子が・・・」

こんな泣ける悲しい台詞の中でも
マヤをディスることは忘れない。

「一度でいい・・演技しているところを見ておきたかった・・
 でも声でわかるよ。上手なんだね・・・
 天国のお父さん、見てやってますか?マヤが演技してるんですよ。
 上手でしょう?ねえ・・あなた・・・」

そして力尽きた。

その頃マヤは「天の輝き」の撮影中。
カメラの前で躍動するマヤと、
その座を虎視眈々と伺う乙部のりえこと田代鈴子。
そして現場にはもちろんこの人、水城さん。

「水城さん、話が・・・」

水城さんの下に大都芸能の人か?

「どうかしたの?」

「北島マヤの母親のことなんですが・・・見つかりました。
 山梨の映画館の中で見つかりました・・・実は・・・」

「そんな・・・信じられない・・
 なんて伝えればいいの・・・?あの子に・・・
 あの子の母親が死んだなんて・・・」

というわけで今回その波乱の生涯を終えた
北島マヤの母・北島春。
その足跡を振り返ってみたい。

  1. 一人娘が生まれるも夫に先立たれる。
  2. ブラック中華料理店のしがない住み込み店員として働く。
  3. 一人娘に対して「何もとりえがない」と罵倒を繰り返す。
  4. 一人娘の演技を見る唯一のチャンスを逃す。
  5. 一人娘家出。
  6. 一人娘を連れ戻しに行くも、月影先生の平手打ちを食らう。熱湯で反撃。
  7. 酒に飲まれて反省し、手紙と荷物を送って一人娘の行く末を頼むも、一式燃やされる。
  8. ブラック中華料理店の激務がたたり、結核に。
  9. オーナーにばれて体よく解雇され、退職金代わりに山梨の療養所へ。
  10. 療養所を脱走して東京を徘徊するも行き倒れになり、長野の福井病院へ送還。
  11. 結核は快方に向かっていたものの、無理と栄養失調でほぼ失明。
  12. 大都芸能に発見され、大金を積まれた福井病院によりほぼ監禁生活。
  13. マヤがスターになっていることを知り、福井病院を脱走。
  14. 失明、和服、豪雨、高山という悪条件のもと夜通し山を歩く。
  15. 町についたとたん財布を落とす。
  16. 親切なトラック運転手に拾ってもらうも、急性肺炎のような症状に。
  17. 病院行きを拒み、トラックを脱走。しかしひき逃げにあう。
  18. 街中で吐血。通行人からは乞食扱い。
  19. 映画館で一人娘が主演する映画の上映中に力尽きる。

しかも13から19はその間ほぼ一日くらいである。
北島春版のTwentyFourか。

そして娘の声を聞き、娘との思い出を抱いて、亡き夫に語りかけながら絶命。
「フランダースの犬」を髣髴とさせる最期はなんかええ感じ風であるがとんでもない。
犬死にも似た最期、この人が本当にかわいそうでならないと思うのは私だけであろうか。

第16巻につづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第15巻・華やかな迷路(3)