【ネタバレ注意】ガラスの仮面第16巻その③【あの男が殺した・・・】

      2018/07/21

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舞台「シャングリラ」初日前日。
大都劇場にての最終稽古。
衣装をまとったマヤだが、以前母親の遺骨を抱いたまま。

「大丈夫かあの子?まるで生気がないぜ」
「明日の初日が不安だわ」

共演者も不安を抱えている。
さすがに劇場に遺骨持参では、不謹慎ではあるが気持ち悪いであろう。

見かねた水城さん、マヤの手から遺骨を奪う。
得意の荒療治だ。

「そんな泣いてばかりで初日が迎えられるの!?
 あなたが舞台でヘマでもしたらなくなったお母さんが嘆かれるわ!」

「待って水城さん!どこへいくの?
 返して!それは母さんの遺骨!」

「ドサッ!」と白布に包まれた母の遺骨を客席に置いた。
荒療治とはいえ遺骨の扱いが雑である。

「この席はあなたのお母さんのためにとった席よ!
 これがその切符よ!
 明日の初日のために私が手に入れておいたのよ!
 さあお母さんはあなたをここから見ているわ!」

「母さんがいるんだ…あの席に!」

そして絶妙なまでにお届けもの。
例によって紫のバラの花束と手紙。

「明日の初日あなたの演技を楽しみにしています。
 頑張ってください。あなたのファンより」

毎度のような「ずっと見ています」ストーカー手紙ではない。
これも水城さんが気を利かせて用意したものだろうか。

「その方のためにもいい演技をしなきゃね。マヤ」

「紫のバラのひとがみている
 あそこには母さんがいる!」

その頃劇場の外では乙部のりえこと田代鈴子が
公衆電話にて何者かとコンタクト中。
舞台稽古にも付き添ってマヤの隙を伺っていたのだ。

「なんですって?本当なの?その情報!
 大都芸能があの子の母親を療養所に監禁していたですって?
 マスコミの宣伝のために?
 母親付きの看護婦がもらしたと・・・」

リアルタイムに大都芸能側の動きを報告する田代鈴子のバックもなかなかの敏腕である。

「わかったわ。もうすぐ舞台稽古が終わる・・・
 やってもらいたいことがあるの・・・」

電話を切った乙部のりえ。
チャンス到来とばかりにほくそ笑むのだった。

水城さんの荒療治により、最終舞台稽古はことなきを得たよう。

「水城さん面会の方がお見えです」
「面会?どなたかしら?」

タイミングよく楽屋で一人になったマヤ。

「いよいよだわ!わたしの出番!
 今こそ幕は上がった!」

楽屋の外で稀代の名優・田代鈴子は一世一代の大舞台に臨むのだった。
そして楽屋をノックすると、号泣しながら一気にマヤに迫った。

  • さっきマヤを訪ねてお客さんが来た
  • 亡くなられたお母さんのいた療養所の看護婦
  • 今近くの喫茶店で待ってもらっている
  • あらいざらい何もかも聞いた
  • お母さんは大都芸能に監禁されていた!
  • マスコミに宣伝するため速水真澄が命令した
  • 療養所の院長も金をもらって言うことを聞いていた
  • 事実を知ったお母さんは娘に会いたいと思い脱走した
  • 見えない目で東京に向かいそして亡くなった

「速水真澄に殺されたとよ!」

とまあ誇張ゼロの事実である。
しかしこれだけの情報を手に入れた田代鈴子のバックがすごいのか、
それとも大都芸能の情報管理が甘すぎるのか。。。

そして連れてこられた喫茶店では
母親の遺品を携えた看護婦が母親の暮らしぶりや最後を克明に語る。
マヤの手は怒りと絶望で震えていた。

「大都芸能の速水真澄は血も涙もなか!
 いわば母さんの仇たい!
 そげな男の劇場に出るなんてうちなら我慢できんとよ!
 仇の舞台なぞ誰が出ちゃるかい!
 死んでいった母さんに申し訳なか!」

マヤの気持ちを一気に煽る田代鈴子。

「母さん・・速水真澄に監禁されていたなんて・・・
 マスコミへの宣伝のためですって?
 もっと早く無事に会えていたのに・・・
 速水真澄・・・あの男が殺した・・・
 憎い・・・殺してやりたい・・・」

「マヤさんこのままだまっちょる気?
 おとなしゅう明日の舞台に立つ気?
 母さんば殺した男の舞台に!」

マヤの心境の変化を感じ取り、一気に畳み掛ける。
この辺り天才的である。
その邪心と野望さえなければ女優として大成したことであろう。

すると喫茶店にいた暴走族風の男たちがいきなり現れた。

「そこまで声が聞こえてたんで聞くともなく聞いていたんだが
 大都芸能ってのはひでえとこなんだなあ。
 まったく芸能界てのは汚いぜ!」

そして集団でマヤを擁護し始める。

俺たちも聞いていて腹が立った
何か仕返ししてやりなさいよ!
俺たちと海でも行かねえか?

そしてコークハイを差し出す。

「一杯やらない?お近づきの印に!」

「結構です!」

止めに入る田代鈴子。

「ええ・・・いただきます・・・」

コークハイを飲み干したマヤ。

「速水真澄・・・殺してやりたい!
 母さん・・・もうどうなってもいい・・・」

そしてマヤは暴走族に連れられ、
バイクに乗せられると夜の闇へと消えていった。

「うまくいったわね」

途端に邪悪な笑顔を浮かべる看護婦

「こうも筋書き通りに行くとは思わなかったわ。
 あとはあの連中が計画通りやってくれるのを待つばかり・・・」

大都芸能による母親監禁の情報を聞いてから数時間と経っていないにも関わらず、
携帯やメールが普及していないこの作中で、
ほぼぶっつけ本番で芝居を成功させた
この看護婦もなかなかも名優である。
そして暴走族連中も。世の中名優が多い。

一方水城さんは面会でえらく時間を取られていた。
日向電機のライバル社のCM出演のオファーがあまりにもしつこかったのだ。
これもやはり、田代一派による策略であろう。
そして楽屋に戻ると当然マヤはいない。

「水城くんどうしたんだ?こんな夜中に?」

ガウンを着ておくつろぎ中の速水若社長に急電が入った。

「夜中遅く申し訳ありません・・・
 北島マヤが行方不明になりました・・・」

「行方不明だと!?」

「ええ誰に聞いても知らないというんです。
 楽屋にもマンションにもいません。」

「わかったすぐそちらへ行こう!一刻も早く探し出すんだ!」

マヤは暴走族に連れられ、海辺でキャンプファイヤー中。
酒をくらい、音楽を鳴らし大騒ぎする暴走族連中。

「母さん・・・あたしもうダメ・・・
 巫女リーラなんてなれやしない・・・
 あの男が殺した・・・速水真澄・・・」

絶望の淵にあるマヤ。
暴走族はここぞとばかり、コークハイに薬を入れマヤに飲ませたのだった。

「どうやら薬が効いてきたようだ!
 コークハイに睡眠薬をかなり入れておいた!
 さあこの子を人目につかないところに隠すんだ!
 そして一刻も早くこの場から離れるんだ!」

自分たちの犯行をわかりやすく説明すると、
マヤを隠し、去っていったのだった。

夜が明けた。
大都芸能では速水真澄と水城さんが部下の報告を待っていた。

「ああ・・・なぜ行方不明なんて
 きっと誘拐か交通事故でも・・・」

珍しく水城さんが凹んでいる。

「まだ決まったわけじゃない!
 いましらみつぶしに探させている!」

声を荒げる速水真澄。

「何があったチビちゃん?
 無事でいろ。早く帰ってくるんだ!」

「どうしたんだろう?いつも冷静な真澄さまが・・・
 こんな取り乱された表情初めてだ・・・」

ただならぬ若社長の様子を噂する部下たち。
この緊急事態に上司の顔色を伺っている部下はどうってことない。
そしてこんなに取り乱されたのはもちろん初めてでもない。

そしてマヤを探している部下から連絡が入った。
昨晩マヤは喫茶店にいた。
女性二人と。一人は看護婦のような口ぶり。
母親を監禁とか、大都芸能とかいっていた。
速水真澄の命令がどうとかで、マヤは真っ青になっていた。

「気づいて・・・しまったか・・・」

誇張ゼロ。全て事実である。

そして今度は速水真澄が落ち込んでいる。

「真澄さま・・・あの子気づいてしまいましたのね・・・」

さすが水城さん、追い打ちをかけることは忘れない。

「そうだな・・・
 今頃は俺を殺したいほどの気分だろう・・・
 さぞかし憎んでいることだろう・・・」

前回に続いて断罪され自らの罪を語る。

「いつも冷静なあなたがこんなに取り乱されるなんて
 こんな真澄さまは初めて・・・いえ二度目ですわね。」

朝までは落ち込んでいた水城さんだがここからまたなぜか社長を責め始める。

「やはりあの子が以前窮地に陥った時、
 台本の内容も知らないで夢宴桜の舞台に上がった時・・・
 あなたらしくもなく取り乱されて・・・」

いつかの恥ずかしい思い出を蒸し返される速水真澄。
そういえばあの時もネチネチと水城さんに責められていたような。

「大都芸能の仕事の鬼・冷血漢
 愛や恋に見向きもしないかたぶつ・・・・
 そんなあの子があの子にだけは人間らしい表情をなさる・・・
 11歳も年下のあの子にだけは・・・」

仕事の鬼冷血漢に加え、「かたぶつ」なる二つ名をつけた挙句、
11歳の年齢差を強調し、その異常性を訴える水城さん。

「魅かれていらっしゃるのね
 あの少女に
 もうずっと長いこと・・・
 強く・・・」

「水城く・・・」

速水真澄が振り返ると水城さんはもういない。

「魅かれていらっしゃるのね。あの少女にもうずっと長いこと・・・」

水城さんの言葉が脳裏をさらず、否定もできない速水真澄であった。

しかしまあめちゃめちゃである。
大都芸能の陰謀を察知し、僅かの時間でマヤの拉致に成功した
乙部のりえこと田代鈴子とその一味のもののその手際は見事と言わざるを得ない。
彼女の臨機応変さ、演技力、そして看護師はじめCMの話や暴走族まで動員するその機動力、
なかなかのものである。
マヤもその心の隙間をあっという間に乗っ取られてしまうのもやむを得ない。

今回は水城さんまさかの失策である。
これまで失敗しなかった水城さん、敵の陰謀が見事であるとはいえ、
マヤを一人きりにしてしまった隙に拉致されてしまった。
行方不明になった当初は慌てふためき、
さすがに落ち込んでいたようである。

しかしマヤが行方不明になった理由は、
大都芸能と速水真澄の陰謀を知ったからであろうことが確かになるや否や、
さすがに直接的ではないが、速水真澄をなんとなくディスっている。
行方不明とか捜索ではなく

「あの子に魅かれていらっしゃるのね」

という速水真澄の歪んだ愛情を再確認しただけである。
どんな時も臨機応変にピンチを脱してきた水城さんにしては
なんとも歯切れが悪い。
やはりこの人、速水真澄のことが好きなのだろうか。

つづく

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第16巻・華やかな迷路(4)