【ネタバレ注意】ガラスの仮面第16巻その④【恐らく地獄が待っている・・・】

   

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「北島マヤが行方不明だとの情報を聞いたんですが本当ですか!?」

「今日シャングリラの初日でしょう?
 北島マヤの役はいったいどうなるんです?」

大都劇場前に殺到する報道陣と、対応に苦慮する劇場関係者。
もちろん乙部のりえがマスコミに情報をリークしたのだ。

「マヤちゃん行方不明なんですって!?」

「開演の時間に間に合うのかしら!?」

共演者たちも大騒ぎ。
そしてその喧騒を邪悪な笑顔で楽しんでいる乙部のりえがいた。

「チビちゃん・・・無事でいてくれ・・・・
 なんてことだこの俺がこんな思いをするなんて・・・
 不安と心配で胸が張り裂けそうだ・・・
 仕事のためならどんな非情なことも平気だったはずのこの俺が・・・
 あんな小さな少女の安否を気遣って何もてにつかんとは・・・・」

いつもとは違った表現で自らの状態を解説する速水真澄。
胸が張り裂けそうな割には冷静に事実を把握できている。
要約すれば

「愛しているだと・・・11も年下の・・・(以下同文)」

とほぼほぼ同じ内容である。

開演三時間前、執念の捜査の結果暴走族の素性が判明。
どうやら「ゼット」というグループらしく、
三浦海岸の岩場で騒いだりしているそうだ。

「万が一のことを考えていてくれ。
 いいな舞台のことは君に任せる。
 必ず幕は開けるんだ。」

支配人にそう指示すると車に乗りマヤを探しに向かう速水真澄。
速水真澄の後を車で追跡するマスコミ。
しかしこの指示はいただけない。

「万が一のこと」とは「マヤが間に合わない」もしくは「幕が開かない」であろう。
しかし「必ず幕は開けろ」と指示している。
つまりマヤがいなくても代役を立てろと暗に指示しているに等しい。
君に任せるといっておきながら、全く任せていない。
ワンマン体制の弊害であろうか、大都芸能は指示待ち社員がとても多い。
指示なく自分の頭で考え意見を述べるのはもはや水城さんだけである。

三浦海岸を隈なく捜索する速水真澄と一味のもの。
近隣住民に聞き込みもし、暴走族ゼットの溜まり場を突き止める。

その頃大都劇場ではついに指示待ち支配人が苦渋の決断を強いられていた。

「舞台に穴を開けるわけにはいかん。
 よし・・・巫女リーラ役代役に変更だ・・・」

「あの・・・あたしセリフそらんじています・・・
 マヤさんについていつも稽古見てましたから・・・
 演技も全部覚えています」

「乙部くん・・・」

突然の申し出に驚きを隠せない支配人。
これだけの舞台にして、しかもマヤの状態は不安定であったにも関わらず
正規の代役は用意していなかったのだろうか?
そして乙部のりえ採用。

「場内のお客様に遺憾ながらお詫びと発表を申し上げます!
 本日出演予定でありました北島マヤ、
 不慮の事故により出演できなくなりました。
 代わりまして巫女リーラ役代役に
 新人・乙部のりえ、乙部のりえ・・・」

場内がざわめく。そらそやろ。
北島マヤ主演の舞台に北島マヤがいない上に
知らん新人が主演をやるのである。

徹子の部屋の司会が、知らん新人だったみたいなものか?
ちょっと違う。

しかしこの状況を受け入れる観客もすごいが、
この代役を決断した大都芸能サイドもすごい。

「信じられない・・・これがあのイモ少女か・・・
 なんて美しい・・・こんな美少女だったなんて・・・」

共演者やスタッフたちも驚くほどの乙部のりえの変装もすごい。

その頃三浦海岸ではボートに寝かされていたマヤが発見された。
マヤを抱き上げる速水真澄。
その姿を捉えようとするマスコミ。

「マスコミへの宣伝のためだった・・・
 お前の母親を世間から隠すような真似をしたのは・・・・
 俺のやったことはお前の女優としての運命を狂わせてしまうことになるかもしれん・・・
 眠れ・・・今はただ眠れ・・・
 目覚めれば・・・恐らく地獄が待っている・・・」

狂わせたのは女優としての運命だけでなく、
母娘の運命であることは忘れてしまっているようである。
ここ最近「俺が殺した・・・」「あなたが殺した・・・」と
ずっと断罪され自白していたにも関わらず。

その頃大都劇場は無事シャングリラの初日を終えた。

「なかなかやるじゃないかあの乙部のりえって子!」

「ああ。それに大変な美少女だしな!観客が目を奪われている!」

大喝采の中閉幕、共演者もスタッフも大絶賛だ。
何よりもセリフや動きも全く北島マヤそっくりの演技をし、
共演者も戸惑わずに演技ができたのだ。
否が応でも、仲間内の評価は上がる。

それと入れ替わるように大都劇場に電話が。

「なに!?北島マヤが見つかった!?
 前の晩に暴走族たちと一緒に海岸へ出かけ
 一晩中遊んでいたらしいだと?
 漁船の中で眠りこけていた。
 そのために舞台に穴を開けたのか?
 なんて馬鹿な・・・・」

電話を取ったスタッフは事細かに会話の内容を説明する。
その話を聞いた共演者やスタッフも
マヤへの不信感を募らせるのだった。

しかし今回も大都芸能の危機管理能力の低さを露呈した。
マヤが母親を亡くしたショックで、稽古も十分にできていないことは把握していたはずである。
にも関わらず、正規の代役を用意をしていなかった。
用意していたならば乙部のりえの出番はなかったであろう。

しかもマヤにくっついて回っているとはいえ、
その素性も実力もわからない乙部のりえを起用するという暴走。
しかも乙部のりえの素顔を知らず、
いけてないイモ少女であると思っているにも関わらずである。

結果として「シャングリラ」にとってはこの暴走は英断であったのだが、
乙部のりえが完璧な代役を務めるだけの演技ができたことも、
イモと見せかけて実は美少女であったということも、
結果オーライでしかない。
(乙部のりえにとっては作戦通りであるが)

速水真澄は支配人に対して、「幕は開けろ」と命令している。
つまり代役を立ててでも開演は必須。
しかし正規の代役は用意していない。
指示待ちの部下ではあるが、与えられた条件には限りがありすぎ。

北島マヤのネームバリューで客を集めた舞台にも関わらず、
北島マヤの代役をある意味テキトーに決めてしまうあたりどうかしている。

そして当初ざわついただけで、
乙部のりえ主役をすんなり受け入れてしまう、
観客・共演者・スタッフもどうかしている。

つづく

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第16巻・華やかな迷路(4)