【ネタバレ注意】ガラスの仮面第16巻その⑦【目的の第三番目・・・まだ結果は出ていないわ。】

      2018/08/18

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「北島マヤ芸能界失脚!!」

大都劇場、巫女リーラ役に続いて
MBA大河ドラマ・天の輝きの沙都子役を降ろされる。
なお、この後予定されていたTV・映画・舞台出演等全て取りやめることになった・・・

「紅天女もう一人の候補・・・」

マヤ失脚のニュースを新聞で読む姫川亜弓。
複雑な思いで新聞を握りつぶす。

一方の乙部のりえ。
北島マヤの代役で脚光をあびると、
大都劇場「シャングリラ」の巫女リーラ役で代役ながら迫力ある演技で話題をさらう。
大河ドラマ「天の輝き」ににも新・沙都子役として登場。
輝くばかりの美貌に早くも人気集中。
相次ぐテレビ出演、インタビュー殺到!
新しいスターの誕生であった。

「いやはや大変な勢いでスターの座を駆け上っていきますな。」

「北島マヤの後釜として出てきたから始めから注目を浴びている。
 普通にデビューした新人とはワケが違う。」

芸能関係者の評判である。
人気だったマヤが注目される中スキャンダルでさらに注目を集め、
その中取って代わった乙部のりえだけに、
彼女の大躍進は恵まれた状況によるものであるとの説が有力だ。

「スターになるには才能もさることながらチャンスに恵まれなければダメだ。
 いかにうまくチャンスを掴むかでスターになるか否か決まる。
 北島マヤ失脚か・・・乙部のりえは大変なチャンスに恵まれたものだ・・・」

しかし彼らの会話を聞いていた乙部のりえ。
平穏を装いつつも陰で高笑い。

「うまくチャンスをつかんだですって?
 チャンスとは自分で作るものよ!!」

長きに渡り冴えない付き人を装いながら内偵活動を続け、
謎の看護師役や暴走族まで動員しての一大プロジェクトを敢行しただけに
実に説得力のある言葉である。

そしてその座を奪われたマヤはマンションで腑抜けのようになっていた。

「芸能界失脚・・・女優生命を絶たれる・・・
 あたしもう芝居ができないの?
 考えても見なかったそんなこと・・・
 あたしの生活の中から演劇がなくなっちゃうなんて・・・」

怒りに駆られたいっときの気の迷いとはいえ、
マヤはどうなりたかったのだろうか。
もうどうなってもいいといいながら酒を飲んで暴走族と夜遊びして、
そのまま「シャングリラ」に出演する気であったのだろうか。
だとすると高校生とはいえ見通しが甘いと言わざるを得ない。

「水城さん・・・あたしいつまでここにいられるのかしら?
 だって私は芸能界を締め出されたのよ。
 大都芸能にとっては用無しのはずだわ。」

「何言ってるの?あなたはまだ大都芸能のものよ。
 契約書にサインしたの忘れたの?」

さすが水城さん。淡々と事実を確認する。

「契約・・・母さんがあんな目にあって大都芸能になんかいたくない!
 速水真澄なんか大っ嫌い!」

いまいちマヤの心境が理解しづらい。
演劇は続けたいし、沙都子役もリーラ役も続けたかった。
でも大都芸能にはいたくない。
大都芸能との契約があるからこそ、テレビにも舞台にも出られるのだが。

そしてマヤは役や芝居だけでなく、里美茂も失ったのだった。

  • 言いにくいことだが里美茂との付き合いはなかったことにしてもらいたい。
  • 君の起こした問題は大きい。
  • 君との交際は彼にとってマイナスになるだけだ。
  • この後彼は日米合作の大作映画に出演が内定している。
  • この大事な時に君の存在は邪魔なだけだ。
  • もう二度と電話はかけないでもらいたい。
  • たとえ偶然出会うことがあっても一言も口を聞かないでくれたまえ。
  • 目も合わせないでもらいたい。
  • 非情なようだが彼を本当に好きなら、彼のために。いいね。

以上、里美のマネージャーの言葉抜粋。
確かに非情であるが、事務所の対応としてはごくごく真っ当であり、
その言い分も極めて正論である。

「月影先生!
 どうして私を大都芸能なんかに入れたんですか!?
 どうして・・・?」

芝居も失い、恋も失い、原点の月影先生に答えを求めるマヤ。
その答えを聞くために電車に乗る。
そして月影先生が講師を務める、大都芸能関連の演劇学校「アクターズ・スタジオ」に来たのだった。
しかし受付で取次を頼むも、月影先生は多忙とのことで断られてしまったのだった。

「先生、怒ってるんだあたしのこと・・・
 舞台すっぽかしたことを知ってきっとものすごく・・・
 ごめんなさい・・・先生・・・」

とぼとぼと去っていくマヤ。
そしてその後ろ姿を窓から見送る月影先生。
久々のご登場。

「どうしてマヤに会っておやりにならなかったのですか?先生?」

月影先生の後ろには、青木麗・水無月さやか・沢渡美奈・春日泰子。
麗以外は名前を思い出すのも苦労するほどの久々の登場。
お前ら何しにきてんねん。

「あの子は泣きにきたのよ。
 慰めと励ましが欲しくてここへきただけ。
 それと大都芸能に入れた訳を私に聞きに。
 おそらくそんなとこね。」

おそらくどころか大正解。往年の大女優の超能力は半端ない。
そして突然振り返り険しい表情になると、
マヤの芸能界失脚を報じる新聞を卓上に投げつける。
一つ一つのアクションが濃い。さすが伝説の舞台女優。

「あなたたち信じる?この記事を?
 あの子が暴走族と遊んでいて舞台をすっぽかしたっていう・・・」

「なんだか嘘みたいで・・・」
当たり障りのない、美奈。

「あたし信じたくないわ・・・でも・・・」
かつてマヤを追い落とそうとしていた、さやか。

「あの子芸能界に入ってちやほやされて変わってしまったのかも・・・」
そして一度もちやほやされたことがないであろう、泰子。

「麗は?」

補欠達の味気ない回答に業を煮やした月影先生。

「もしこの記事が本当だとしたらこれは別人ですよ。
 私たちの知っていたマヤじゃない。
 こうなった原因はなんなのか、そこに問題があるような気がします。」

いつも明確な答えやアドバイスをくれる青木麗にも関わらず、
なんとも歯切れの悪い回答である。やはり舞台初日を潰されたのを恨んでいるのだろうか?
そして記事の内容はもれなく事実である。

しかし我が意を得たとばかりに、まさかの満面の笑みで答える月影先生。
このあたりの表情のギャップも伝説の名女優である。

「私はマヤを信じていますよ。
 あの子は死んだって舞台をすっぽかしたりする子じゃない。」

しかし、舞台をすっぽかしたのは事実であり、しかも生きている。

「それに内気なあの子が暴走族なんかとまともに付き合えるものですか!
 あの子海岸で発見された時睡眠薬をのまされていたそうよ。」

「睡眠薬を・・・!」

大都芸能と病院関係者以外には伏せている極秘情報も入手している。おそるべし。

「思った以上に芸能界は怖いところね。
 あの子はその中でおそらくずっと闘ってきたのよ。
 たった一人で。褒めてやりたいくらいだわ。」

本人には慰めも励ましもやらないくせに、
本人のいないところで褒める。
野村克也監督のような人心掌握術である。

「あの子があなた達からの手紙を破ったっていってたわね。」
「え、ええ!」
「あの子が破ったところを見たの?
 マンションを訪ねた時会いたくないと断ったそうね。
 マヤが直接そういったの?」
「いいえ・・・先生・・・」

「惑わされてはダメよ。
 真実はいつもひとつだけ。
 ちょっとした誤解が大きな悲劇を生むこともあるわ。」

往年の大女優は、名探偵でもある。

「何が会っても自分の信じるものを信じるだけ。
 自分の目で確かめるまではね。
 私はあの子を信じていますよ。」

月影先生の名探偵ぶりにたちまち反省し、
マヤへの思いを口にする補欠達。
そんなんやから補欠やねん。

「先生は以前、マヤが成功しても失敗しても
 悪影響を与えるとおっしゃいましたね?
 なぜマヤを大都芸能にお入れになったんですか?
 先生の目的は何だったのです?」

さすが青木麗。他の補欠連中とは違い、
読者の聞きたいこと、そして月影先生が喋りたいことを絶妙に引き出す。
おそらくつきかげのメンバーは、
月影先生の真意を読者に説明するだけのために描写されたのだろう。
そうでもなければ、大都芸能関連の俳優養成所に出入りできるわけがない。

そしてそんな麗のナイスアシストをすかさずゲットする月影先生。

「目的の一つは私から引き離すこと。
 二番目は今まで知らない世界を教えること。
 TV界映画の演技、そこであの子はよくやったわ。
 大都芸能でなければこんな急激にスターにはなれなかったでしょう。」

「でもそれじゃあ先生の思惑は外れたことになりますわ!
 だってあの子は芸能界を締め出されたんですよ!
 やっぱりあの子を芸能界に入れたのは失敗だったんじゃないですか?」

いいねぇ麗。月影千草・第三の目的を語らせるために反論してみる。

「失敗?とんでもない。
 目的の第三番目・・・まだ結果は出ていないわ。」

「目的の・・・第三番目?」

舞台映えしそうなやりとり。
順調に育てば麗も脇役としてかなりの名優になる素質を秘めている。

「それこそが私の本来の目的なのよ。
 私はあの子に賭けているんです・・・!」

「賭けを?」

「そう・・・あの子の胸の底の情熱に・・・!
 演劇への熱い想いに!
 これからあの子が自分の手でどんな明日を開くか見て見たい!
 ただひとりで紅天女にどう向かってくるか?わたしは知りたい!
 役が与えられるものではなく、自分の手でつかみとるものなのだと、
 あの子が悟る時を知りたい・・・!」

何だかわけわからんくなってきたが、長ゼリフをやめない月影千草。

「情熱・・・才能・・・
 燃え尽きることもなく、死ぬこともない・・・
 やがてあの子は知るわ・・・それを知るわ・・・
 自分の運命を知るわ・・・その時こそ本物の女優が生まれる・・・
 わたしはあの子の女優としてのすべての素質に賭けたのです!
 第三の目的の結果がどう出るか?
 今こそ見せてちょうだいマヤ!」

結局第三の目的は分からずじまいである。

「第三の目的・・・?
 月影先生は一体何を考えていらっしゃるの・・・?」

目の前で長々とで聞かされている麗達にもわからないらしい。

 

というわけで今回目だったのは月影先生の名探偵ぶりと麗の名脇役ぶりである。

「真実はいつもひとつだけ」

どこかの体は小学生の名探偵のセリフそのままである。
そして麗は見事なまでに相槌や反論を繰り返し、
月影先生の真意を読者に語らせるべく、ナイストスを上げ続ける。

月影先生の第三の目的とは何か?
おそらくではあるが「役は自分で掴み取る」という言葉にヒントがありそうだ。
これまでマヤは自ら意を決して月影先生に入門したものの、
月影先生の敷いたレールを順調すぎるほど真っ直ぐ走り、スターダムにのし上がった。
演技をすること、演技ができることが当たり前になっていたのだ。

しかしすべてを失い、あるのは「芝居への情熱」と「紅天女候補の肩書」のみ。
再びスタートラインに戻されたマヤが、才能と情熱を燃やして
どのような女優になるのか?このまま潰れるのか?それを見たいということであろうか?

月影先生の長ゼリフ、途中はあんたの純粋な興味やないか?とも思ってしまう。
そして麗が、「第三の目的とは?」とナイストスを上げ続けるにも関わらず、
アタックを打たない。大女優は共演者のアシストなど省みない。
第三の目的、言いたいけれどなかなか言わない。RGか。

そしてかつては「紅天女候補の候補」くらいの位置で、
その才能を買われ全国からスカウトされたにも関わらず、
「マヤの才能」ばかりを熱く語られ、
絶妙の前フリも無視され、
月影先生の真意を語る(全てを語っていない)ためだけに、
この場に集められたつきかげのメンバーの心中を思いやると、
何ともやりきれない。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第16巻・華やかな迷路(4)