【ネタバレ注意】ガラスの仮面第16巻その⑧【あの子はあなたのものです】

      2018/08/25

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「次のあなたの仕事が決まったわ。舞台劇よ。」

月影先生に門前払いを食わされたマヤを待ち受けていたのは水城さんだ。

「舞台劇?だってあたしはもうどこからも仕事は・・・!」

「真澄さまがあなたをこのままにしておきたくはないとおっしゃるのよ。」

役者としてはこのままにしておきたくないが、
個人的にはこのままにしておきたいというのが本音だろう。

「速水真澄・・・!
 あたしいやです!
 あの人の命令なんかあたし・・・」

「そうわいかないわ!
 大都と契約している以上、大都からの仕事は断れないはずよ。
 契約違反になってもいいの!」

「契約・・・
 そうだたんだあたし契約してたんだ・・・
 大都芸能と・・・あの速水真澄と・・・」

今更ながら契約の重要性に目覚めるマヤ。

連れてこられたのはアテナ劇場。

「ここは大きくはないけれど伝統のある劇場よ。
 いい文学作品をよくやっているわ。
 大都芸能の役者もよく呼ばれて出演しているのよ。」

中に呼ばれ渡されたシナリオ「黄金の実」
演出家らしきおっさんから説明を受ける。

「1800年代中期イギリスの片田舎が舞台。
 二大勢力を握る二組の農園主と
 その真ん中のちっぽけなリンゴ農園を営む一家。
 そこに男ばかりの伯爵家が絡んできて巻き起こる悲喜劇だ。」

実に面白くなさそうだ。よくない文学作品もやっているのだろうか。

「君のやるのはそのリンゴ園の主の孫娘。
 お転婆でちゃっかりとした13歳の少女マージだ。
 出番はそう多くはないがしっかりやってくれたまえ。」

演出家から説明を聞き終わり、扉を開いたマヤ。
すると扉から慌てて離れる人影、
廊下に集まっている数十人の人だかり、
そして彼らの冷ややかな視線であった。

「何をしてるんだ君達は!見世物じゃないぞ!」

演出家に促されさっていく一同。

「何だってあんな子を引き込んだのかしら?」
「速水真澄のコネでしょ。」
「いやねあんな問題を起こした子と一緒に舞台に立ちたくないわ。」

マヤにまでしっかりと聞こえてくる陰口。
速水真澄のコネとわかっているにも関わらず、陰口を叩いているやつは勇者である。

「我慢しよう・・・今は何があっても・・・
 ちゃんとこの舞台の演技をやり遂げるんだ。」

 

一方の大都芸能では速水真澄が報告を受けていた。

「そうかしぶしぶ舞台に出ることになったか。」

「契約ですもの。マヤに逆らえるはずはありませんでしょう?」

すでにキレ気味で報告の水城さん。
「でしょう?」と質問に質問で返すあたり、今日もやってくれそうである。

「利口な子だ・・・金の卵をこんなことで潰したくない・・・」

速水真澄の反応が予想通りだったのか、謎の笑みを浮かべる水城さん。
次なる爆弾をぶっ込んでいく。

「里美茂のマネージャーから申し入れがありました。
 今後一切関わってくれるなと。それが里美茂のためだと。」

「それであの子は?」

「承知しました。」

「承知した・・・?」

白目化する速水真澄。

「ええ一言の弁明もせずに素直に・・・」

「初恋宣言も終わりを告げたというわけか。」

平静を装っているもののここからが今週の水城冴子。

  • 可哀想でしたわ。あの子。
  • 涙も流さなかったんですよ。流せなかったんです!
  • あまり多くのことが重なって。うなづいただけでした
  • はじめはあの二人を引き裂かなければならないと思っていました。
  • でも今のあの子には里美茂の優しさと慰めと励ましが必要だったんです。
  • 誰だってそうでしょう。悲しみを支えてくれる人がそばにいれば耐えられる。
  • あの子はそれすら失ってしまったんですわ。
  • もっとも里美茂の気持ちは何一つ聞いていませんけれどね。
  • でも今となってはもう遅いでしょう。
  • 今度の舞台であの子が立ち直ってくれることを期待していますわ。
  • あなたもそれを望んで舞台の話を押し付けられた・・・
  • そうでしょう?

皮肉たっぷりにマヤの現状と心境、
そして速水真澄の本心を語る水城さん。

「水城くん!」

図星を当てられ返す言葉もない速水真澄。

「大丈夫。あの子も契約書には逆らえませんわ。
 薄い紙切れ一枚の絆・・・
 大切になさいませ。
 あの子が女優として生きるも死ぬもあなたの手にかかっていますのよ。
 契約書がある限りあの子はあなたのものです。」

「大都芸能のものだ」

「いえ。あなたのものです。」

相変わらずやってくれる水城さん。
業務報告から一気に速水真澄の核心を突き、
さらにはマヤと速水真澄をつなぐものは
たった一枚の契約書だけであるという事実を認めさせ、
さらにはそれを私物化しているということを二度もいう。

ロジックは完璧でぐうの音も出ない速水真澄。
しかしなぜ水城さんがここまで速水真澄を徹底的にいたぶるのかは不明である。

「何ですって?又あの子が舞台にに出ることになった!?」

怒りと驚きの表情は2代目沙都子の乙部のりえ。
何者かからマヤの動静を聞いていたのだった。

「あの子・・・せっかく陽の当たらない場所に追い込んだというのに!
 こうも早く出てこられちゃ迷惑なのよ。
 何とか今のうちに手を打たなければ
 見てらっしゃい。見事に潰してあげる!」

さすが乙部のりえ。
腹黒い策謀にかけては、小野寺先生と双璧である。

そしてアテナ劇場では「黄金の実」の初日を迎えていた。

「演ろう・・・ともかく今はマージに成り切って!」

しかしマヤが舞台に出ると客席からは話し声が聞こえる。

「あら・・・あの子・・・」
「まあ・・・北島マヤだわ・・・」
「え?あの沙都子役を降ろされた・・・」
「あの子暴走族と繋がりがあるんですって?」
「大都劇場の舞台をすっぽかしたんでしょう?」
「いやね。そんな子がまた舞台に出るなんて。」

独り言やひそひそ話を通り越して私語の多い客席。
大きなざわめきとなってマヤに聞こえるのだった。

 

「何ですって?睡眠薬を飲まされていた?
 本当なのママ?」

その頃姫川亜弓は母の姫川歌子と会食中。
「奇跡の人」ではオーデションで七光りと言われることを嫌い、
自宅を出て中野の父親のマンションに住み込んだ姫川亜弓だが、
どうやらまだ自宅には戻っていないようである。

「そんな噂が流れてるわ。
 誰かが北島マヤを陥れるために仕組んだ罠だろうって。
 ただ証拠が何もないのよ!」

さらに続ける歌子さん。

  • テレビ撮影中あの子がいた時よくアクシデントがあったわ。
  • あの子の登ったマストの支えのとめがはずれていたり
  • あの子の乗った人力車が壊れていたり
  • タオルに胡椒がかけてあったり
  • あの子めがけて天井からバケツがふってきたこともあったわ。
  • 食べたパイにガラスの破片が入っていて口を切ったこともあるのよ

「そんなことが・・・・
 そんなことがあったなんて微塵も感じられなかった・・・!
 テレビのあの子からは!驚いた子!
 卑怯な・・・いったい誰がそんなことを・・・・!」

亜弓の心の声に対して被せるように歌子さん。

  • マヤの代役の乙部のりえという少女たいしたものだわ。
  • 北島マヤそっくりの演技をするのよ。
  • もともと付き人だとか言ってあの子にまとわり付いていた
  • そこを買われて代役に抜擢されたくらいよ。

「マヤそっくりの演技・・・?
 付き人・・・?」

そらそうやろ。何者かによる数々の嫌がらせののち、
何者かによって罠に陥れられ、そして付き人が代役になり、そっくりの演技をする。

このできすぎたストーリーを娘に淡々と情報として説明する歌子さん。
一片の疑いも持っていないのだろうか。それとも大スターはそんなことには興味がないのだろうか。

しかし娘の姫川亜弓はそこまで老成していないようだ。

「ママ・・・今度大河ドラマの撮影がある時、
 MBAへ見学にいってもいいかしら?邪魔はしないわ。」

「どうした風の吹きまわし?
 あなたがママの演技を見にくるなんて。
 いいわよスケジュールの都合がついたらいらっしゃい。
 あなたがくれば周りの方も喜ぶわ。」

「ありがとうママ・・・・」

もちろん見にいくのはママの演技ではない。

 

というわけで今回、
一番気になったのは姫川歌子さんだ。
「犯人は最も得をしたやつである。」なんてよくいうが、
北島マヤの失脚は何者かの罠であるという噂を知っており、
北島マヤへの数々の嫌がらせやアクシデントも実際に見ており、
そしてマヤ失脚後、マヤの付き人をしていた乙部のりえが代役としてマヤそっくりの芝居をしている。

これだけの状況証拠が揃っているにも関わらず、
「何も証拠がない」といい、
乙部のりえの演技力を褒めている。
本当に何も気づいていないのだろうか?
それとも乙部のりえが疑わしいと思いつつも、
大スターたるものそんな状況証拠だけで疑ったりしない鷹揚な性格なのだろうか。

そして「奇跡の人」においてはあれだけマヤと熱烈なアクトバトルを演じ、
実の娘・亜弓よりもその才能と実力を評価していたにも関わらず、
なんだか人ごとでよそよそしい。
大スターたるもの、えこひいきなどしないのだろうか。

それにひきかえ水城さん。
今回も絶賛大暴走。

「お前とマヤのつながりは、紙切れ一枚じゃ!」

と社長に宣言する秘書。
前代未聞である。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第16巻・華やかな迷路(4)