【ネタバレ注意】ガラスの仮面第16巻その⑨【女優失格・・・!】

      2018/09/01

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姫川亜弓が何らかの意を決した頃、マヤは舞台でピンチを迎えていた。
例のスキャンダルに関する客席のざわめきが舞台上にまで聞こえて
マヤの仮面を揺すぶっていたのだった。

しかしそこは百戦錬磨の舞台度胸。
大きな音を立てて椅子に座り、客席を沈黙させると
抜群の演技センスを披露。

マヤに反感を持っていた共演者たちに

「うまいわね。やっぱりあの子・・・」

「間の取り方が抜群だわ・・・」

と舞台袖で感嘆せしめる演技。
今度はリズミカルなセリフの応酬で客席を爆笑させる。

「マヤ・・・」

舞台袖で見守りながらも一息をつく水城さん。
その表情は母のようであり、姉のようであり、
仕事に対しての誠実さと情熱は間違いない。
速水真澄に対して以外は。

しかし謎の女性三人組がまた舞台まで聞こえる噂話を始めたのだった。

「あの子女優になるために病気のお母さん
 わざと行方不明にしておいたんですってね。」

もはやスキャンダルを事実を通り越した
デタラメの誹謗中傷。
さすがのマヤも手にしたリンゴを落として固まってしまう。

「母さん・・・」

亡き母への想いという、最も脆い部分を突かれたマヤ。
女性三人組はなおもやめない。

「ひどい子ね。
 お母さんを犠牲にしてまでスターになりたかったのかしら?」

「へえ、そうなの。
 よく平気な顔で舞台に立ってるわね。」

バッキーン!という効果音を立てて砕けたマージの仮面
その下には平気ではないマヤの顔。

リンゴを落としたまま動かないマヤ。
ざわめく客席。

完全に仮面を剥がされたマヤは舞台に立ち尽くしていた。

「なんだあの子つったったままだぜ?」
「どうなってるんだこの芝居?」

相変わらず私語の多い客席。
しかしマヤの耳にはもはやその声も聞こえない。
先ほどの女性の誹謗中傷が頭の中に響いていた。

「引っ込め木偶の坊!俺たちはカカシを見に来たんじゃないぜ!」

もはや私語を通り越してブーイングの客席。
なかなかガラが悪い。
共演者のアドリブ演技で舞台袖に連れてかれたマヤ。
水城さんが抱きかかえるももはや心ここに在らず。

「母さん・・・違う!わざとじゃない・・・
 あたしが母さんを犠牲にしたなんて・・・
 あたしじゃない・・・そんなことしない・・・」

「しっかりしなさいマヤ!あなたマージのはずじゃないの?
 マージの仮面はどうしたの!自分が丸出しじゃないの!マヤ!」

いつも自分の気持ちを丸出しに速水真澄に食ってかかる水城さんの言葉。

「そうだ舞台の上だったんだ・・・
 あたしったらなんてこと・・・!
 誰かが知っている・・・!
 病気の母さんわざと行方不明にしていたこと・・・
 あたしじゃないあたしじゃない!
 でもあたしのせいで死んだんだ・・・
 あたしの犠牲になって・・・」

根も葉も無い誹謗中傷、さらに母の行方不明の真相を何者かが知っているという圧力に
悲観的になり自分を責め始める。

舞台は何とか進行するも、マヤの心はただの母を亡くした娘だった。
再び出番が訪れ、舞台に出るも、
共演者が驚くほど演技を忘れたこわばった表情。
セリフも動きも固まり、共演者の台詞すら聞こえない。
事情を知らない演出家も激怒する。

そして相変わらずガラの悪い客席。

「おいひっこめ木偶の坊!」
「なんだ下手くそ!それでも役者かよ!」
「また代役立てたらどうだ!!」

なかなかタイムリーな野次で客席大爆笑。
この三人目はセンスがある。

ついには客席にバナナの皮が投げ込まれる。
客席で食うな。

「行きましょう!こんな下手な芝居みてられやしないわ!」

騒ぎの元となった謎の女性三人組は作戦成功とばかりに客席を去っていったのだった。
そして激怒の演出家の命令で即座に舞台から下げられてしまったのだった。

「演技できなかった・・・!
 舞台の上で・・・!
 こんなことって・・・!」

終演後演出家から降板を告げられ途方にくれるマヤ。

「演技ができなかった・・・女優失格だわあたし・・・
 そうよ女優失格・・・もうどこの舞台にもたてやしない・・・
 どうなるの?あたしこれからどうして生きていけばいいの?
 他に何も取り柄がないのに・・・」

かつて「何も取り柄がない」と言っていたマヤだが
「他に何も取り柄がない」と1ランクアップしたようである。

「女優失格・・・!
 演劇をやめる・・・?
 あたしが・・・演劇を・・・?」

というわけで今回、おそらく乙部のりえが差し向けたであろう三人組の
謂れなき誹謗中傷により仮面を剥がされてしまったマヤ。

しかし何と言っても気になるのはアテナ劇場とその観客である。
アテナ座は大都芸能とも交流のある老舗の劇場で
よい文学作品を演っているとのこと。

しかし演出家はマヤに対して厄介者のように冷たく接し、
ビハインドにあるマヤを守るという気配もない。
スキャンダル後とはいえ、速水真澄の肝いりであるマヤを降板させてしまって
今後大都芸能との関係は悪化するであろうことは考えなかったのか。

そして共演者も非常にマヤに対して冷たい。
やはり急速にスターになったマヤへの風当たりは強いのだろうか。

そして何と言っても客のマナーの悪さ。
まあこれは今回に限らず、ガラスの仮面全般を通して、
劇場の観客は私語が多く声がでかい。
観客に限らず、審査員や、舞台袖の共演者や演出家も声がでかい。

もちろんそれは舞台上にあるマヤやその他の人物を描写するための解説者的役割を担っているのであるが、
それを通り越して今回のアテナ劇場の客はひどい。

乙部のりえが差し向けた三人組が発端であるとはいえ、
場末の劇場のような罵声怒号が飛び交い、
バナナの皮まで投げるという恐ろしい連中である。
とてもよい文学作品を見に来る客層とは思えない。

そして女優失格と自ら悟ったマヤ。
「演技ができなかった・・・」
とあたかも初めてのように言っているが
ちなみに二回目である。

一回めは劇団つきかげぷらす一角獣、地下劇場の初回作品「石の微笑」
あの時も母を思い涙を流して人形の仮面が壊れたのであった。

そして舞台袖で月影先生の鉄拳制裁を受け、女優失格を言い渡されたのだったが
今回もし月影先生がこの舞台を見ていたらどうなっていたことか?
考えてだけでも恐ろしいものである。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第16巻・華やかな迷路(4)