【ネタバレ注意】ガラスの仮面第17巻その①【大都芸能のものだ。俺のものだ・・・】

      2018/09/29

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ライバル・姫川亜弓が乙部のりえに
宣戦布告とも取れる猛毒を吐いていた頃、
マヤは大都芸能に呼び出されていた。
先日のアテナ劇場「黄金の実」での失敗を聞いた
速水真澄に呼び出されたのだった。

  • 早くクビにしてください。
  • 演技できなかった。
  • 大都芸能の役には立たない。
  • 商品として失格ですから。

完全に自信を喪失し、自ら演劇を離れようとするマヤ。
しかし速水真澄はタバコを消すと
どさくさに紛れてマヤの顎を掴みまくし立てる。

「そうはいかなないな。君には元手がかかっている。」

お前が勝手にやったことやろが。

「甘ったれたことを言うな。」

もっとも自分の欲に甘いお前が言うなや。

「役者なら何があっても役の仮面を外すな。」

仮面というキーワードはいつからお前も含めた共通言語になったのか。

「それでも紅天女候補かこの馬鹿者!
 今まで何のために演劇をやってきたんだ!
 苦労してここまできたのは何のためだ!
 一流の女優になるためじゃなかったのか!
 紅天女を演れるような女優になるためじゃなかったのか!」

逆にお前は何のためにマヤをここまでバックアップしているのかについて問い詰めたい。

「観客の野次がどうした!
 そんなものに惑わされているようじゃ女優失格だぞ!
 この次の舞台では耳に栓でもしておくんだな。」

しれっと次回出演の話を切り出す。

「丸和デパート8階の劇場でやる民話劇だ。
 劇団菜の花と組んでやる。
 今度はうまくやれ!」

「民話劇・・・
 もうどこの舞台にも立てないと思っていました。
 アテナ劇場であんなことやってしまって・・・
 それでなくてももうどこにも相手にされないはずなのに・・・」

マヤは母のことを思うと体も心も動かず、演技ができないのだった。
女優になるため家出して以来、母の病気も知らず、
そして母はマヤを探してさまよい、脱走し、そして死んだのだ。

「演技できないんです・・・女優失格です・・・」

涙を落とすマヤ。
そこにタイミング悪く書類を持ってきた女性社員が来るも、
気まずい空気に耐えられず去っていく。
やはり水城さんのように社長の心の隙間にズバズバと入り込む逸材はそういないらしい。

その凡才の女性社員は自室に戻ると早速噂話。

「それにしても最近の真澄さま変よ。
 時々じっと考え込んでいたり、
 ぼんやりなさっていたり・・・
 それに近頃なんだか優しくなられて・・・
 まさかあの方が恋?」

名もなき凡才の社員にすら気づかれている様子である。

「もう一度やりたまえ。
 今まで君はどんな困難でも乗り越えてきたじゃないか!」

「嫌です私もう演技できません。できないんです。」

「これは俺の命令だ!」

「嫌です!」

「何だと!」

どさくさに紛れて手を握る速水真澄。

「話してください!あなたなんか大っ嫌い!」

この描写だと女性とストーカーのやりとりのようである。
ちゅうかまあ、ストーカーである。

「もう一度舞台に立つんだ!立ち直るんだ!」

「立ち直る?何のために?誰のために?
 大都芸能のためですか?」

「君のためにと言っても信じはしまい。」

「はい」

「よろしい!では大都芸能のためだ。
 舞台には出てもらう。
 忘れるな。契約書がある限り君は大都芸能のものだ。
 俺のものだ・・・」

どさくさに紛れて公私混同はなはだしい
破廉恥なセリフを言ってのける。
「お前のものは俺のもの」に匹敵する所有権の主張。

大都芸能の株式保有比率とかは知らんが、
従業員や関係者を「使用人」「所有物」としてしかみていない
最悪な経営者の典型である。

この一言には流石のマヤもドン引き。

「俺の命令は聞いてもらう。」

「もし嫌だと言ったら?」

「君に契約違反料が支払えるか?」

「卑怯者!あなたなんて殺してやりたい!」

「それだけの元気があれば結構だ。
 さぞかし舞台でいい演技ができるだろう。
 さあ行きたまえ。台本を持って次の舞台へ!」

そしてマヤが向かった先は劇団菜の花。

「大都芸能の北島マヤさんだ!
 丸和デパートでやる民話劇に客演してもらうことになった。
 『天人菊の里』では長女菊乃を演じてもらうことになった。」

代表か演出家か知らんが紹介される。
しかし、劇団員たちの反応はアテナ劇場よりもさらに冷たいものだった。
挨拶しても、全員無視。

そんな中一人の女性劇団員が話しかける。

「私たちは弱小劇団で大きな劇場で演技したくても金もないし、
 名も売れてないから借りられない。
 公演の依頼があっても子供のための民話劇。
 デパートの客寄せの宣伝さ。
 それもやるときゃ必ずよそから少しは名の売れた役者さんを借りて来るんだ。」

そしていきなり足払い。
もう無茶苦茶やん。
たまらず転ぶマヤ、爆笑する劇団員たち。

  • だけどあんたの力を借りなきゃならないほど落ちぶれちゃいないよ!
  • はっきり言ってあんたなんか迷惑なんだ!
  • ちょっと前まではスターだったかもしれないが今じゃ落ち目の役者じゃないか。
  • この前のアテナ劇場で演技できなかったんだってな
  • 大都劇場での舞台を寝込んですっぽかすなんざ大した役者だぜ!
  • 大女優さまさまだ!

「おい誰かこの大女優さんにお茶をもって差し上げろ!」

そして湯飲みにマヤの目の前でお茶を注ぐと、
マヤの顔面にぶちまけたのだった!

もうめちゃくちゃやん。

「わりぃ。大女優さんの前なんで思わず手が滑って・・・」

爆笑の劇団員。無言のマヤ。

「さあみんな台本読みに入ろうぜ!
 この弱小劇団のために客演してくださるマヤさんを囲んでよ!
 さあよい子のための民話劇!
 はじまりはじまりー!」

気勢を上げる劇団員。
弱小劇団の雑草軍団ゆえに、スターを妬みひがんでいるのか。
彼らにしてみれば恵まれた環境にも関わらず、
舞台をすっぽかし、舞台に出ても演技できないマヤは腹の立つ存在であろう。
しかし、罵詈雑言に飽き足らず、お茶をぶっかけると言う悪行。
そんなんやから売れへんねん。
そして最後の「よい子のための」のくだりは皮肉が効いてておもろい。

その頃プラザ劇場。
いよいよ「カーミラの肖像」初日を迎えていた。

マヤの代役から自身の役、そして主役にのし上がった乙部のりえを売り出すために、
マスコミの重鎮や演劇評論家も多数招待されている。
芸術祭演劇部門の新人賞狙いだ。

しかし乙部のりえはあれていた。

「コーラなんていやだっていったでしょ!
 私は牛乳を持ってきてって頼んだのよ!」

マネージャか付き人かわからんが、コーラを持ってきた女性にコーラを投げつける。
早速の大女優っぷりを発揮。
そして本番前に牛乳を飲む役者なんて聞いたことがない。

「もうやめたまえ。さっきから6杯目だ。」

冷静なツッコミのマネージャーのおっさん。

「初日開演前であがっているのはわかるが、飲み過ぎは体に良くない。」

ツッコミどころはそこではない。

「うるさいわね放っておいて!
 開演前には牛乳を飲まないと落ち着かないのよ!」

ミルクジャンキーの発言は乙部のりえ。
シャングリラの開演前も6杯ひっかけたのだろうか。

やっとの思いで北島マヤに成り代わり、
スターダムへの道を切り開いただけにその緊張と不安は格別だ。

対して姫川亜弓。

「吸血鬼カーミラ・・・
 生き血と仲間を求め長い時を生きてきたカーミラ・・・」

鏡の前で水のように静かである。
しかし、静かに闘志の炎を燃やしていたのであった。

「演ってみせるわ私のカーミラ。
 虚の日のために稽古の間中演技を抑えてきたのよ。
 私の吸血鬼を演じてみせる・・・」

姫川亜弓らしい発言であるが、
ハナから稽古をセーブし、本番で違うことをやってみせる気満々であったという、
プロの役者としてはどうよ?

舞台袖に集まった出演者。
輝きを放つ姫川亜弓、
緊張に震える乙部のりえ。
さっそく亜弓の存在感を思い知る。

「乙部のりえ・・・!
 卑怯な手段で北島マヤの演技を邪魔し、
 舞台に出られないよう仕組んでその座を奪った少女・・・
 あなたは同じ役者の風上にも置けない!
 役者は演技で勝負するものよ・・・!」

舞台袖で震え続けている乙部のりえ。
自身の今後を決める主役の重圧に、
姫川亜弓の巨大な存在感がブーストをかける。

「今日の舞台、役者は実力と才能だけがものをいうのだということを思い知らせてあげる・・・!
 あなたとわたしの実力の差をはっきりと思い知らせてあげる・・・
 そして北島マヤとの才能の差を・・・
 みてらっしゃい・・・!
 わたしはあなたのような卑怯な役者は許せないの・・・!
 思い知らせてあげる・・・!」

 

というわけで今回。
大都芸能に縛られるマヤと、縛りつける速水真澄。
打倒乙部のりえの初日を迎えた姫川亜弓。

正義の心で卑怯を憎み、頼まれたわけでもないのにマヤとの実力の差を思い知らしめる。
一見男気溢れる行為だが、ただの一方的な私怨である。
もちろん毎回もれなく好評を博す亜弓さんのことだから
観客が満足するのは間違い無いのだが、
私怨のために脇役として出演し、稽古の演技をセーブし、
本番でかましたれ精神。どうなんよ????

そして本番前に牛乳6杯飲み干す乙部のりえ、イかれてる。

そして劇団菜の花。客演を罵り足払いとお茶。イかれてる。

そして奴隷契約でマヤを縛り付け、
パワハラと違約金で脅し、
最終的には「俺のもの」発言の速水真澄もイかれてる。

演劇や劇団の一般的なイメージは、
アングラ、排他的という部分が多いのは否めない。
そしていわゆる、芸能界とか大女優とか、
その一般的なイメージが黒くて闇が深いというのも否めない。

その一般的なイメージを凝縮したような今回のお話であった。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第17巻・華やかな迷路(5)