【ネタバレ注意】ガラスの仮面第17巻その④【俺にしてやれることはこれしかない】

      2018/10/27

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劇団菜の花を追い出されたマヤ。
大都芸能のマンションには帰れない。
そして懐かしいつきかげのメンバーが住むアパートを訪れるも、
雨の中外からその部屋の様子を伺うだけであった。

「麗・・・さやか・・・
 みんないるのね・・・みんなに会いたい・・・」

みんなと言いつつ、名前を呼ばれない美奈と泰子は不憫である。
そういえば当初このアパートにはマヤ、麗、月影先生が住み、
さやか、美奈、泰子は近くに住んでいたはずだが、
マヤは大都芸能の寮に入り、
月影先生はまだ起居しているのだろうか?
それともマヤを大都芸能に入れた見返りに
住宅まで用意してもらったのだろうか?
その辺りは描写されていない。

「麗・・・それからつきかげのみんな・・・
 さようなら・・・あたし演劇できなくなっちゃった・・・」

とうとうさやかも名前を呼ばれなくなった。
まあ、麗が特別扱いというのは理解できるが。

「あたしお芝居やめるの・・・
 なんの取り柄もない元のマヤに戻るの。
 ごめんなさい月影先生・・・
 紫のバラのひと・・・
 ごめんなさい・・・
 あたし演劇をやめるんです・・・」

各方面に謝罪を重ねながら雨の中を去って行ったのだった。

その頃大都芸能にて。

「なんだと?マヤが家を出た?」

「驚かないでくださいね真澄さま。
 あの子劇団菜の花で演技できなかったんです・・・
 演技できなかったんです・・・何一つ・・・」

水城さんの「驚かないでくださいね」という前フリを理解してか
とても驚く速水真澄。
本当にわかりやすい人だ。

「信じられない・・・」

「おそらくもう帰ってきませんわ。
 大都芸能にもあのマンションにも・・・
 演劇をやめると私に電話をかけてきましたから・・・」

敏腕マネージャーの水城さんらしからぬ報告である。
いつもの彼女なら、何らかの手を打っているはずだが、
今回はただただ人ごとにも聞こえる報告である。
それとも速水真澄を泳がせて後でイジり倒してやるため、
あえて何も手を打っていないのだろうか?
そんな邪推すらしてしまう日頃の水城さんの悪意あふれる仕事っぷりが好きだ。

その頃マヤはいつもの公園にいた。
「若草物語」のベスを演じるために一晩中雨に打たれたり、
桜小路君とたびたび会ったり、
月影先生に石の豪速球をぶつけられそうになったあの公園である。

「どうやって生きていこう・・・
 誰もかもあたしの前からいなくなってしまった・・・
 そして演劇も・・・
 もう何もなくなっちゃった・・・母さん!」

豪雨に打たれながらブランコに腰掛ける。
そして稲光と共に車の音。
そこに立っていたのは速水真澄だ。
水城さんの目論見通り、社長自ら捜索活動である。

「速水・・・真澄・・・
 どうしてここへ?」

「どこも行き場のない君が落ち着けるのは
 ここしかないと気づいたんだ。
 さあ、帰るんだ。」

見事なまでの名探偵ストーカー。

「いやですおせっかい!
 もうあたしを放っておいてください!
 お願いだからあたしの目の前から消えてください。
 もうかまわないで!
 あなたなんか大っ嫌い!」

一番ストーカーに言ってはいけない、
否定し刺激するセリフを言い放ったマヤは
そのままぶっ倒れた。
「若草物語」のベスの再来である。

「マヤ!」

逆上したストーカーはマヤを車に乗せ、
自宅へと連れ去ったのである。

そして速水邸は大騒ぎ。

「俺だ医者を呼んでくれ!
 何でもいい。着替えを出してやってくれ!」

普段は堅物?の速水家の若旦那が、
豪雨の真夜中に、ずぶ濡れの女子高生を家に連れ込んだのだ。
使用人一同、その状況と異常性に戸惑う。

マヤを着替えさせようと思わず衣服に手が伸びる。

「着替えさせてやってくれ。俺は外に出ている。」

使用人にクールに言い放つ。
当たり前ですから。

その騒ぎを離れから見ている人物がいた。

「なんだあの騒ぎは?」

「はっ・・・!
 それがその・・・
 真澄さまが女の子を一人連れて帰られて・・・」

「なんだとあの真澄が!?」

「誤解なさらないように・・・!」

謎の人物に時代劇のごとく報告するのは
久々登場、お目付役の朝倉のじいさんだ。
水城さんの登場以来、速水真澄の側近の役を取って代わられてしまったようだ。
まあ、水城さんのように我々を楽しませてくれる役は期待できない。

「相手はまだ高校生ほどの女の子で
 月影千草の選んだ紅天女候補とか・・・」

「紅天女候補・・・!
 そうか・・・紅天女・・・
 あれを上演することがわしの長年の夢だった・・・
 月影千草・・・」

車椅子に乗ったその人物が月影先生を思い出している頃。
ようやく医師の診断が終わったようである。
こんな豪雨の真夜中に呼び出されるとはご苦労なことである。

「発見が早くてよかったですよ。
 もう少しで肺炎をこじらせるところでした。
 あとでこの薬を飲ませてあげてください。」

帰っていく医師。看護師さんもいる。さしづめ医師団といったところか。

「俺のせいか・・・
 俺のせいでお前の母親が死んで・・・
 その時からお前の歯車が狂い始めた。なにもかも・・・
 胸が痛む・・・
 今前自分の仕事を後悔したことなどなかった・・・
 どんな卑怯な手を使うことも平気だった。
 冷血漢・・・そう呼ばれてきたこの俺が・・・
 マヤ、お前を救いたい!
 どうした真澄!
 俺の歯車まで狂い始めたか・・・?」

知らんわ。

ちなみにこれは速水真澄の心の声であるが
一体マヤに語りかけているのか?自分自身に語りかけているんか?
会話の対象も狂い始めている。
というか、あんたの歯車は狂い始めたのではなく、
そもそも狂っていた。

若旦那がそんな熱烈にテレパシーを送っているとも知らず、
マヤに付き添いの女中さんは眠そうだ。

「あとはいい。俺が診ている。」

使用人を気遣うと見せかけて二人きりになる作戦。
そしてここから長い長い速水真澄の心の叫びが
合計4Pにも渡って披露されるので以下抜粋。

  • 舞台の上でひたむきに燃え上がるお前が好きだった・・・
  • ずっとお前の情熱に惹かれていた・・・
  • 陰で紫のバラを贈り続けたのもそんな気持ちの現れだったんだ・・・
  • そうとも!今こそ認めよう!俺はお前を愛している!
  • 気づきたくはなかったこんな気持ちに!
  • 本気で誰を愛したこともなかった・・・
  • 大都芸能の速水真澄が誰かのファンになることなど許されなかった
  • それが10歳以上も年下のこの少女にこれほどまでに心を惹かれていたとは!
  • なんてことだ速水真澄・・・!
  • いつまで待てば大人になるんだろうマヤお前は?
  • 俺のためにお前がこうなってしまったのなら俺の手でどんなことをしてでも立ち直らせてやる!
  • もう一度演劇へのあの激しい情熱を蘇らせてお前を紅天女に向かわせてやる!
  • たとえどんなに憎まれても!

ちょいちょい強調や言い訳や反省を交えながらの独白。
まあ、大体知ってた。
そして水城さんの推測は120%正解であることが説明された。
「いつまで待てば〜」のくだりがとても気持ち悪い。
何企んでるねん?

「マヤ・・・お前の生きがい・・・
 お前の全て・・・
 みんな取り戻させてやる・・・」

そう決意した速水真澄。
医師に渡された薬を口に含むと
驚くべきことに口移しでマヤに薬を飲ませたのだった。

「俺のこの手で・・・!
 そのためにはどんなに憎まれようが・・・
 俺にしてやれることはこれしかない・・・」

何でそうなるねん!?
お前にできることは他にもあるし、
順位で言うたらだいぶ下位やし、
薬飲ませるのは女中さんでもできる。

と、マヤの演劇への情熱を取り戻し、
紅天女への道へ再度向かわせるため、
そのためにはまず体調をいち早くよくするべきであると、
薬を口移しで飲ませ、マヤの唇を奪ったのであった。

おそるべし速水真澄。

というわけで今回。
読者の前では散々変態的な素顔を見せ、
その片鱗を水城さんに見抜かれ、さんざんいじられてきた彼であるが、
どうやら自宅においては堅物で通っていたらしい。
家に女性を連れてきただけで使用人達は大騒ぎ。
まさかこんな猥褻行為が行われていたと知ったら
使用人達は発狂するだろう。

そして今回ばかりは水城さん、
速水真澄を捜索に向かわせたばかりに、
マヤは性犯罪に巻き込まれてしまったようである。

おそるべし速水真澄

つづく

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第17巻・華やかな迷路(5)