【ネタバレ注意】ガラスの仮面第17巻その⑥【ここにいれば忘れられる・・・】

      2018/11/10

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速水邸から逃走したマヤ。

「もういくつ駅を通り越したのかしら?
 三度も乗り換えてずいぶんと遠くまで来たみたい・・・
 どこへいけばいいんだろ
 あたしこれからどこへ・・・」

ノープラン過ぎる。
方向もわからず乗り換えたのなら、
首都圏ならそう遠くへ行っていない可能性もある。

とりあえず売店でパンと牛乳を買う。

「あたしを働かせてくれるようなところあるかしら?」

探しまくった求人は18歳以上、
住み込みだと身元保証人が必要。

高校生で身寄りもなく、家もなく、
家出少女でさらに後見人の元を脱走、
住み込みで働けるようなところなどそうそう無い。
早くも野宿を決意するマヤの目に入ったのは
「広瀬遊園」なる遊園地域のバス停。

「そういや母さんとよく遊園地に行ったっけ。
 行っちゃおうかな。久しぶりだもん。
 いいよね私は自由。誰も止める人もいないもん。」

速水邸から逃走の就職活動中に遊園地に行くマヤ。
まあ自由だがこのあたりが「変わった子」と呼ばれる所以でもある。
そして一人でジェットコースターに乗る。
恐ろしい度胸である。

するとマヤの服を掴む幼児が現れた。

「ぼくも乗る。」

マヤが遊具に乗ろうとするとついて来る。
相変わらず見ず知らずの子供には大人気だ。
慌てて幼児の親を探すも見つからない。

「ああその子、桜保育園の子だよ。
 よくここの遊園地に紛れ込んでるんだ。」

警備員さんが教えてくれた。
そのまま桜保育園に向かうと
園長先生と思しき人と、母親と思しき人が。

「まあ・・たかしちゃん探してたのよ。
 すぐどこかにいっちゃうんだから。」

時代であろうか。保育園から園児がいなくなってもこのテンション。
園児行方不明も日常茶飯事なのだろうか。

「お姉ちゃん楽しかった!
 明日また遊んでね!」

母親と去って行くたかしちゃん。
そして園長先生にお菓子とお茶をご馳走になるマヤ。

「かわいいんですね。保育園の中って。」

「でも子供たちがちらかしてばかりで
 片付けるのが大変なのよ。
 ても足りないし」

「手が足りない・・・
 あたしここで使ってもらえないでしょうか?
 子供大好きだし一生懸命やります!
 保育園のすみっこでいいです!
 あたしを置いてください!」

いきなりの就職活動に戸惑う園長先生。

「あなたそんな急に・・・
 お父さんやお母さんの相談もなくそんな・・・
 待って、あなたどこかでみたような・・・
 思いだしたわ。あなたTVに出ていた子じゃないの?
 なんだか事件があって突然マスコミから消えたけど・・・
 なんだかわけがありそうね」

すっかり夜更け。
大都芸能入りから華々しい芸能界、
母親の死と、芸能界追放、
大都芸能の奴隷契約と監禁からの逃亡など
全てを話したのであろうか。

「そうだったの・・・
 いいわ。ここにいてお手伝いしてもらいましょう。
 あなたなら子供達も喜ぶでしょう。」

園長先生の許しを得て住み込み勤務を許可されたマヤ。
寝所は古い物置だ。
しかし大喜びのマヤ。

「よかった住めるんだここで・・・夢見たい・・・
 違う生活が始まるんだこれから・・・
 今までとは全く別の世界の・・・」

そして翌日から保育園の手伝いをするマヤ。
さっそく子供達に大人気。
折り紙は園児たちよりも下手くそで子供達の自信を育て、
すっかり馴染んでしまった。
園長先生や他の先生の評判も上々である。

「忘れられる・・・
 ここにいれば忘れられる・・・」

マヤが演劇を忘れかけているその頃。

「北島マヤが演劇をやめた?」

業界関係者の報告を受けているのは姫川亜弓である。

  • あの事件以来演技ができなくなったとかで行方不明
  • 真澄君が演劇界へのカムバックを図ってお膳立てしたやったオーディションもすっぽかしてしまったとか・・・
  • これで紅天女は亜弓さんのものですな

「そう・・・演劇をやめたのあの子・・・
 その程度の子だったのあの子・・・
 これで私はライバルを失ったってわけね
 あの子を見損なったわ!」

相変わらず又聞きの断片的な情報で一方的に感情を高ぶらせる亜弓さん。
前回勝手に怒り、勝手に乙部のりえを叩きのめし、
勝手にマヤの仇をとったかと思えば、
今回は勝手にマヤを見損なっている。

その頃マヤは得意の演技で園児たちの人気者に。
掃除用具を手に一人舞台「西遊記」を上演中。

「演技することなんて忘れていたのに・・・
 でも今のあたしにはこんなお芝居がいい・・・」

「こんなお芝居」と若干見下している感が否めない。
しかしマヤのそんな小さな幸せも長くは続かなかった。
子供達に囲まれ幸せそうな笑顔のマヤを見つめるのは速水真澄
マヤが買い物から保育園に戻ると待っていた。

「車に乗りなさい。帰るんだ。」

「マヤちゃん、この方があなたのほど者だと仰るもので・・・
 家出して捜索願を出していたからって・・・」

うろたえる園長先生を尻目に、マヤの手を掴む速水真澄。

「ずいぶん探したぞ」

「あたし行きません!
 演劇やめたのよ!
 ひどいわこんなところまで連れに来て!」

しかし問答無用でマヤを連れ去ると、
マヤを肩に抱え帰宅する速水真澄。
その異様な光景に使用人一同びっくりだ。
そら堅物と思っていた若旦那が、
二度も女子高生を抱えて連れてきたら驚くことであろう。

そしてマヤを部屋に閉じ込める。

「あなたなんて鬼よ悪魔よ!
 幸せだったのに!
 あなたなんか死んじゃえばいいんだわ!」

ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせられた速水真澄。

「幸せ・・・か
 あんな笑顔は初めてだった。
 女優として行きて行くことこそがあの子の幸せだと思っていた・・・
 あの子のためだと・・・」

得意の「幸せとは何か」論をぶちまけるのであった。

しかしその後のマヤ。
与えられた食事も手をつけず全て残し、
誰とも口を聞かず塞ぎ込んだまま。

「みていられないわかわいそうで・・・」

女中さんにも同情されるほどに。
事情を知らなければ、
いや知っていても、女子高生監禁事件である。

「本気か・・・
 本気で俺に抵抗しているのかマヤ?」

いや本気やろ。死ねばいいとまで言われている。

「どうすればいい?
 どうすればお前を救うことができる?
 どうすればお前の心の中に眠っているものを呼びさませる?」

解放したらいいと思う。

たまりかねた速水真澄。マヤを閉じ込めた部屋に入る。
そこには抜け殻のようになったマヤ。
最近よく抜け殻のようになる。

「まいったな。
 さすがの俺もお手上げだ。
 そんなに俺のそばにいるのがいやか?
 大都芸能にいるのがそれほどいやか?」

黙って頷くマヤ。
そこんとこの意識ははっきりしとる。

「三色すみれのオーディションはもう終わってしまったが
 他のを受ける気もないんだな?」

あれ?前回オーディションは二ヶ月後とか言っていたが、
二ヶ月近くマヤは保育園で暮らし、
その間速水真澄はマヤを探し続けていたのだろうか。

「残念だな。おいれは君の舞台姿が好きだった。
 これは本当だぞちびちゃん。
 とても好きだった。」

舞台姿以外も好きだったのも本当である。

「誰かが言っていた。舞台の上は虹の世界だと。
 普通の人がただ一度の人生しか生きられないのに比べ
 役者はその虹の中で千も万もの人生を生きることができる。
 もうその中で生きてみたいとは思わないのか?」

答えずに涙を流すマヤ。

「わかった。大都芸能と俺から解放してやろう。
 その前にもう一度だけ舞台に立ってもらいたい。」

ついに決断した速水真澄。
条件は以下の通り。

  • 明日初日の舞台で急に盲腸患者が出て代役が必要になった。
  • 通行人程度の早くだがその役者を探している。
  • 君にやってもらいたい。
  • これで最後だ。終わったら大都芸能の契約を解消してやる。
  • 君は自由になれる。

速水真澄の条件を引き受けたマヤ。

「タイトルは夜叉姫物語。
 君のやるのは乞食の親子の子供役だ。
 セリフは四つ。
 村人にいじめられているところを夜叉姫に助けられるという役だ。
 夜叉姫は姫川亜弓。
 ライバルだが今の君にはもう関係なかろう。」

「その舞台が終わったら本当に解放してくれるんですね?」

「約束しよう!」

「では台本をください!
 これからセリフをやります!」

大都芸能の奴隷契約と速水真澄の魔手から逃れるため、
最後の舞台に出る決意をしたマヤ。

しかし今回腑に落ちないのは、
あれだけ嫌われ罵られ憎まれ家出されても
マヤを諦めなかった速水真澄がすんなり引き下がったことである。
最後の舞台でマヤの心の奥底に燃え盛るものを取り戻す勝算があったのだろうか?

それともダメな男が言いがちな

「最後だから・・」

というやつなのだろうか。

そして時代とはいえ、
無免許の家で女子高生を住み込みで働かせ、
そこに何一つ疑問を抱かない保育園と先生方が地味にやばい。

続く。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第17巻・華やかな迷路(5)