【ネタバレ注意】ガラスの仮面第17巻その⑨【汚名を返上なさい!】

   

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「おかえりなさーい!」
「おかえりなさーいマヤ!」

マヤが帰ってきた白百合荘。
劇団つきかげメンバーによりマヤを迎える会が催されている。

「ど・・・どうもありがとうみんな・・・
 ただいま・・・」

せっかく迎えてくれてくれたにも関わらずマヤは微妙な顔。
やはり誤解とはいえ絶縁宣言を叩きつけられたのを根に持っているのだろうか。

「ねえ!
 マヤにみんなの近況報告しようよ!」

「賛成ー!」

戸惑うマヤをほったらかして突然の近況報告会。

「と・・・そうだな
 わたしはあいも変わらず昼間は喫茶店のウェイトレスをしているし
 みんなも昼間はそれぞれバイトしながら演劇を続けているんだ。」

一番手はリーダー格の青木麗。
そして他メンバーの近況報告もまとめられている。
モブキャラ・補欠の哀愁である。
まあ、地下劇場のアイドルの麗ですらこんな状況、
他のメンバーも以下同文といったところか。

  • 来月初めに10日間、例の地下劇場で公演やるんだ
  • それと月末の10日間
  • メンバーが5人増えたんだよ
  • 月影先生は今もずっとアクターズスタジオで演劇の特別講師をしていらっしゃる
  • 水曜と日曜、それから暇ができたときは必ず稽古をみにきてくださるわ

月影先生は週5日勤務らしい。病状が心配される。
しかしマヤのバーターで大都芸能の講師になったにも関わらず、
マヤが大都芸能を離れても仕事は失わない。
月影先生の指導力に定評があるのか、
それとも意外と世渡り上手なのか。

「先生はここに移ってから
 私たちの負担になるのが心苦しかったのね。きっと。
 もと付き人だった源造さんのやっかいになってばかりいるのも
 申し訳ないっていってらしたわ。
 私たちそんなこと気にしてないのにね」

月影先生の近況を語るのは沢渡美奈。
「私たちの負担」て何だろうか。
月影先生の生活費を源造さんが捻出しているのは知っていたが、
教え子たちのなけなしのバイト代も月影先生を養う費用に回っていたのだろうか。

「劇団一角獣のメンバーはまた全国修行中。
 今大阪にいるって手紙が来たわ。
 大阪弁でロミオとジュリエットやって大受けしたんですって。」

盟友・一角獣の近況を語るのは水無月さやか。
一角獣は相変わらず罰ゲームのような演劇人生を歩んでいるらしい。

そして一言もセリフ描写がない春日泰子。
たまには活躍させてやってほしい。

そしてマヤは、自分を温かく迎えてくれた仲間たちに感謝し、
地獄の大都芸能から戻ってこれたことを心の底から喜ぶのであった。

 

あくる日。
地下劇場ではつきかげの稽古が行われていた。
柔軟体操にリズム体操。
そして公演の稽古が始まる。

「公演か・・・いいな
 またみんなと一緒に演技できればいいな・・・」

戻って来たばかりのマヤには当然公演の出演はない。

「あ!先生!」
「月影先生!」

地下劇場にやって来たのは杖をついた月影千草。
週5勤務大丈夫か。

「おはようございます先生!」
「今日もよろしくお願いしまーす!」

「はいはいみんなの稽古を見せていただきますよ。」

さすがカリスマに次々と詰め寄る弟子たち。
人望なのか、指導力の賜物なのか、
それとも恐怖による支配か。

「先生!マヤが戻って来ました!」
「また前のように私たちと一緒に演技してもいいでしょう!」

「・・・・・・
 みんなは稽古を続けてらっしゃい。
 マヤあなたはこちらへ。
 話があります。」

久々の再会でいきなり個人呼び出し。
絶対怒られるパターンに怯えるマヤと察する仲間たち。

呼び出されたのは校舎裏ならぬ、舞台袖。

「あなたのことは全部聞きました。
 大都芸能を出たこともね。
 聞けば今のあなたを受け入れてくれる舞台はもうどこもないとか・・・」

マヤが話しかけようとするとそれを遮るように
手にした杖で床を激しく叩くとお説教はいきなりフルスロットル。
この杖はどうやら介護用ではなくただの武器らしい。
舞台袖でこんなんやられては他のメンバーは稽古どころではない。
そしてわざわざ離れたところへ呼び出して意味もない大声。

「つきかげのみんなに甘えるのはおよしなさい!
 あなたは自分の立場を忘れてますよマヤ!
 ここへ戻って来さえすれば受け入れてくれるとでも思っているの!?」

源造さんに甘えていた人のセリフである。

「先生!お願いします!あたしお芝居をやりたいんです!
 今まで以上に稽古します!お願いです!
 もう一度みんなと一緒に演技させてください!」

「今のあなたがつきかげの芝居に出ることはみんなの迷惑なんです!
 みんなが賛成しても私が許しません!」

ジャイアンみたいなこと言うと、さらに続ける月影先生。

  • あなたを大都芸能へ入れたのは外の世界を見てもらいたかったからです。
  • 「奇跡の人」で助演女優賞を取った時から、いずれ芸能社やマスコミに振り回されることはわかっていた
  • 嫌でもつきかげから出ていかなければならない。
  • 大都芸能は敵とも言うべき憎いところだけれど芸能社としては一流。
  • 憎しみを忘れてあなたの芸を伸ばすために速水さんにあなたをあずけたのよ
  • ここを出て大きく役者として成長してもらいたかった!
  • その気持ちは今も変わっていません。
  • あなたはいつまでもつきかげにいちゃいけいんです。

これを稽古場で聞こえているであろう他のメンバーの心中を思うと複雑である。
大きく成長するためには出ていかなければならない劇団にいるというジレンマ。

「芸を磨く意味でときたま月影の芝居に出るのもいいでしょう。
 それに反対派しません。でも今は許しません。」

劇団つきかげはマヤの芸の肥やしらしい。

「つきかげの芝居に出たければまず今の汚名を返上なさい!
 でないとみんなの迷惑です!」

「汚名を返上・・・
 どうすればいいんです・・・」

「答えは自分でみつけなさい。
 私もその答えを見せてもらうわ!」

自分もわからんのかい。
もはや禅問答とも言うべき月影先生の無茶振りに震えるマヤ。

「マヤ!回答はあなたがみつけるのよ。
 あなた一人で・・・
 さあマヤ立つのよ!
 自分の足で歩きなさい!誰にも頼らず。
 そうして紅天女に向かっていくのです・・・!」

相変わらず厳しくもマヤへの期待と愛情の深い月影先生。
杖なしでは自分の足で歩くのも危ういと言うのに。

 

夕暮れ、河原で途方にくれるマヤ。
そしてその姿を遠くから見つめるつきかげの補欠たち。

「先生もひどいわね。
 今のマヤに私たちと一緒に稽古しちゃいけないなんて。」

「それだけあの子を買っているんだよ。
 先生はマヤが私たちの中に染まっちゃいけないと思っていらっしゃるんだ。」

相変わらず月影先生の真意を見事に解説する麗。
麗と水城さんがいなかったらこの物語の詳細は全く分からなくなるだろう。

「同じ劇団の同じ仲間とだけ芝居をしていると
 そこの型に染まってしまう・・・
 それだけ芸の幅が狭くなるってことさ。」

麗も男前女優という極めて狭い芸の幅だけに説得力がある。

「そうした中で生きるのにふさわしい立派な役者も多くいる。
 だけどあの子はそうじゃない。
 またそうあってはいけないと先生は思われたんだよ。」

「うらやましいわね。
 それだけの才能を見込まれているなんて・・・」

この後ろ姿は水無月さやかだろうか。
マヤと同年齢、かつては若草物語でベス役を争ったライバル、
今は完全に天地の差をつけられている。
この一言が他のメンバーの心境を全て物語っている。

「きっとどこかに道はある・・・
 今にきっと見つかるわ!
 探すのよ!道を探すのよ。
 一人だって稽古はできるわ」

しかしそんなメンバーたちの心配と羨望を元に、
気持ちを切り替えたマヤ。
発狂したように発声練習を始めたのだった。

 

と言うわけで今回。
戻って来たマヤを歓迎する仲間たちと、
稽古や出演を認めない月影先生。

かつて月影先生にその才能を見込まれ。
全国各地からスカウトされて劇団つきかげに入ったにも関わらず、
バイト中心の演劇生活。

しかもマヤだけ特別扱いされ、
もはや紅天女を継ぐ可能性はゼロ。

それを羨んでも、ひねくれることなく、
月影先生を慕い、バイトで生計を立て、
稽古と公演を重ねる。
泣けてくる。

と言うわけで17巻終わり。
18巻へ続く。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第17巻・華やかな迷路(5)