【ネタバレ注意】ガラスの仮面第18巻その③【観客こそ偉大な指導者・・・】

      2018/12/29

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吉沢君が執筆した脚本を一晩で覚えたマヤ。
今度は舞台のプランニングに入る。

「この体育道具をどう舞台セットに組むかそれが問題だわ・・・
 今までこんなことは舞台美術の人の役目だったのに・・・
 一本芝居を作るのって大変なのね。
 役者だけじゃ何もできないんだわ・・・」

当たり前のことに今更気づく。初心者か。
まあその当たり前の大事なことに気づくだけマシなのだが、
すでに吉沢君に脚本書かせておきながらこの発言はイタい。

マヤにとっての難題は体育倉庫にあるガラクタを以下に配置し見せるか。
ある時は宮廷の中、あるときはゴンドラと川の中、
海賊船の甲板の上と見せなければならず、
そのためにはそもそもの芝居のプランを立てなければならない。

「はじの人も真ん中に座る人も見やすくしなければいけないし・・・
 観に来た人みんなが見やすくなければいけないんだ・・・!
 わー難しい・・・!」

体育倉庫の客席部分に座り黙ったままのマヤ。
さすがにその様子には草木さんも吉沢くんもびっくりだ。

「なんですって?あの北島マヤが一人芝居をやるんですって?」

そしてその噂は演劇部にも伝わっていた。

  • 物置がわりの体育倉庫と中のガラクタを使って芝居をすると今評判
  • 私たちを張り合う気かしら?
  • あの子ここしばらく時間があると中に閉じこもって正座してるんだってな
  • しばらくそうしていたかと思うと、別の場所へ行きまた腰をおろしてるんだって

座禅でも組んでいるのかと、ミーハーな噂話に花が咲く部員たちの中で一人険しい表情の演劇部部長。

「ちょっとまって!あの客席をどうする気かしら?」

早速体育倉庫の中のマヤを見に行く。

「読めたわ。あの子観客の目の角度をはかっているのよ・・・
 だからあの中を転々と座り場所を変えているのよ。
 舞台やセットを組む場合観客の目の角度で計算して組むわ。
 みんなに見やすくなければならない。
 あの子それを考えているのよ・・・」

「それがどうかしたの?
 そんなことくらいなんでもないことでしょう?」

「でもなんだかあの子がこわいわ。
 私たちの中で一体誰がそれを真剣に考えた人がいて?
 観客の目と角度・・・
 それを頭に入れておけば演技する上でも有利でしょうね。」

訝しむ部員たちを制するようにマヤの真意を語る部長。
彼女はマヤの行動を見て気づいただけで
芝居の本質を理解しているわけではない。
マヤの天才的かつ独創的な視点を説明するための存在だ。
この先もきっと、マヤの凄みを見事に解説してくれるかませ犬なのだ。

そしてマヤ。
客席での瞑想を終えると跳び箱や平均台などのガラクタを移動。

「できた!」

天才である。描写を見る限りでは脚本を読んでいるそぶりもなければ、
何かを記録している風でもない。
頭の中の脚本と目の前にあるガラクタのみから、
舞台に立つ自分を想像し、芝居を組み立て、セットを構築する。
天才的な記憶力と、四次元的な想像力。

「これが舞台セット?」
「そうよこれでお芝居できるわ」

草木さんと吉沢くんが不思議そうに見る中
いきなり本意気の芝居を披露。

「ここまでくればもう大丈夫・・・!
 言ってもここまでは来ないでしょう。
 ああ待って、急がせないで!
 すぐにゴンドラに乗ります。
 さようならヴェネチア・・・私の国・・・」

なんの脈絡もないがフルスロットルの芝居に、
吉沢くんの目にはゴンドラに乗るビアンカの姿が映るのだった。

「変だな、今一瞬バックのものがベニスの街に見えた・・・」

早速マヤの演技力に圧倒される。

「わかったわよ!
 これからゴンドラに乗るとこなんでしょ?」
「あたりー!」

芝居を言い当てる草木さんと、答えるマヤ。
お前らアホやろ。
ちなみにセリフで「ゴンドラに乗ります」言うとる。
マヤが芝居以外はアホなのは知っているが、
草木さんもアホなのだろうか。

「いよいよやれるんだわ!ここでお芝居を!
 女海賊ビアンカ・・・!もと大貴族のお姫様
 陰謀に巻き込まれて国を出、やがて女海賊になってしまった
 ビアンカ・カスターニの波乱万丈の冒険・・・
 これよりスタート!」

 

そして同じ頃。

「そう!マヤが学園祭で一人芝居を・・・」

地下劇場で青木麗の報告を受ける月影先生。
麗はマヤの近況を月影先生に伝えるだけでなく、
月影先生の真意や考えを読者に伝える役割も担っている。

「やっと道を探し当てたと言うわけね・・・
 いえ・・・自分で道を作ったというべきかしら・・・
 これからのあの子を本当に指導するのは私ではないわ。観客よ。」

「観客?」

「そうよ。今にあの子にもそれがわかるわ。
 観客こそ偉大な指導者だということが・・・」

「観客こそ偉大な指導者・・・月影先生・・・」

見事なまでの相槌を打って、月影先生の真意を読者に伝えたにも関わらず、
麗を無視していつもの高笑いの月影先生。ええかげんにせえ。

そして学園祭の日が近づいてくる。
一人稽古に、草木さんと吉沢くんは看板の制作も手伝う。
そしてかつて芸能界で一斉を風靡した北島マヤが
体育倉庫で一人芝居をやるという噂は学校中に広まっていた。

「やっとこれでお芝居ができるわ。
 学校の中で物置を使ってのお芝居だけど。
 亜弓さんにやっと一歩近づける・・・
 あたしきっと追っかけていきます。
 紅天女とあなたまで・・・!亜弓さん・・・!」

というわけで今回。
月影先生の名言が炸裂した。
「観客こそ偉大な指導者」
確かにマヤほどの才能と実力があれば、
演出家や先生に教わるのではなく、
自ら観客の目線を考え、観客の評価を受け、
自らを鍛えていくことができるであろう。

かつてのマヤは自分中心の演技で周囲を振り回し、
「舞台あらし」の異名までゲットしたほどであった。

しかし「若草物語」ではベスの感情を獲得するために鉄拳制裁を加え、
「たけくらべ」では極寒の物置に監禁し、あたらしい美登利像を作り上げた。
「石の微笑」では動きとセリフを封じることで周りに合わせる演技を覚えさせた。

月影先生は都度マヤに課題を与えその成長を手助けしたその手腕は見事というべきである。

しかし実は「以上」である。
マヤはこの時点で、描写にあるだけで十数本の舞台や映画TVに出演している。
月影先生が直接マヤを指導したのはそのうち上記の三作品。
「ジーナと5つの青い壺」も劇団つきかげの舞台であるが、
稽古時にはさほど指導している描写はなかった。

もちろん初期には基礎から徹底的に鍛え上げ、
その他の作品でも悩むマヤにヒントを与えたり、時には暴力を振るったりもしていたが、
マヤ自身が遭遇した困難の中で、自ら道を切り拓いてきたのだ。

つまりこれまでも月影先生の指導は、本人任せであったとも言える。
あるいは、マヤはほっておいても育つ子なのかもしれない。

そして「観客こそ」と言って、これからも他人任せを宣言、
訝しむ麗を無視して高笑いする往年の大女優・月影千草。
さすが人間の心を持たない紅天女を極めた人物である。

つづく

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第18巻・100万の虹(1)