【ネタバレ注意】ガラスの仮面第18巻その④【待っているわよマヤ!あなたを・・・】

      2019/01/05

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一ツ星学園・学園祭開幕。
数々の催し物や展示が行われる中、
マヤが一人芝居を行う体育倉庫は外れにある。

観客もどちらかというと「あの北島マヤが」
「体育倉庫」で「一人芝居」という話題先行であり、
芝居への純粋な興味というよりはゴシップ的な動機の観客が多い様子。
そして彼らが入った体育倉庫。

客席にはゴザが敷かれ、
セット中央には跳び箱とマット。
上手下手にはそれぞれ跳び箱と平均台が連なり、
天井からは色を塗った裸電球が吊り下げられている。

「さあさ!寄ってらっしゃい見てらっしゃい!
 波乱万丈の冒険ロマンが始まるよ!」

見事大作を脚本化した吉沢くんは呼び込みも担当。
当初は引っ込み思案で大人しそうだった彼を
ここまでポジティブにするとは、自信とは恐ろしい。

体育倉庫には当然楽屋などはなく、
マヤは倉庫の裏のスペースを楽屋がわりにしている。

「やっとこれでお芝居ができる。
 吉沢くんと草木さんの協力のおかげだわ。」

ようやくスタッフの存在に気づき感謝するマヤ。成長。

「体育倉庫の中だって人が集まれば劇場になる・・・
 演劇・・・私を生かせるものはこれしかないんだもの・・・」

本番前、意気込むマヤの陣中見舞いに訪れたのは青木麗と水無月さやか。

「わあ!お花持ってきてくれたの!ありがとう!」

「泰子に美奈はバイトでどうしてもこられないけど頑張ってってさ!」
「とても残念がってたわよ!」

仕送りをもらっていたはずの春日泰子、
バイトを始めたのは成長?ではあるが、
マヤの再出発ともいうべき晴れの舞台をバイトを理由に見にこない。
見にきた麗とさやか。
バイトで来れない美奈と泰子。
マヤとの距離を表しているとも言える。

「バイトで来れない」は「そもそも来る気がない」という意味である。

体育倉庫は続々と観客が集まって来る。
その盛況ぶりは、講堂にて舞台本番前の演劇部にも聞こえて来るほど。

そして一際異彩を放ち入ってきた観客。
学園祭には似つかわしくない年齢、黒い服、険しい表情、そしてなぜかガンを飛ばしている。
往年の大女優・月影千草である。

「今日はお客様になったつもりできましたよ。」

意味がわからん。
見にきとるから客やし。
客になったつもりってなんだ?
そしてお客様になったつもりが、完全に通常の客とは異なる目線で芝居を見て、
マヤにはたっぷりダメ出しをするという前フリでもある。

客席には体育倉庫を貸してくれた丹波先生やその他職員、
そして制服もまちまちの生徒たちの姿。
ここで名解説者・麗はマヤの置かれている状況と月影先生の真意を明確に解説してくれる。

  • ほとんどが野次馬だよ。
  • アカデミー助演女優賞を取り、大河ドラマまで出たマヤがこんなところで何をやるんだろうという好奇心。だから芝居がつまらなければすぐ出ていっちまう・・・
  • こんなところだと芝居がつまらなければすぐ見切りをつけて出ていってしまう。
  • それに役者はマヤ一人、飽きさせず退屈させず、観客を引っ張っていくのはこりゃあ大変だ。
  • 全日本演劇コンクールの一人舞台とは、劇の内容も観客も違う
  • 一人芝居・・マヤは大変なものに挑戦したことになる・・・
  • 観客は偉大な指導者である・・・か・・
  • この前月影先生が言われたんだ。これからのマヤを指導するのは観客だって・・・

「ただいまより開演でーす。」

倉庫の引き戸を占める吉沢くん。
カーテンを閉めるのは草木さん。
知らん間に客席誘導係、舞台監督も担当している模様。
そして電球に灯りがともると跳び箱の上にはマヤが。

「本日はようこそのお運びありがとうございます。」

突如として始まったマヤのナレーション。
そして観客の度肝を抜くタイミングでマントをかなぐり捨てると
一人芝居が始まったのだった。

「見事だ・・・ナレーションのマントの男から海賊への一瞬の変貌・・・
 あっという間に海賊になりかわってしまっている!さすが紅天女候補・・・」

麗の解説もただの劇団員とは思えないほど板についていて見事である。
しかしさすがの紅天女候補は一人芝居を続けながらも、
客席にいる月影千草の姿を早々に見つけたのであった。

「うわっ!月影先生!」

「うわっ!」てなんやねん。
「あっ」とか「えっ?」ならわかるが、
「うわっ!」は明らかに嫌いなものや苦手なものに対するリアクションだと思う。

しかしそんな心の動揺を見せることもなく、マヤの一人芝居は続いていく。
甲板の上での裁判から、ビアンカの幼少時代の屋敷へと場は次々へと変わり、
観客はその変化に戸惑うも、マヤの芝居に引き込まれ、次第に違和感を感じなくなるのだった。

そして極め付けはゴンドラ。
跳び箱の1段目をひっくり返すとその上に立つマヤ。
さすがに客席からは失笑が漏れたが、
類稀なるパントマイムを披露。
観客はもはや体育倉庫であることを忘れ、ベネチアの水に沈む。

場は変わり、宮殿のシーンに。

「ね、今度は宮殿の入り口よ!
 入り口の階段を登っているところよ!」

完全に芝居に魅入られた女子生徒。
独り言がでかい。こいつに限らずガラスの仮面の観客は独り言がでかい。

「ご名答!おっしゃる通り!
 ここは宮殿を入ったすぐの広間!」

観客の独り言を巧みに拾い、笑いに変えるマヤ。

「うまいわね・・それた観客の注意をたちどころに自分に戻してしまった
 あの子いつの間にあんなこと覚えたのかしら・・・?」

ちなみにこの独り言は、水無月さやか。
かつて役を争ったライバルだったが、今は大きく差をつけられている。
「いつの間に」ってマヤが成長している間あんたは何をしていたのか。
この独り言が舞台上のマヤに聞こえていなくてよかったな。

しかしマヤに次々と訪れる試練。

「おーいここだここだ!北島マヤが一人芝居をやってるっての!」

体育倉庫の外から聞こえる野暮な大声。
そして扉が開かれたのだった。
完全に観客の注目は乱入生徒へ、
すでに観劇に集中していた他の観客からは非難めいた視線と注意がそそがれるも、
乱入生徒は悪びれることもなく、
あらすじやセットの跳び箱について質問を続ける。

「なんてことだ・・・芝居の雰囲気が壊れてしまった・・」

まさかのアクシデントに演劇人の麗とさやかの不安は募る。
そしてお客様になったつもりの月影先生の目も怪しく光る、

「初めまして!ビアンカです!」

しかしマヤはこれまでにない大声で乱入生徒を一喝。

「お目にかかれて嬉しゅう存じます。ジェノバ大使どの。」

乱入生徒を劇の登場人物に見立てて客いじり。
爆笑をかっさらって彼自身を救うとともに、
芝居の雰囲気を一気に元に戻したのだった。

「反射神経ね。」
「反射神経?」
「そうよ・・・芝居の反射神経。
 芝居の雰囲気をこわすまいと本能が働くのね。
 観客の注意を右から左へ移動させる一瞬の呼吸、タイミング、見事だこと。
 観客はあの子の才能を磨いてくれるわ・・・」

往年の大女優も見事なまでの解説。
やはりお客様にはなりきれない女優の本能が働いている。

 

「北島マヤが一人芝居?」

その頃、姫川亜弓、
姫川邸で催されているガーデンパーティ的なものに参加していた。
亜弓のまわりには取り巻き的な同世代の女性たち。
彼女たちからマヤの近況を聞かされていた。

  • 大河ドラマまで出た子が文化祭の劇ですって
  • 体育倉庫の中でやっているんですって
  • 客席はゴザを敷いている
  • 演劇部に相手されなかったから一人でやるしかなかった

まあ、事実である。
しかしそれを聞いた亜弓の意外なリアクション。

「文化祭で一人芝居・・・
 やっと立ち上がったの・・・あの子・・・
 油断していられないわ・・・」

パーティは宴たけなわなのか。
父親の姫川監督に促され庭に出ると、
取り巻きたちが亜弓の美貌を演技を実績を褒め称える。
しかし亜弓は完全無視。

「北島マヤ・・・不思議な子・・・
 育ちも環境も違うのにわたしはあの子が理解できる・・・
 この中にいる誰よりあの子は私の近くにいるかもしれない。
 演劇への思い情熱・・・そして紅天女・・・
 私の後ろにいつもあなたがいる・・・
 待っているわよマヤ!あなたを・・・」

 

というわけで今回。
ついに始まったマヤの一人芝居。
そしてその噂を聞いた姫川亜弓の強烈なメッセージである。

しかし前々から思っていたことなのだが、
「ガラスの仮面」の演劇において、観客の声がでかい。
独り言が長い。感想が長い。

まあ、作品の中において演劇を演じ、そのすごさをリアルタイムで描写するのだから、
審査員や観客、共演者、スタッフなどの表情だけではなく、
実際に言葉で表現しなければ、そのすごさは伝わらないであろう。
月影先生や青木麗のように見事な解説を挟んでくれるのならば良いが、
そうとも限らない。
今回の乱入生徒のように舞台そのものをぶち壊しにしかねない
素人の感想も多いのだ。
そしてかつてマヤは、舞台において客席から聞こえる誹謗中傷に気を取られ、
演技ができなくなったという過去がある。
しかし今回のマヤはそのヤジともいうべき観客の言葉を拾い、
いわば観客いじりをすることで自分のアドバンテージに変える技を習得した。
もはや恐ろしい子である。

そしてそのマヤの成長を「いつの間に」とかいうてる水無月さやかが哀れでもある。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第18巻・100万の虹(1)