【ネタバレ注意】ガラスの仮面第19巻その③【命を受け継いで生きておくれ・・・!】

      2019/03/09

Pocket

「おかげんはいかがですか?月影先生」

その頃月影先生の病室を見舞っていた速水真澄。

「そうね
 あなたの顔さえみなければ
 もっといいでしょうに真澄さん。」

「ははは憎まれ口をきけるくらいならだいぶ良くなられたようですね。
 安心しました。」

自身が講師を務めるアクターズ・スタジオの経営者に向かってこの口の利き方。
しかも今いるこの病室を手配してくれたのもおそらく速水真澄である。
さすが人間の心を持たない紅天女である。

「ですが当分安静にしてください。
 あなたの愛弟子が死ぬほど心配していますからね。」

「マヤね・・・!あの子が私のことを?」

マヤの目の前でぶっ倒れて車を手配したのはマヤである。
そら心配しないはずはないのだが、紅天女はそんな弟子の心にも疎い。
そしてマヤ以外の弟子たちがあまり心配していなかったことも知らない。

「わたしは大丈夫よ。
 何があっても死ぬものですか。
 紅天女を上演するまでは」

「あなたにとって紅天女は命そのものなんですね。」

「そうよ・・・命そのもの・・・
 私は紅天女を演るために生まれてきてそして
 今またそのために生きているのよ・・・」

目の前に速水真澄がいるにも関わらず
紅天女を思い、そして作家の尾崎一蓮との過去を思っていた。

「それより真澄さんあなたこそ
 大都芸能の社長代理で忙しいはずのあなたがなぜ
 紅天女などにこだわるのですか?
 もっと大きな仕事があるでしょうに。」

「たしかに
 紅天女の上演は父の若い頃の夢でした。
 その夢を居間は僕が受け継いだんです。
 演劇界幻の名作・紅天女
 これだけはなんとしても自分の手で上演させたい!
 誰の手にも渡したくない!
 もし上演権が他の誰かにわたるようなことがあれば
 どんな手段を使ってでももぎ取ってみせる・・・!」

紅天女を目の前に親子の夢と野望を語る。

「今それをしないのは相手があなただからです。
 紅天女であるあなただからです。」

なんかよくわからんことをいって去っていった速水真澄。

「時が私の命を刻む・・・」

月影先生も速水真澄のことは興味ないようだ。

「北島マヤ、姫川亜弓・・・
 お演りなさい二人とも!
 舞台こそ違ってもあなた方はすでに戦いの真っ只中にいる!
 いずれどちらかを選ぶ日が来るでしょう。
 どちらが紅天女として残るか競いなさい!
 そして私の命を受け継いで生きておくれ・・・!」

今この場にいない二人の紅天女に命令を下しつつ、
最後は一方的な頼みごとまでしてしまう。
さすが往年の大女優、自己中心的や。

 

「北島さん!」

芝居のことを考え集中しているマヤに話しかけたのは草木さん。
通り雨のポスター制作を美術部の人たちが引き受けてくれたらしく、
完成したら学校中に貼ってくれるらしい。
工作部の連中は簡単な舞台セットを作ってくれるそうだ。
影でこんな根回しをしている名プロデューサー草木さんの活躍も侮れない。

「一つの芝居の成功はまた次の舞台の幕を開く・・・」

草木さんのことなどおかまいなしに月影先生の言葉をリフレインするマヤ。

「あたし、通り雨頑張るわ!
 また次の舞台の幕を開くために・・・!」

演劇界幻の名作・紅天女を演じた往年の大女優の弟子もまた自己中だ。

そして芝居と普段のマヤのギャップに戸惑う草木さん。

「あなた髪の毛いじるくせ・・・なかった?」
「ううんないわよ。どうして?」
「ならいいの。じゃあ放課後に」

去っていくマヤを見送る草木さん

「あの髪の毛をいじるくせ・・・
 佐藤ひろみの演技の時だけ・・・
 佐藤ひろみのくせ・・・?
 まさかそんなお芝居の人物にくせなんて・・・
 別人みたいだった・・・
 マヤちゃんあなた一体どういう子なの?
 もしかして私大変な子とつきあっているんじゃないかしら・・・?」

まあ、大変な子であることは間違いない。

「お父さんの浮気を知った佐藤ひろみは
 どんな思いで街を歩いたんだろう?
 通りくる雨にどんな思いで打たれたんだろう・・・?
 雨・・・!
 佐藤ひろみの感じるすべての雨・・・!」

晴天の空を見上げながら雨をイメージするマヤ。
マヤの動きを見た街の人は、雨が降ってきたかと間違えるほどだ。

「佐藤ひろみの雨・・・心の雨!
 演ろう!佐藤ひろみの感じたすべての雨を!
 通り雨・・・!」

 

その頃街では巨大看板が飾られていた。

「一人芝居ジュリエット 主演 姫川亜弓
 姫川亜弓、話題のひとりジュリエット、華麗なる上演!」

道ゆく人の目が看板に釘付けになっている頃、
一ツ星学園の構内にもポスターが貼られていた。

一ツ星学園土曜劇場「通り雨」

主演 北島マヤ
脚本 吉沢ひろし

○月×日 土曜日
PM2:00開演
北校舎裏体育倉庫にて

月影先生の言う通り、マヤと亜弓の戦いがすでに真っ只中にあった。

 

と言うわけで今回。
月影先生の横暴が甚だしい。
自身の雇用者にして、
入院費用をおそらく負担してくれたであろう人への態度がひどい。

しかも速水真澄が紅天女にこだわる理由を聞いておきながら
その答えをあまり聞いていないふうでもある。

さらにはこの場にいない二人の紅天女候補に対し、
「競いなさい!」と命令し、
「私の命を受け継いで」と頼みごとまでしてしまう。
二人の紅天女候補も、そんな重いものまで受け継がされるとは夢にも思うまい。

世のステレオタイプでいう「大女優」の資質を完璧に持ち合わせている月影千草。
根本的に感謝の気持ちにかける部分は否めない。
かつての付き人だった源造さんが、
執事兼運転手兼食事係兼雑用係を担当し、
劇団月影解体の際には月影先生を養うために働きに出たという過去もあるが
そこにも感謝が感じられない。

そういえば源造さんはお元気なのだろうか。
月影先生はアクターズスタジオで社長に悪態つきながらお金を稼いでいる今、
源造さんは自身の人生を生きているのであろうか?
そんなことがとても心配になってしまう。

つつく

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第19巻・100万の虹(1)