【ネタバレ注意】ガラスの仮面第19巻その⑦【いつも赤信号だな・・・】

      2019/04/06

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劇団一角獣のメンバーが東京に帰ってきてから三日。
電車の中のマヤ、窓の外は雪。

「みんなは次の合同公演のことで地下劇場へいりびたり・・・
あたしも学校から帰ってきたら地下劇場に通うけれど
食料や必要なものを買う役目ばっか!
早くみんなと一緒に演技がしたいな・・・」

それってただのパシリでは。
一角獣のメンバーや高校を卒業した描写のある麗はええとして、
それ以外には在学生はおらんのだろうか。
マヤと同い年の水無月さやかは、
紅天女候補から早々に脱落し、学業もドロップアウトしてしまったのだろうか。
マヤへのパシリ行為といい、劇団つきかげの闇の部分である。

「月影先生元気になってよかった
でも月影先生が倒れた時
なんで速水真澄に電話なんかしたんだろう?
大事な先生のことをあの男に頼むなんて・・・!」

マヤが自身の行為に疑いを抱いている頃、
その男はパーティーに向かう車の中だ。
映画、レコード、TV、マスコミといったいわゆる業界人が集う場で、
彼にとっては顔を出すだけの退屈な仕事なのだそう。

「エンジンの調子が変なんです。
お急ぎのところ申し訳ありません。
エンジンが故障かもしれません。」

車を停車させると修理を始める運転手。
車が止まるほどの故障をその場で直せる人はそうそういない。
大都芸能、若社長が乗る車がエンジントラブルとは大丈夫だろうか。

「どうだ?エンジンの調子は?」

「修理に時間がかかりそうで・・・
申し訳ありません、他の車を手配しましょうか?
それともタクシーを?」

「いや、道路も混んでいる。
ここからなら会場のホテルまで歩いて14、5分・・・」

「しかし傘の用意が・・・」

雪の中を歩く決心をした速水真澄の視線の先に立っていたのはマヤだ。

「速水真澄・・・!」

「たまには車の故障もいいもんだな。
こんなところで偶然君に会えるとは。」

ジョークではなくて本心なのが怖い。
運転手さんもまさか大失態が奇跡を起こしたと知るよしもない。

「あの・・・この間はわざわざどうもありがとうございました!
月影先生のことはほんとにどうも!
あの・・・車の故障って?」

「この先のロイヤルプラザホテルまで歩いて行こうとしていたところだ」

「申し訳ございません真澄さま
傘の用意くらいしておくのでした。」

社長が乗る車に傘の用意もしていないこの運転手は無能か。

「たいしたことはないさ」

マヤの手前か、部下を責めなかった速水真澄に傘を差し出すマヤ。

「ロイヤルプラザホテルまで送ったげます!
行く方向が同じだから」

「チビちゃん・・・」

「先生のことよくしてくれたお礼です」

「チビちゃん・・・
ありがとう
ではお言葉に甘えて」

マヤの手から傘を取る。

「俺が持った方がいいだろう?
こういうことは男の役目だ。」

タキシードに高価そうなコート、そしていちごの傘。

「真澄さまがあんな少女と相合傘!
いちごの傘さして・・・うそ・・・」

大失態を演じた運転手もびっくりだ。
異様な光景に道ゆく人も振り返る。
そんな視線など気にせず、マヤとの久しぶりのトークを存分に楽しむ速水真澄。

学校の芝居のこと、地下劇場のこと、
これからのこと、紅天女のこと、
なかなか噛み合わない会話を堪能し、速水真澄の笑い声も大きくなる。

「こうやって雪の中を歩くのもいいものだな。
なんだか街が新鮮に感じられる。
どうした?へんな顔をして」

「あの・・・あなたでもそんな風に思うことがあるんですか?」

「俺を機械だとでも思っているのか?
少しは人間らしい気持ちも持ち合わせているさ。
雪は好きだ。」

雪が好き=人間らしいわけではない。

「冷たくて何もかも白一色におおってしまう。
汚いものも何もかも・・・清々しいばかりの白・・・
雪は好きだ・・・」

速水真澄の心の声。
もはや雪が好きなのかマヤが好きなのかよくわからんが、
十分すぎるほどの人間らしい気持ちを持ち合わせている。

「よ!かわいい傘さしたアベックがきたぜ!」

そんな中、酔っ払いが真澄とマヤに絡んでくる。

「年の差がありそうだけど彼女恋人かい?
かわいいねえ」

ご満悦の速水真澄、そして怒りに震えるマヤ。

「あたし失礼します!地下劇場すぐ近くですから」

慌ててその場を立ち去るマヤ。
赤信号にも関わらず飛び出したところを
速水真澄に抱きかかえられ、目の前を車が通り過ぎた。

「馬鹿!信号をよく見ろ!赤だぞ。」

「大きな手・・・あったかい・・・」

速水真澄至福のひと時もつかの間。

「傘は持って行ってください。
月影先生のこと約束を守ってくれたお礼です!
でもあたし、あなたのこといい人だなんて
思ってやしませんからね!」

信号が変わるや否や、雪の中をさって行ったマヤ。

「いつも赤信号だな・・・
あの子と俺の間の道路は・・・
いつまでたっても渡れない・・・」

うまいこと言うてる場合か。

「やだ!あたしやだ!
あいつの手があったかいなんて・・・
どうかしてるんだ・・・」

マヤの心は戸惑いを隠せないでいた。

と言うわけで今回。
いろいろやばい大都芸能。
社用車のエンジントラブルに、傘の用意なし。
社長の運転手としてはありえない大失態である。
しかし、エンジントラブルのおかげでマヤに会うことができ、
傘の用意がないおかげで念願の相合傘である。
この運転手は叱責下手すると解雇をマヤのおかげで免れた可能性すらある。

そしてマヤと自分の関係を赤信号に例えた速水真澄。
なかなかその比喩は悪くはないが、根底がおかしい。
11も年の離れた現役女子高生のあの子との間を
渡ろうとしているその思想がすでに赤信号である。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第19巻・100万の虹(2)