【ネタバレ注意】ガラスの仮面第20巻その④【あの子は天才よ・・・!】

      2019/06/15

Pocket

アクターズ・スタジオの稽古場に佇む月影先生。
そこに速水真澄に連れられたマヤがやって来た。

「月影先生・・・」

「何をしにきたの?マヤ、あなたはここへ」

「お会いしたかったんです・・・月影先生・・・
 あたしくじけそうで・・・
 亜弓さんのジュリエットを観てきました
 あたしとてもかなわない・・・
 どうすれば亜弓さんに追いつくことができるのか・・・
 紅天女をあの人と競うなんて・・・
 教えてください月影先生ほんの少しても・・・
 あたしに演技の稽古をつけてほしんです・・・」

涙ながらに教えを請うマヤ。

「前にいったでしょう。あなたは自分の手でつかみとれと・・・」

「上手くなりたいんです!演技が!
 あたしこれしかないんです!
 自分に自信が持てるものが何もないんです!
 そんな私の演技の素質をみいだして育ててくれたのは月影先生です!
 演技がうまくなりたいんです!もっともっと!
 生きていく自信がほしいんです!」

芝居だけでなく生きる糧すら先生に求める。

「亜弓さんよりも?」

「はい・・・!」

「よろしい!あなたに稽古をつけてあげましょう。マヤ!」

「ええ?本当ですか?」

「今これからこの場で」

「これからここで?」

「そうよ。今日亜弓さんのジュリエットを観てきたのでしょう?
 演ってごらんなさい今ここで」

相変わらず突然始まる月影道場。

「さあマヤ!お演りなさい」

「亜弓さんのジュリエットをあたしが???」

「そうよこれはレッスンよ。さあイントロはどうだった?思い出して!」

月影先生の怒涛のレッスン攻勢。
その頃アクターズ・スタジオに到着したのは他ならぬ姫川亜弓。
なんでも月影先生と会う約束をしていたのだとか。
しかし先客が来ていると聞き及び訝しむ。
もちろん先客とはマヤだ。

「さあ!お演りなさいマヤ!
 演技の稽古をつけてほしいのでしょう?
 これはレッスンよ!」

「亜弓さんのジュリエットをあたしが・・・?
 あたしがあのジュリエットを!?」

稽古をつけてほしいというマヤの願いにつけこむように、
無茶振りをする月影先生。
そして自ら稽古を志願したにも関わらず往生際が悪いマヤ。
この構図はもはや古典芸能にも等しいテンプレとなりつつある。

「月影先生・・・なぜあたしに亜弓さんのジュリエットを・・・?
 やるしかないわ。先生がなぜそれを演れといっているかはわからないけど」

ついに観念したマヤ。
脳裏にはオープニングのひばりのさえずりが響き渡る。
そして今まさに姫川亜弓が稽古場に向かっているのだった。

オープニングで姫川亜弓が見せた鳥の飛翔にも似た動き。
しかし物音を立てて着地。

「飛べない・・・亜弓さんのように飛べなかった・・・
 優雅にかろやかに鳥のように・・・!」

「まるえ重い荷物が落ちて来たようね。」

マヤの心の声に間髪入れずダメ出しをする師匠。
見よう見まねでジュリエットを演じるも、
慣れない動きに倒れこんでしまう。

「オーホホホホ」

活字にすると得体の知れない笑い声をあげる月影先生。
しかし次の瞬間には手にした杖でマヤを攻撃する。
久々の鉄拳制裁。

「腰!足!
 まるで鍛え方が足りないわ。
 自分の体も自分の思い通りに動かせないの?」

幾たびか死にかけている人にあまり言われたくはない。
しかしそんな自分のことは棚に上げて怒涛の月影節が炸裂する。

  • 役者というのは自分の体を全てコントロールできなければいけないのよ!
  • そんなことでよく亜弓さんより上手くなりたいといえるわね
  • 亜弓さんのジュリエットはすばらしかったわ
  • 身につけた高度なテクニックさすがだわ
  • 舞台の華とは亜弓さんのような人のことをいうのね

褒めているようで「テクニックのみ」しか褒めていないのは皮肉である。

「このあとの飛んで行ってしまったひばりに
 自分自身の姿をみるような演技はまた素晴らしかったわ。」

「ひばり・・・飛んで行ってしまったひばり・・・」

追い詰められたマヤ、ついに本領を発揮する。
突然両手を挙げ、ドラゴンボールの元気玉のポーズ。
この動きには月影先生、速水真澄、そして様子を伺っていた姫川亜弓も息を飲む。

「せっかく喜びを手に入れたと思ったのに
 瞬く間に手の間から飛んで行ってしまった・・・
 幸せもきっとこんなものかしら・・・?」

突然見せた切ない表情に驚く姫川亜弓。
そして手を下ろし後ろ手に組むマヤ。

「いいわよねひばり・・・お前は自由・・・
 そしてわたしも自由・・・自由・・・」

「なに・・・?このジュリエット・・・これはいったい・・・!」

本家の姫川亜弓すら驚く表現。
ここで月影先生の杖が床を殴打する。
杖をカチンコ代わりに使わないでほしい。

「今そこで腕を後ろに組んだのはどういうつもり?」

「え?あの・・・ジュリエットには翼がないし
 本当は自由じゃない気がして・・・
 そうしたらひばりがとてもうらやましくなって・・・
 気がついたら腕を後ろに組んでたんです・・・」

「ひばりがうらやましかった・・・ですって?
 マヤ・・・あなたは・・・!」

マヤの演技論に激震を受ける亜弓。

「亜弓さんの洗練された演技と比べるとまるで素人ね・・・」

理由を聞いた結果酷評を下す鬼師匠。
その酷評を噛みしめるマヤ。
しかし鳴り響いたのは拍手。
マヤが振り返るとそこには亜弓がいた。

「お邪魔でしたかしら?月影先生、皆さんがお見えとは知りませんでしたわ。」

「いいえ、いいんですよ。今夜あなたとこの時間にお会いする約束でしたものね。」

そんな二人のやりとりなど耳に入らないマヤ。
素人並みと酷評されたジュリエットを本家に見られた恥ずかしさがこみ上げる。
そして別の衝撃を受ける速水真澄。

「この時間に約束だと・・・?
 では月影先生は亜弓くんがくると知っていてわざとマヤにジュリエットを・・?」

「光栄だわ。あなたが私の演ったジュリエットを演じてくれるなんて・・・」

しかし恥ずかしさのあまり亜弓の横を猛ダッシュですり抜け
外に出て号泣するマヤであった。

「ひばりがうらやましかった・・・
 マヤ・・・やはりあなたはおそろしいひと・・・
 わたしがあなたより優れているのは
 もしかしたら演技の技術だけかも知れない・・・
 マヤ・・・わたしはあなたの本能がこわい・・!」

ついに真実を知ってしまった姫川亜弓であった。

 

のちほど。
マヤを送り届け、亜弓も帰った後。
なぜ亜弓が来る時間に合わせてマヤにジュリエットを演じさせた理由を
月影先生に尋ねる速水真澄であった。

「マヤに今の自分の実力の程を思い知らせたかったのよ」

相変わらずやりかたはえげつない。

「真澄さん、マヤと亜弓さんの差はなんだと思って?」

「差?」

「自信と闘争心・・・
 亜弓さんにあってマヤにないもの・・・
 才能を活かすも殺すもこの二つにかかっているといっても過言ではないわ。
 今のままではマヤは決して亜弓さんを超えることなどできやしない・・・」

自信と闘争心の塊である紅天女の言うことだから間違いあるまい。

「マヤには荒療治が必要です」

まるでこれまでが荒くなかったような風潮。
さすがの速水真澄も月影先生の思惑が読めない。

「月影先生、あんたは北島マヤの演技の才能を
 どんなものだと思ってらっしゃるんですか?」

「演技の才能?あの子の?北島マヤの?
 あの子の才能ですって?」

突然ご機嫌になる先生。
「オーホホホホホーー」というまたしてもおかしな奇声を発する。

「北島マヤ・・・あの子は天才よ・・・!」

 

と言うわけで今回。
北島マヤ・姫川亜弓・月影千草・速水真澄とこの主要人物が
一堂に会する久々の場面である。

マヤは相変わらずマイペースな自己中心自虐、
月影先生は相変わらずのオラつき。
姫川亜弓は相変わらずマヤの才能を恐れ、
速水真澄は珍しく物語の進行役を務めてくれている。
さすがにこの濃いメンツが自分が自分がと前面に出ると
速水真澄も異常性をこらえるしかないといったところか。

そして今回の主題は「努力では天才には勝てない」という真実。
月影先生はマヤを未熟ながらも天才と評し、
姫川亜弓も技術しか勝っていないことを再確認してしまう。
しかもその天才は卑屈で自信がなく、恥ずかしがっているのだからタチが悪い。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第20巻・100万の虹(3)