【ネタバレ注意】ガラスの仮面第20巻その⑥【パパとママの子だから?】

      2019/06/29

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AM7:30
「お嬢様 亜弓お嬢様 朝でございますよ」

梅乃ばあやの声で目を覚ます姫川亜弓。
およそ数十畳はあろうかというとんでもない寝室である。
なんせ玄関から門までは100メートルはありそうな豪邸。
いかに父が有名映画監督、母が大女優とはいえ都内に東京ドーム一個分くらいの敷地を持っているのはすごい。
代々金持ちなのか、それとも本業以外の闇の収入があるのか。

そしてこれまた数十畳はあろうかというダイニングで朝食。
母・姫川歌子さんは舞台稽古が夜中まで続いて朝四時に帰宅、
父・姫川貢監督は映画の撮影に入っているためもう5日もスタジオに泊まり込み。

「一ヶ月や二ヶ月は帰ってこないわね。」
「今日お着替えをお届けすることになっています。」
「あら!パパの着替えなら私が届けてあげるわ
 今日近くまで行く用事があるから。」
「おや?よろしいんですか?今日のご予定は?」

今日は学校で卒業証書を受け取り、
劇団オンディーヌへ行って青年部へ移る手続きとロッカー整理。
学校の卒業式も仕事で出られず、先生が預かってくれているとのこと。
ちなみに姫川亜弓は聖華学園の初等部・中等部・高等部と優秀な成績で卒業し、
来春からは大学の演劇学科に進むとのことである。

「アカデミー芸術大賞をおとりになったあゆみさまが演劇学科の生徒におなりだなんて
 先生方もさぞかし教えづらいことでございましょうねえ・・・」

機嫌よく笑う梅乃ばあや。
笑い事ではなく事実である。
そして亜弓が学ぶべきことは演劇のテクニックではない。

そんなおり部屋に入ってくる名もなき使用人

「あのお嬢様、物置の整理をしていたらこんなものがみつかったのですけれど・・・
 うっかり床に落としてしまって・・・お嬢様のでしょうか?」

「まあなつかしい!子供の頃大事にしていたオルゴールだわ
 大丈夫よ壊れてはいないわ」

ネジを回して動作確認。トロイメライが流れる。

「そうよ、これは長い間わたしの子守唄だったわ・・・・」

 

いきなり幼少期を思い出す。
母は多忙でいつも娘のそばにいることができなかった。
母に会いたい時寂しいときはいつもこのオルゴールを聞いていたのだった。

人気女優の母と映画監督の父。
常に姫川邸には来客が絶えなかった。
もちろんそれは両親の取り巻きであったが当時はそんなこともわからない。
そしてくる客誰もが亜弓の美貌を褒め、将来に期待していたのだった。
取り巻きのいうことだけにちやほやされていたが、
自身でも美しいと信じ込んでいたのだった。

ところが5歳の時。
ある服飾メーカー主催のちびっ子コンテストが開催。
幼児ばかりを集めたチューリップの部に参加したのだった。
梅乃ばあやとともに会場にやってきた亜弓の目に映ったのは
まるで人形のような美しい少女だった。
誰もがその少女の美貌を褒め称え、誰も亜弓には見向きもしなかったのだ。
そんなことは初めてであった。

「え?姫川歌子と姫川貢の娘が来てるって?」

その一言をきっかけに亜弓の元に集う関係者や観客。

「どうして?どうしてみんな集まってくるの?
 私がパパとママの子だからなの・・・・・!?」

コンテストは終わり審査発表。

「3番 田中洋子ちゃん!
 2番 小原百合子ちゃん・・・!
 1番 姫川亜弓ちゃん・・・!」

意外な結果にざわつく会場。
そして亜弓自身もこの結果を幼いながらも受け入れることができなかった。

「姫川歌子と姫川監督の娘が一番なんてこりゃいい記事になるぜ」
「いったとおりでしょう?あの子ならいい宣伝になります」
「親子でうちのCMに出すのも悪くないな」

報道陣や審査員は口々に親子関係を強調。

「有名人の子は得ね」

そして誰ともしれない子供の皮肉が突き刺さる。

「亜弓一番じゃないわこんなのいや!
 あの子の方が綺麗なのになぜわたしが一番なの?
 亜弓がパパとママの子だから?
 違うわ!本当の一番はあの子よ!
 亜弓じゃないのに・・・!こんなのは嫌!」

幼いながらも親の七光りで生かされている自分に気づいてしまった亜弓。
両親に対しても口をきかないほどまでに傷ついていた。
心配した梅乃ばあやに本心を打ち明ける亜弓。

自分は本当に綺麗なのか?
家に来るお客はみな亜弓のことを綺麗だというが、
それは有名監督と人気女優を両親に持つから
亜弓のことを褒めてくれているに違いない!

弱化5歳にして、この世の「忖度」というものを知ってしまったのだった。
しかし本音でぶつかる亜弓に対して梅乃ばあやは答える。

「ばあやは正直に答えますけどね。
 中にはそんなお客様もいらっしゃるかもしれないけれど
 亜弓さまはお綺麗ですよ。これは本当です。
 今はまだ小さいけれど、大きくなったらお母様よりずっと美しくおなりですよ。」

回想から覚めた亜弓。

「ばあや、11時になったらこれをママの枕元に置いてくれる?
 たまにはこんな起こし方もいいでしょう?」

思い出の詰まったオルゴールをばあやに託すと、
じゃれてくる愛犬アレクサンダーをよそに車に乗り込み外出したのが8:00。

 

というわけで今回。
突然始まった姫川亜弓の一日、そしてヒストリーである。

なぜ姫川亜弓がそれまでに親の七光りを嫌うのか?
マヤとの勝負にこだわるのか?
が語られている。

自分が親の七光りで生かされていることに気づく5歳児がやばい。
そしてマヤと出会う約10年前に、姫川亜弓に敗北感とこの世の忖度を
徹底的に知らしめた小原百合子ちゃんのその後がとても気になる。

そして梅乃ばあや。
この人も謎の人物である。
おそらく亜弓が生まれる前から姫川家に仕えているのだろう。
描写から察するに住み込みで働いており、
多数いる女中さんや運転手など、姫川家の使用人達を束ねている風でもあり
いわば筆頭家老である。
すべてを姫川家、とくに亜弓に捧げる人生。
自身の家族はいないのだろうか。
ひょっとしたら聖さんのように訳ありな人なのだろうか。

今回始まった姫川亜弓の1日とヒストリー。
思いの外ボリュームが多く今回は朝しか書かれへんかった。

しかし、朝7:30に起床して8:00には車に乗って外出。
10代の女子にしては記録的な支度の速さである。

ただ起きて出かけるだけでなく、
豪華な朝食をいただき、
グレープフルーツジュースとアメリカンコーヒーまで飲み、
オルゴールを見て長い長い回想に入り、
さらには5歳の時に感じた屈辱を噛み締めている。

この間わずか30分。
さすが姫川亜弓、只者ではない。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第20巻・100万の虹(3)