【ネタバレ注意】ガラスの仮面第21巻その②【本物のパックなら・・・!】

      2019/08/17

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そして夜。地下劇場にやってきたのはフランケンシュタインのお面をかぶった堀田団長
つい先日までこのお面にも見慣れて居たはずなのに驚くマヤ・美奈・泰子。
泰子はこんな描写しかないんかい。
この無駄かつ謎のエンターテイメント精神が劇団一角獣の根源でもある。多分。
そしてどうやら野外ステージの使用許可をもらってきた様子である。
通常16:30までのところ、特別に18:30から20:00までの使用が許可された。

「真夏の夜の夢?公園の野外ステージで?
 マヤがパックを?」

「ええ月影先生。
 マヤが劇に入るのを許可してやってください。
 これはみんなからのお願いです。」

電話で懇願する麗。
そして微笑を浮かべる月影先生。

「よかったねマヤ!月影先生の許可が下りたよ!
 しっかりやりなさいって!またみんなの稽古を見にきてくださるって!」

喜ぶ一同。
しかし月影先生も研究所の消滅から数年、
状況の趨勢や自身の健康問題もあり、まるくなったのだろうか。
劇団つきかげ研究所があった頃には
このような越権とも取れる皆からのお願いなど受け入れもしなかったであろう。

「演ろうパック・・・!妖精になれるんだ・・・!」

仲間との久々の舞台に胸を踊らせ台本を読むマヤ。

「いたずら好きで陽気ですばしっこい妖精パック。
 風の中の羽毛のようにきっと身軽なんだわ・・・」

 

後日早速地下劇場で体を動かすマヤ。
しかし声が震え動きも重い。

「亜弓さんならきっともっときれいな動きをとるでしょうね。」

ぎくとなるマヤ。背後には月影先生。
来るの早すぎ。おひまですか?

「妖精パックを演るそうね。
 体の鍛錬ができていないと難しいわよこの役は。
 風のように走ってきたかと思うと、のみのように飛び跳ねる。
 影のように音もなく忍んできたかと思うと光のように去ってしまう。
 これを演ったイギリスの名優はオリンピックなみの稽古をやったそうよ」

久々の月影先生の辛口トーク。
亜弓さんを引き立てマヤを吊るし上げるのは猛特訓の前触れでもある。
そして先生の目線の先にはボールが。

「ちょうどいいわパックの基本になることを教えてあげましょう。
 あなたがたちょっとこちらにきて。そう6人で円になって
 この三つのボールをバラバラに持ってちょうだい。
 マヤは円の真ん中に入って。」

そこらへんにおった劇団員をさっそく顎で使う。
描写から見るに、一人は水無月さやかだが
他の5人は月影メンバーでも、一角獣の主要メンバーでもない。
一角獣の地味メンバーか、それとも地下劇場以来の新加入メンバーか、
いずれにしても月影先生との縁は薄いもしくは無いと言っても良い劇団員。
それをさっそくこき使うあたり、紅天女である。

「この円の中で三つのボールがばらばらに飛び交います。
 ボールを受けた人はすぐさま誰でもいいから投げ返さねばなりません。
 そしてマヤはその真ん中にいて決してボールに触れないように動かなければならないのです。
 前から後ろから横からのボールを当たらないようよけるのです。
 これは反射神経の訓練です。
 パックの動きの基本になるもの・・・それは反射神経です。」

「反射神経・・・?パックの動きの基本が・・・?」

「これができなければ本物のパックはできないわ。」

そしておもむろにラジカセで音楽をかける。

「音楽とボールをよける訓練・・・一体どう言う意味なのかしら?」

「これでいいわ。さあマヤやるの?やらないの?」

「・・・やります・・・」

この状況で「やらない」という返答はあり得ない。

「月影先生、音楽とこの訓練の関係は?」

「今にわかるわ今にね。
 心だけでは演じられない演技を。あの子はこれから覚えるのよ・・・」

そして月影先生の掛け声とともにボールが飛び交う。
最初の数球は避けられるものの、次第にボールはマヤをかすめ、
そして腰に背中に足に容赦なくぶつかって行く。

「これがパックの訓練?
 片時もじっとしていられない・・・
 まともに立ってることさえできないわ・・・」

「それまで!」

音楽を止めた先生。そして息も絶え絶えのマヤ。

「これから公演まで、毎日一時間ずつこの三つのボールの訓練をなさい。
 パックの動きの基本がつかめるまでね。
 本物のパックなら今の球を全部かわしたでしょうねえ。」

一時間避け続けるマヤもどえらいが、
一時間キャッチボールに付き合わされる6人もどえらい。
ほとんど面識のない劇団員をこき使う鬼とも言える紅天女である。

「本物のパックなら・・・!」

「さあ皆さん、私に稽古を見せてくださいな。」

散々人をこき使っておきながらお客さん気分の紅天女。

「やらせてください!先生もう一度!
 今の訓練をあたしにもう一度!」

「一度にやっても効果はないのよマヤ。
 疲れるばかりですよ。疲れ切ったパックなど見たくもない。
 ボールを投げてくれる人のことも考えなさい。
 みんなにも稽古があるのよ」

今更そんなこと言われたって、毎日1時間のキャッチボールはすでにノルマである。
そして堀田団長指導のもと進んで行く稽古とそれを見つめる月影先生。

「あと二年・・・二年の間・・・
 紅天女を演れるかどうかはこの二年にかかっている・・・
 亜弓さん・・・演るわあたし演る・・・
 パックを演る・・・やり遂げてみせる・・・」

稽古中にもかかわらず、亜弓さんへの思いと紅天女への道のりを再確認するマヤ。
この、他人を顧みないあたりがこの師弟はそっくりである。

 

そして連日稽古は続く。
地下劇場で、そして野外ステージで。
昼日中稽古をしている彼らは生計はどのように立てているのだろうか。

相変わらずのリーダーシップとアイデアを誇る堀田団長。
野外ステージに立つと舞台の使い方や登場の仕方など、
つぎつぎとイメージが湧いて来る。
やっぱりこの人が演出なのだろう。

そしてその片隅ではボールをよける稽古のマヤ。
はたから見ればただのイジメである。

そして地下劇場でもボールをよける訓練。

「始めの頃と比べるとだいぶボールのかわし方がうまくなってきたな。」

「なんだか身のこなしが軽くなってきたみたいね。」

ボールを投げる人たちが忖度を覚えたと言う可能性もある。

「ちょっとあれ!マヤの動き!気づかないのか?マヤの動きだよ・・・」

相変わらず絶妙の解説を挟むのは青木麗。

「ほらあの子・・・動きが音楽のリズムに合ってきている・・・
 ボールを避ける手が、足が腰が・・・肩や首が・・
 次第にリズミカルになっている・・・」

「そ・・・そういえば・・・」

間抜けな合いの手は水無月さやか。
かつてマヤの最初のライバルだった彼女は解説者の相手にまで成り下がっている。

「何度もやるうちに、体が無意識に音楽のリズムを覚えたんだ・・
 リズムのある動きは美しい・・・そうか・・・
 それで月影先生はこの訓練に音楽をつかって・・・」

「ねえ麗・・・パックの動きの基本は反射神経だって・・・
 どういうことかしら・・・?」

「今にわかるさ・・・今にね・・・」

お前ら散々解説しておきながら、
どういうことか結局わからんのかい。

というわけで今回。
やはり劇団つきかげと一角獣の関係性が気になる。

堀田団長始め、二の宮恵子、田部はじめ、細川悟といった主要メンバーは
かつて全日本演劇コンクールにて意気投合し、
また苦境に陥ったつきかげをサポートしてくれたこともあり、
非常に気心が知れている。
月影先生との関係性も比較的強く、
伝説の女優の演技力や指導力を理解し、私淑しているとも言えるであろう。

月影先生は地下劇場の初期の頃は
演出やキャスティングなどを積極的に行なっていた。
マヤが舞台上で失態を犯した時などは、
本番中舞台袖で鉄拳制裁を見舞うほどの中心人物でもある。

しかしマヤを破門&謹慎とし、
マヤの活動が地下劇場から離れるとともに
月影先生もまた地下劇場から遠のく。
体調が悪くなった、アクターズスタジオでの指導が忙しくなったなどの理由が考えられるが
単純にマヤ以外に興味がないのでは?とも思える。

そしてその間、地下劇場は堀田団長を中心に回り始めた。
描写を見るに、稽古のリーダーシップや舞台の演出、キャスティングなどは彼の独壇場である。
それに対しつきかげのメンバーも快く従っていることから、
彼のキャプテンシーおよび舞台人としての資質も十分なのであろう。

そして月影先生はたまに稽古を見に来る顧問の先生のような立場になっている。
しかしマヤの出演に関しての最終意思決定権は月影先生にあり、
また面識の薄い劇団員をこき使い、マヤの特訓に付き合わせるといった
とんでもない権力を未だ持ち続けている。

劇団の中心は一角獣であるが、最強は月影先生
ということでよろしいか?

しかしかつて稽古では罵倒や怒声も厭わず、舞台袖で鉄拳を見舞い、
破門&謹慎といった全時代的な処分を下しておきながら、
知らん間にフェイドアウトし、
にも関わらず依然として絶大な権力を持ち続ける月影千草。

さすが人間の心を持たない紅天女、おそるべしである。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第21巻・100万の虹(4)