【ネタバレ注意】ガラスの仮面第21巻その③【パックを演れる!】

   

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一方のマヤ、毎日のボール訓練がパックの演技にどう結びつくのかわからない。
そしてボールを投げてくれる人への感謝も持っていない。

ちなみに地下劇場の稽古場には、つきかげと一角獣の主要メンバー以外にも
見たこともないような劇団員たちが少なくとも10名はいる。
いつからこんな大所帯になったのであろうか。
稽古場では軽妙な演技で共演者を沸かせる。
しかしマヤ自身は納得がいかない。

「ちがう・・・どこかちがう妖精パックの動き・・・
 こんなふうじゃないわ、もっとすばしっこくてキビキビしていて・・・
 あたしのはまだ人間の動き・・・」

そして絶妙のタイミングで現れた月影先生。
おもむろに稽古を見ている。

「よしきた!おいきた!
 それ!ご覧の通り!ダッタン人の矢よりも早く!」

そこで手を叩く音。
もちろん芝居を止めたのは問答無用の月影千草である

「月影先生・・・」

「今のところをもう一度やってごらんなさい!マヤ」

突如始まる個別指導。
おそらく堀田団長を中心に、本日の稽古スケジュールなどを立てているであろうにも関わらず
紅天女はそんなものにはおかまいもしない。

「よしきた!おいきた!
 それ!ご覧の通り!ダッタン人の矢よりも早く!」
「もう一度・・・」
「よしきた!おいきた!
 それ!ご覧の通り!ダッタン人の矢よりも早く!」
「もう一度!」

おもちゃのように、何度もダッタン人コントをやらされるマヤ。

「まだわかっていないようね。パックの動きが。
 それご覧の通り。このパックの言葉は何を表していると思うの?」

「自分のとても素早いことを妖精王オーベロンに告げて・・・」

「そうね。ではその時パックはどんな風に動くかしら。
 自分はこれほどに素早いんだ。さあ見てくださいと言わんばかりの動きを取るでしょう。
 さあ、はじめからもう一度やって!マヤ。」

大したヒントも与えない先生。

「いったいどう動けば・・・」

そしてマヤがスタンバイしている間に、
いつの間にかボールを持っている月影先生。
もちろんその動きを名解説者の麗とさやかは見逃していない。

「よしきた!おいきた!」

その瞬間投げ放たれたボール。
そしてマヤは背中でそのボールの気配を感じ取っていた。

「バシッ!」

ものすごい音を立てて倒れたのは照明器具。
マヤは照明器具が倒れた瞬間も宙に舞い、ボールをかわしていたのだった。

再度説明すると

  • 芝居の最中に背後からボールを投げつける月影先生。
  • それを背中で感じ取り避けるマヤ。
  • 右でもなく左でもなく2mくらいの垂直跳びで避けるマヤ。運動神経0のくせに。
  • ボールはマヤには当たらずに、その先の照明器具にものすごい音を立てて当たる。地下劇場の貴重な設備を破損した月影先生。以外と強肩。
  • 照明器具が倒れる→マヤ着地。滞空時間長すぎ。

「そら・・・ご覧の通り・・・
 ダッタン人の矢よりも早く・・・」

静まり返る稽古場。

「パックの動き・・・!
 かわしていた無意識のうちに・・・
 後ろから球の飛んでくる気配を感じて・・・反射神経!」

何かを掴んだマヤ

「やらせてください!先生!今のところをもう一度!」

そして進化したダッタン人コントが繰り広げられる。
ボールがなくとも生き生きと跳躍するマヤ。

「今の呼吸を忘れないように・・・・マヤ」

進化したマヤの演技に仲間も称賛の声を送る。

「月影先生・・・教えてください!あたしにもっと!
 掴めそうなんですパックの動きが・・・!」

相変わらず自己中心的なマヤは周囲を無視し個別指導を熱望。

「3つのボールをよける訓練・・・
 あなたの体はもうどうしたらいいかわかっているはずですよ。」

「でもあたしまだ投げられるボールを全部かわせないんです。
 パックだったらみんなかわせるだろうって、前に先生が・・・」

愚直なまでに素直なマヤにご満悦の月影先生。

「他のみんなは稽古の続きを!
 ああ、あなた方はちょっと待っていてちょうだい。」

途端に稽古場を仕切り出したかと思うと、
名もなき雑魚団員を顎で使い、マヤの個別指導に付き合わせる。
劇団つきかげや劇団一角獣の北海道以来のメンバーでもなければ
月影先生との縁は薄く、その実力やすごさも知らんであろう。
「たまにくるこの偉そうなおばはん誰やねん?」
というのが正直な感想か。

そんな空気もものとせず自己中心師弟は個別指導を進める。

「いまここにあるものでパックの扮装をしてごらんなさい。」

楽屋でいきなり「ものボケ」を課す先生。
そいしてレオタードを中心にアレンジして大喜利をクリアするマヤ。

「いいですよマヤ。どんな気持ち?」
「なんだか本当にパックになったみたい。」
「ではパックとして3つのボールをかわしてごらんなさい。」
「パックとして・・・?」
「そうですよあなたはパック。パックなら3つのボールをどうかわすかしら?
 用意!」

雑魚団員たちはさすが日常付き合わされているだけあって
月影先生の掛け声で即座にフォーメーションを展開する。

この光景には稽古を再開した団長や麗たちも稽古を止め見入る。

「パックとしてボールをかわす・・・
 あたしはパック・・・あたしはパック・・・!」

そして訓練開始。続けざまにボールが投げられる。
しかしそれを先ほど同様に跳躍でかわすマヤ。
さらに繰り返されるボールの応酬を、
上に下に右に左に、腕を振り足を上げてかわす。
自由自在のマヤの動き。
若干ムキになった団員が投げたボールはマヤの側頭部をめがけて飛んでいく。
しかしそれを掌底で打ち返すマヤ。

「う・・・打ち返したボールを・・・
 な・・・なんて子だ・・・」

ちなみにこの感想は劇団一角獣の寡黙なバイプレイヤー・細川悟。
ボールをよける訓練なのに、打ち返すのは反則やろ。

「パックよ・・・パックなんだわあの子・・・
 みてよ・・・今までの動きと違う・・・
 手も足も表情もゆとりすら感じられるわ・・・
 パックよあの子・・・」

この感想は水無月さやか。
かつてはマヤの最初のライバルとして「若草物語」のベス役を争った彼女も
今は地下劇場の肥やしとして、そして青木麗に次ぐ解説者の役を担っている。
そういえば数年前も「あの子ベスよ・・・」とか言うてなかったか?
成長していない様子。

その光景をおだやかに見つめる月影先生。
しかしいきなりの胸の発作が襲う。
そこそこ穏やかに安静にしていてもいきなり発作とは恐ろしい。
劇団員一同はマヤのパックに見入っているため、
誰にも気付かれず劇場から這うように出ていく死にかけ先生。

「やりなさいマヤ!
 あなたの中の無限の可能性に早く気づきなさい!
 あなた自身の中に埋もれている宝を早く掘り起こしなさい!
 時間が・・ああもっと時間が欲しい・・・
 もっともっと時間が・・・」

この先もそこそこ時間があるので安心していただきたい。

そして劇場では瀕死の師匠を顧みず、個別訓練を満喫するマヤ。

「演れる!あたしは演れる!パックを演れる!」

課題を与えてくれた師匠へも、時間と労力を割いてくれた仲間へも感謝がない、
「あたしは〜」ばかりでそろそろ腹が立ってきた。

 

と言うわけで今回。
月影先生の課した謎のボール訓練の成果が発揮された。
マヤの芝居には心はあるが、それを表現する技術がない。
そこが姫川亜弓との大きな差である。
姫川亜弓は、ダンスや日舞、バレエ、パントマイムといった技術の宝庫であり、
その差を埋めるべく、マヤのリズムと反射神経を養うべくこの訓練を課したのであった。

マヤの弱点を見抜き、それを克服するための課題を与え、
しかもそれを短期間で、地下劇場の環境において克服させる。
月影先生の指導力恐るべしといったところであろう。

しかしこの訓練はマヤだからこそ開花するものでもある。
他のものであれば、照明器具すらぶち倒す月影先生の豪速球に
病院送りになっているかもしれない。

それと地下劇場、かなり人が増えている。
以下、主なメンバー

●劇団つきかげ
月影千草
北島マヤ
青木麗
沢渡美奈
水無月さやか
春日泰子

●劇団一角獣
堀田団長
二の宮恵子
田部はじめ
細川悟
ほか数名?

●その他メンバー
地下劇場発足以来の参加メンバーか?約10名

つきかげメンバーは人数変わらず、
劇団一角獣は全日本コンクールの際には大所帯であったが、
つきかげと合流時には若干人数が減ったような気がする。
つまり、劇団構成の大半は、地下劇場発足以来の参加メンバーであると思われる。

当然このメンバーは月影先生との縁は薄い。
メンバーによってはマヤとの縁すら薄いであろう。
「石の微笑」での失態により、破門&謹慎処分をくらい、
以降、地下劇場の芝居には出ていなかったためである。
さらには、芸能界絶頂期に地下劇場を訪れ、公演をはちゃめちゃにしたという前科もある。
芸能界のスキャンダルの噂もあり、マヤを快く思わないものも少なくないのではなかろうか。

その状況で繰り広げられる個別指導。
月影先生は名もなき団員をこき使い、
マヤは彼らに感謝をするでもなく、自分のことしか考えていない。

彼らにしてみれば
「地下劇場の芝居を見て面白かったからメンバーに入ってはみたものの、
 紅天女だかかつての大女優だか知らんが、たまにくる偉そうなおばはんにこき使われ、
 大河ドラマに出てちょっと有名になったけどやらかした北島マヤとかいう自己中な天然がおって、
 まあ芝居はうまいけれど、そいつばかり依怙贔屓されて、時間もそいつ中心に回ってて
 その状況に団長も古株メンバーも何も言えない。」

といった最悪の状態すら考えられる。
なんだか地下劇場の行く末が心配になってきた。
かつて劇団つきかげ研究所でも同じようなことがあった。

マヤを重用する月影先生の方針に不満を持った一部団員が
劇団オンディーヌ小野寺理事の調略に乗り、
実質解散に追い込まれたと言う過去があるのだ。

そのことを月影先生は忘れてしまったのだろうか。
指導力はハンパないが、経営者としては微妙といったところか。

つづく

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