【ネタバレ注意】ガラスの仮面第21巻その④【いい友人でした・・・】

      2019/09/07

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某所。
車通りの少ないトンネルに二台の車が止まっている。
待ち合わせていたのは速水真澄と腹心・聖唐人。

「お待ちしておりました真澄さま。
 これを・・・お約束のT社の秘密情報書類です。」

「誰にも気づかれなかったろうな。聖。」

「そこは手抜かりなく」

誰にも気づかれてはならない、重役や側近ですら知らない
影働きの聖さんだが、ただの女子高生のマヤには気づかれてしまったという前科がある。

「それはそうと北島マヤ様のことですが、活動をはじめました。」

「活動を?」

「劇団つきかげの元のメンバーや一角獣の団員たちと一緒に
 真夏の夜の夢に出演することになりました。
 役柄は妖精パック、
 場所は吉祥寺のI公園内の野外ステージ。」

「野外ステージ?
 あの近くにはアテネ座があったはずだが・・・
 野外劇か・・・」

何か思惑ありげな速水真澄。
しかしながらこの情報は聖さんからでないと入手できないのだろうか?
別に水城さんでも良さそうな気もするが、
しかし水城さんに頼むとその隠しきれない下心を散々いじられるから
聖さんにしか頼めないのだろうか。

 

某所。謎のパーティー会場。

「いや亜弓くんのような素晴らしい女優が
 わが劇団オンディーヌにいてくれるのでわしも鼻が高いですわい!
 何しろご覧の通りの美人だし演技は天才!
 いやあ二年後の紅天女が楽しみですな。」

徹底的なヨイショで姫川亜弓を持ち上げる小野寺理事。
周囲の客も小野寺先生のヨイショとその隠しきれない下心に辟易している。
なんせ紅天女とその上演権は姫川亜弓に決まったも同然。

「亜弓くんのような美しい女性の演出ならわしもやりがいが・・・」

しれっと演出家として内定したかのような口ぶりはさすがである。

「お言葉ですが小野寺先生、
 紅天女はまだわたくしのものと決まったわけではありませんわ。」

「もう一人の候補のことを言ってるのかね?
 恐るるにはたらんよ。99%まで君に決まっとる!」

かつてなんども北島マヤに苦杯を舐めさせられたにも関わらず
学習能力のない小野寺先生。

「お忘れになりましたの?小野寺先生。
 そのもう一人の候補が残りの1%に全てを賭けて向かってくる相手だということを・・・」

ギクリとなる小野寺先生。どうやら忘れていたようだ。
そして亜弓さんはしょーもないヨイショに付き合うこともなく去っていった。

 

そして次の人登場。

「紹介しましょう。劇団オンディーヌ青年部の期待の新星・桜小路優!」

明和劇場の「椿姫」のアルマン役に抜擢、
週刊誌のグラビアでも紹介され、
映画の出演も決定、今まさに売れ始めていたのだ。
知らん間に。
そしてその姿を遠くで見つめるあまり可愛くない彼女も来場している。

桜小路くんが来たと思ったら次の人登場。
なんと里美茂。意外な人物の登場にびくりとなる桜小路くん。
人気者の里美茂に集まる人々

「悪いなみんな。ここしばらくロケで疲れてるんだ。
 まず一杯飲ませてもらうよあとでまた。」

何しに来てん?
ちゅうか、なんのパーティーだ?
桜小路優と里美茂を鉢合わせさせるサプライズパーティーか。

「変わったなあいつ。
 以前はもっと人付き合いのいいやつだったのに。」
「例の・・・ほら初恋宣言した北島マヤって女の子と別れてからよ。」

噂する周囲とその噂話を白目で聞いている桜小路くん。
そして里美茂本人も死んだ目で、テラスで一人グラスを手にしていた。

「里美さんですね。」
「君は?」
「桜小路と言います。あなたと少しお話を・・・」

テラスに出て来た桜小路くん。

「なぜ北島マヤさんと別れたんですか?」

挨拶もそこそこにいきなり豪速球を投げ込む。

「やぶからぼうになんだ失敬な!君は一体!」

里美茂が怒るのは当然である。

「あなたは一体どんな気持ちであの子と付き合っていたんですか?
 あっさり別れてしまえるほどいい加減な気持ちだったんですか?」

怒られてもやめない桜小路くんの追求に里美茂も応戦する。

「俺は本気だったんだ!
 誰よりもあの子のことを大事に思ってたんだぞ・・・!」

以下里美茂の気持ちと別れの経緯

  • 忙しくてデートもままならなかったが、たまに会えるひと時をどんなに大事に思っていたか
  • 暴走族だの舞台をすっぽかしだたの信じられないような事件のあとで事の真相も確かめられないまま強引に別れさせられた。
  • マネージャーやプロダクションの反対は強引に押し切るつもりだった。
  • だが電話をかけても出ない、向こうからなんの連絡もない、あいに来ようともしない。
  • 俺はわけがわからなかった。そのうち俺との付き合いをあっさり断って来た
  • マネージャーの言葉のままに付き合いをやめることに何の反論もなく同意したそうだ。
  • 俺に一体何ができた?そのあとすぐにアメリカへ仕事で行かなければならなかった。
  • しかも半年だ・・・帰って来たら行方もわからなくなっていた・・・
  • 付き合いを断られたのは俺の方だ。

「本気でそう思ってるんですか?あなたは・・・
 あなたなら何があってもあの子を守り支えになってやると思ったから僕は・・・
 あなたは何ひとつ本当のあの子をわかっちゃいなかったんだ・・・
 僕があなたならそんなことで諦めたりはしなかったでしょう・・・」

ちなみに諦めて別れを告げたのは桜小路、お前自身や。

「君は・・・あの子を好きだったの・・・?」

「いい友人でした・・・」

嘘つきである。

「里美さん、僕はいつかあなた以上の役者になりたいと思っています。
 あなたの二倍も三倍も大きな役者に・・・きっと!」

恋話からいきなり役者としての挑戦状を叩きつけて去っていった。
台風のような展開に、さすがの里美茂もびっくりである。

 

というわけで今回。
これまで桜小路くんはイケメンかつ優しく、
良識がある穏やかな人だと思っていた。

しかしマヤが絡むととんでもない行動に出る。
いかに売り出し中とはいえ、人気絶頂の里美茂にいきなり話しかけ、
マヤとの別れについて言いたい放題いい、そして最後は謎の捨て台詞を吐いて去っていく。

完全に頭おかしい。
初対面の人間にいきなりなぜ彼女と別れたのか突っ込まれ、
正直に答えたところ、全てを否定されたらもはやまともな会話とはいえない。

桜小路くんはマヤが絡むと頭がおかしくなるのだろうか。
以前も桜小路くんに見向きもせず芝居に熱中しているマヤに激怒し、
さらには里美茂との関係を知って自ら別れを告げ自滅、
そして自分なら諦めないという妄言。

北島マヤの魔性のなせる技であろうか。
そういった意味では桜小路くんも里美茂も、マヤの被害者である。
いやこの二人だけではない。

せっかく桜小路くんと付き合ったのに、
彼の心はマヤにあることをうすうす感じている
あまり可愛くない彼女も。

散々マヤの演技に苦杯を舐めさせられたにも関わらず、
紅天女の演出を買って出て有頂天になっている小野寺先生も。

そして演劇界のサラブレッドにして
天才少女の名をほしいままにしているにも関わらず
今まで三度も敗れ、自らの存在すら無に思えるほど思いつめ
雌伏中のマヤの影に怯えている姫川亜弓も。

みなマヤの被害者である。

そういった意味では今回のこの謎のパーティーは
「北島マヤ被害者の会」なのかもしれない。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第21巻・100万の虹(4)