【ネタバレ注意】ガラスの仮面第21巻その⑤【私がその約束の証人になろう。】

   

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「つきかげに一角獣だって!?」

その頃、マヤたちを門前払いにしたアテネ座では村上さんなる人が怒っていた。

「ご存知なんですか?村上さん?」

「ご存知も何も、君たちはえらいのを敵に回したな・・・!」

  • 劇団一角獣はかつて全日本演劇大会で2位を受賞したほどの実力だ!
  • つきかげのメンバーたちはかつての大女優月影千草が選りすぐって集めた才能の持ち主達だ!
  • 北島マヤは今は無名同然とはいえ、あの姫川亜弓を抑えて助演女優賞をとったほどの実力!
  • かつてこの連中が集まって地下劇場ではじめて公演をやったとき、数日後には近くのオリオン劇場が空になったというぞ!

「そんな・・・そんなバカな・・・」

村上さんの言葉に驚く支配人達。
そしてつきかげのメンバーが才能の持ち主の集まりであったことを今思い出した管理人。

そしてI公園では稽古が続いている。

「コラー!妖精ども宙返りもう一度やってみろ!
 何だお前らそのラインダンス!もっと足を上げて!」

公園内に響き渡る堀田団長の怒声と
「うりゃー!」「どりゃー!」といった雄叫び。
マットや命綱なしに、ステージ上で宙返りをしたり、
野外劇場の屋根から逆さ吊りになったり。
よくよく考えると恐ろしい連中である。

「信じられん・・・何をやる気だ彼らは一体・・・」

稽古を見に来たアテネ座の支配人。
恐る恐る見に来たものの、ついついいつもの高飛車な態度が炸裂してしまう。

「野外ステージとは考えたものだね。
 なるほどここならたいして金もかからん。
 通りがかりの人も大道芸に興味を示してくれるだろう。」

無意味に喧嘩を売る支配人。
しかし堀田団長は大人の対応。

「おっしゃる通り僕たちがやろうとしているのは大道芸かもしれません。
 でもだからこそ実力が試されるのだと思っています。
 高い料金を払って劇場に来る客はたとえつまらなかろうが
 演技がまずかろうが余程のことがない限り最後まで我慢してつきあってくれる。
 でも僕たちはそうじゃない。
 下手な演技をしたらそれこそ途中でかまわず立ち去るでしょう。
 もしここで成功させたら僕たちは実力が認められたことになると思っています。」

軽い皮肉も交えて答える。

「ではなにかね?
 アテネ座よりもここで成功する方がはるかに有意義だというのかね?
 はるかに実力がいると・・・!
 なんて生意気なうぬぼれやなんだ!君達は!
 おもしろいやってみたまえ!ここでどれだけの客を集められるか見ものだ。
 公演期間の三日間の間、アテネ座の客席数よりも多く客を集めることができたら
 君たちの実力を認めてやるぞ!」

「実力を認める?もしそれができれば
 みんなをアテネ座へ出演させてくれるんですか・・・?」

突然条件を持ち出したのはマヤ。
「私たち」ではなく「みんな」なのが引っかかる。

「ふん、そうだな。考えてやってもいい。
 アテネ座の座席数よりも多く客を集められたらな!」

「ほんとうですね!きっとですね!」
「今の言葉に嘘はないですよね。約束してくれますね?」

「あ、ああ・・・」

「私がその約束の証人になろう。」

そこに現れたのは部下二人を引き連れた速水真澄。

「どうした?わたしが証人では不服か?」

「いいえ、そんなめっそうもない・・・!」

「君も仮にも劇場の支配人だ。
 自分の言葉に責任は持つだろう?
 もし約束を破ったら証人である私の顔に泥を塗ったも同然・・・
 君も私を敵に回したくはないだろう?」

「と、とんでもない!約束します!」

挑発をしたつもりが挑発されてしまい、
いらぬ約束を引き出され、守る気もなかったが、
業界のパワーバランスにより約束を確実に守らなければならなくなった。

「君たちがここでアテネ座の座席数より一人でも多く客を集められたら
 アテネ座の出演を許可しよう・・・
 ただし1日でもかけたら許可はできん!いいな!」

去っていく支配人。

「ありがとうございます速水さん」
「俺はただ約束の証人になっただけだ。
 あとは君たちの努力次第だ。」

堀田団長の指示のもと、ベンチの数を数える団員達。

「ありがとうございます。あたし達のために。」

「どういたしまして君に礼を言われるほどのことでもない。」

「速水さんどうしてここへ?
 なぜあたし達がここにいるってことを?」

「さあな。君は俺がたまには公演を散歩したくなるとは考えてくれないのか?」

普通はストーカー的な行動であると考える。

カウントしたところ座席数は350から400。
満席でもアテネ座の500席には及ばない。
つまり後は立ち見であり、いかに客を退屈させないか。
堀田団長の檄のもと、意気上がる団員たち。

「料金はどうするんだ?」

「速水さん、今度の舞台は自分たちの実力を試すいわば
 研究発表会みたいなものです。
 それにこんな野外ステージで料金なんて取れません。
 でなきゃ有名でもない俺たちの劇なんか誰も・・・」

「君たちは自分たちの才能をその程度だと思っているのか?
 いいか!自分たちを安っぽく見せるな!
 無料だと世間は君たちを甘く見るぞ!
 誇りをもって観客からは料金を取るんだ。
 たとえアテネ座より多くの観客を集めることができたとしても
 無料同然であったなら世間は実力など認めてはくれまい。
 今年はちょうど国際障害者年だ。
 観客から集めた料金は障害者の福祉団体に寄付しちまえ。
 はじめっからチャリティー公演にするがいい。
 宣伝は目立つ格好で派手にやりたまえ。
 観客に前もってチャリティーのことを宣伝し、
 料金は上演前後を問わず寄付金として集める。
 金額は一定でなくていい。観客の自由意志に任せるんだ。
 君たちの芝居が面白ければ観客達は寄付金を弾んでくれるだろう。
 むろんチャリティーともなれば君たちはタダ働きだ。
 だがこれは君たちにとってわずかな金より
 もっと大きなものを与えてくれるはずだ・・・」

なんと2ページにわたり興行のアドバイスを行ってくれた速水真澄。
その1つ1つには説得力があり、さすが興行の鬼である。
そのアドバイスに感謝する堀田団長と団員達。

しかしマヤは速水真澄の下心を警戒し、冷ややかな目線を送っているのだった。

 

というわけで今回。
アテネ座の支配人は無能である。

理由その一。人間性がなってない。
新オープンの有名劇場であることを鼻にかけ、
マヤ達を門前払いにした挙句、
村上さんに怒られ、挑発にいくも、
速水真澄の業界パワーに押し込められる。
つまりネームバリューや権力に弱い
実力志向や本物志向の人間でないことがうかがえる。

理由その二。業界の情報に疎い。
確かに無名とはいえ、地下劇場で人気を博すつきかげと一角獣。
一般人が知らなくとも劇場の関係者たるもの知っておくべきである。
特に実力のある劇団、面白い劇団を常にチェックし、
自身の劇場に呼ぶくらいの情報収拾をするべきであるが、
ネームバリューに頼り、リサーチを怠っている点失格である。

てなわけで速水真澄証人のもと、
条件がクリアされればアテネ座の出演を許可されるわけであるが、
果たしてこんな無能支配人のいる劇場に未来はあるのかと疑わしい。
条件をクリアし、出演の許可を得るが、
んなもんはこっちから願い下げ、というのが一番かっこいいし、
団員達にとっても伝説になるかもしれない。

しかしマヤは「みんなを出演」と言っていた。
やはり紅天女候補のマヤにとっては
つきかげや一角獣のメンバーとの共演はあくまでも一時的な踏み台に過ぎないのだろうか。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第21巻・100万の虹(4)