【ネタバレ注意】ガラスの仮面第21巻その⑥【その人が例えばもしも・・・】

      2019/09/28

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速水真澄の意外かつ的確なアドバイスに意気上がる団員たち。
しかしその様子を訝しげに見つめるマヤ。

「何を不思議そうな顔をしている?」

「ずいぶん親切なんですね。
 大都芸能の仕事の鬼とも噂されるあなたが・・・」

「下心はないぞ。」

アドバイスに下心はないかもしれないが
わざわざ偶然を装いマヤに会いに来るその行動は下心に満ちている。

「わかってます。だから不思議そうな顔してるんですあたし・・・」

意外な返答に爆笑する速水真澄と
その様子を見て青ざめる部下二人。
彼らは日常、仕事の鬼の側面しか見たことがないのだろうか。

「正直な子だねチビちゃんきみは
 全く君みたいな子は貴重だ」

「お気に障りましたか?」

「とんでもない。君は安心できる・・・
 俺の周りは本心を隠して笑顔を浮かべているようなタヌキばかりだからな。」

部下達の気持ちも知らずにご満悦の速水真澄。
今度は周囲のイエスマン達をぶった切る。

「ここはいいところだな。
 少し付き合わないか?チビちゃん。
 前にもいったろう?俺だって機械でできているわけじゃない。
 たまには自然の中で遊んで見たい気にもなる・・・
 おいで。俺のボートの腕は確かだ。」

突然の乗船宣言。意味不明。

「なんだってあたしがあなたとボートに乗らなきゃならないんですか?」

驚きと激怒のマヤ。
ボートに乗る理由もないし、会話の脈絡もおかしい。

「月影先生は当分君たちのところへは来られないよ。
 前に約束したろう?先生に変わったことがあれば知らせると。
 月影先生は当分安静にさせる・・・」

またしても会話が噛み合わない。
当然マヤは驚く。地下劇場で人知れず死にかけていたとも知らず。

「月影先生・・・まってまって速水さん!
 月影先生に何があったんですか?
 先生の容体がまた悪くなったの?」

慌てて後を追いかけるマヤ。
答えもせずにどんどん先を急ぐ速水真澄

「あの方もよく無理なさるからな。」

「容態はうんと悪いの?
 また心臓発作なの?
 速水さんてば!」

「切符を二枚。さあ。」

「あっ」

月影先生の病状をネタに、マヤをボート乗り場までおびき寄せた速水真澄の作戦がちである。

「どうした早くきたまえ。
 やれやれ世話の焼ける子だ。」

マヤが答える間も無くマヤを抱きかかえる。
変態か。
暴れるマヤを強引にボートに乗せると漕ぎ出す。

「月影先生のことだが過労で少し心臓が弱ったんだ。
 入院するほどのことはない。
 しばらく休養をとって安静にしていれば大丈夫だろうと医者は言っている。
 安心したまえ。」

果たして過労になるほど仕事をしている風でもない月影先生。
そして心臓が弱っているのに入院もせず安心したまえって
どんな状態やねん。

「悔しい・・・またこの男のペースに乗せられてしまった・・・」

安心したのか月影先生のことなど忘れ、
今更ながら速水真澄の作戦に気づいたマヤ。

「ところで月影先生の爆弾発言からもう4ヶ月。
 問題の賞獲得まであと2年ないわけだ。」

いきなり話題は紅天女に。

  • 今の君は賞どころかまともな舞台にも立てない有様だ
  • 芸術大賞受賞後今や日の出の勢いの姫川亜弓ときみと二人の紅天女候補
  • 今の所どう見ても君に勝ち目はない
  • 大都芸能としては一日でも早く上演をかなえたいところだ。
  • 2年を待つまでもなく紅天女はもはや姫川亜弓のもの、それが大方の意見だ。
  • 君の意見を聞きたい
  • もし叶わないと思っているのなら紅天女を棄権してもらいたい
  • 紅天女だけが演劇人生の全てじゃないはずだ
  • もし紅天女を諦めるというのであればこのあと君が演劇界に復帰できるよう力を貸そう
  • 望むなら金でもいい

「速水さん・・・もし世界中のみんなが無理だって言っても
 あたしは紅天女をあきらめるわけには。
 ただ一人の人が信じていてくれている限り!
 亜弓さんは2年待つといってくれたんです」

  • 他の誰もが無理だと思っている中でただ一人・・・あの人だけがあたしを待つと・・・
  • そういってくれたんです
  • もしここで棄権なんかしたら亜弓さんはあたしを軽蔑するわ
  • あの人だけには軽蔑されたくない・・どんなことがあっても・・・!
  • 亜弓さんに軽蔑されるくらいならあたし、死んでしまった方がいい・・・!

「正直言って2年までの間には賞を取る自信はありません。
 でも可能性は捨てたくないんです。
 99%のまで無理でも1%の可能性があれば
 その1%に賭けて生きていきたい・・・
 可能性があるのに諦めるなんてことできない。
 あたし・・・紅天女はあきらめません・・・」

マヤの決意に会心の笑いの速水真澄

「そういうと思っていたよそれでこそ君だ。
 わかった!大都芸能はこの問題から手を引こう!
 しっかり頑張りたまえ!
 今の君のセリフ、亜弓君が聞けば喜ぶだろう・・・!」

「亜弓さん・・・私の心の中のどこかにいつも亜弓さんがいる!
 あの人の影がある・・・!
 待っていてください亜弓さん!あたしを・・・!」

速水真澄を眼の前にしながら、姫川亜弓に決意を誓うマヤ。

「時に遅くなったが卒業おめでとう。
 君は大学へは行かないの?」

「大学なんて行ってる余裕はありません!」

「保護者である君のファンは大学へいけとは行ってくれないの?」

「使いの人を通じてすすめてくれました」

「じゃあなぜいかないんだ?」

「これ以上お世話かけたくないんです。
 それに演劇に打ち込みたかったから・・・」

高校に通わせてもらい楽しい思い出ができた感謝に
卒業証書と記念アルバムを紫のバラのひとに送った過去を語る。
もちろん速水真澄はご存知だ。

「きっとわかっているよその人にもね。
 君の気持ちをとても嬉しく思っているはずだ・・・」

「あたしね夢があるんです・・・
 いつか大劇場に出られることになったら紫のバラのひとを招待したいの・・・
 その人に最上の席をプレゼントしたいの。
 名前も知らないあたしの大切なファン。
 正体は明かしてくれないけれどいつかあって見たい。」

「あってどうする?
 正体を明かさないのは何か訳があるからだろう・・・?
 もしもその人が君にとってとても嫌な人間だったら?
 君の大嫌いな人間だったら・・・?」

「そんなことはないわ!
 たとえその人がどんな人だってとても好きになれるわ!
 いい人よ紫のバラの人、きっととてもいい人よ・・・」

「では・・・その人が例えばもしも・・・
 もしも・・・」

沈黙、そして微笑浮かべボートを漕ぎだす速水真澄。

「一体何を言いかけたんだろ?速水さん・・・
 時々この人のことがわからなくなる・・・
 大都芸能の仕事の鬼・・・
 劇団つきかげを潰し、母さんを死へ追いやった仇
 どうしてここにこうしてこの人とボートに乗っているんだろ?」

「日射しが眩しいな。
 空の太陽を映して池も光でいっぱいだ。
 日射しがこんなに眩しいものだとはな・・・」

訳のわからんことを言って血迷いかけた自分をごまかす。

「今日は付き合わせてすまなかったな。
 稽古頑張りたまえ。
 今度の野外ステージでの劇は成功すれば
 君の演劇界復帰への足がかりになるかもしれない。」

「演劇界復帰への足がかり?
 この野外ステージが?」

複雑な表情で見送るマヤ。

「彼らを毎朝新聞の記者に取材させるようにしむけろ!」

さっそく部下に指令を下す速水真澄は仕事の鬼に戻っていった。

 

という訳で今回。
マヤと速水真澄のセリフばかりであったが、
こいつらほんまに頭おかしい。

まず、速水真澄。
姫川亜弓が紅天女を手に入れると大都芸能が上演するというのは既定路線なのだろうか?
上演権も姫川亜弓のものとなる訳であって、イコール大都芸能の上演ではないはず。
速水真澄しかり、小野寺理事しかり、
姫川亜弓を完全に子飼いと勘違いしている節がある。

そして危うく紫の人暴露を仕掛けた件について。
それを聞いてどうするつもりだったのか。
言葉の節々には、マヤが速水真澄を嫌い憎んでいることを痛切に感じているはずである。
にも関わらず、そんな紫のバラの人でも好きですか?と聞く焦り具合。
なかなか子供である。

そしてマヤ。
姫川亜弓への決意はまあええとして、
「この野外ステージでの劇が?」
とちょっと見下して舐めてる感がある。
無理やり頼んで今回のキャストに入れてもらったにも関わらず
大劇場に紫のバラの人を招待する夢を語る。
その夢自体は感謝の現れで間違ってはいないが、
今目の前にある舞台や仲間への感謝や思いやりにかけていると言わざるをえない。
劇団つきかげも、一角獣も、
マヤにとっては紅天女のための肥やしでしかないのであろうか。

つづく

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