【ネタバレ注意】ガラスの仮面第21巻その⑦【大道芸には大道芸のやり方があるわ!】

      2019/10/05

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「がんばろうぜ!俺たちの実力見せてやるんだ!」

「すばらしい舞台にしようぜ!」

堀田団長を中心に稽古が熱気を帯びていく、劇団つきかげ+一角獣。
宣伝用のチラシやポスターも出来上がり、
I公園のある街の商店街で配ることになった。

「I公園の野外ステージでチャリティー公演をやります!」
「熱気と迫力ナウな感覚の真夏の夜の夢!見にきてくださーい!」

しかし繁華街の中、彼らの宣伝は全く通行人には届かない。
チラシを受け取ってももらえず、受け取ってもらえても捨てられる。

「こんなことで500人以上も野外ステージに集められるんだろうか・・・
 しかも三日間だ・・・」

流石の団長も不安になる。

「だいぶ苦労しているようだな君たち。
 サンドイッチマンにでもなったらどうかね?
 よく似合うんじゃないか。さすが宣伝まで大道芸人らしいぜ。」

マヤたちをからかいに来たのは、アテネ座の支配人と関係者。
ひまか。
しかし例によって彼の挑発は裏目に出てしまう。

「大道芸人・・・いま大道芸人とおっしゃいましたね!」

「ああ、言ったがどうした?」

「大道芸人・・・」

支配人の蔑みにも似た挑発を即座にヒントとして受け取ったマヤ。
靴を脱ぎ捨て、スカーフを巻き、鈴を手にした。

「大道芸には大道芸のやり方があるわ!
 とにかく道行く人をひきつければいいんだ・・・よし!」

大きく鈴を叩き通行人の注目を集める。

「さあさよってらっしゃいみてらっしゃい!
 おいらはパック!森の妖精パックだい!
 森の妖精いたずら者のパック!
 妖精王オーベロンさまに仕えてるんだ!」

途端に通行人たちの注目を集め人だかりができる。

「ば・・・ばかな・・!」

ナイスなアドバイスを与えてしまった支配人もびっくりだ。

「よ、よし俺も・・・!」

堀田団長、謎の雄叫びを上げると、
その巨体からは想像もつかない前宙を披露する。
日常団員たちのアクションにはスパルタとも言える熱血指導を行なっているだけあって、
準備運動なしでアスファルトの上でアクロバットを決めるあたりイカれている。

「俺が森の妖精王オーベロン」

いきなりのアクションと自己紹介に通行人大爆笑。
そしてなぜか背後で踊り出す麗とさやか。

「さて一同が集まりましたこの森の中、
 はてさて何が起きますやら?
 夏の一夜の夢まぼろし
 演じまするは劇団つきかげプラスの一角獣。
 駅の南口を出た公園の野外ステージで
 7月10日、11・12日の三日間、
 暑い夜のほんのひととき”真夏の夜の夢”
 皆様に楽しい夢をお目にかけるつもりでございます。」

マヤの見事な口上で興味を持った通行人たち。宣伝効果は絶大。
支配人とその一味のものはなすすべなく帰っていった。

「大道芸には大道芸のやり方がある・・・か!
 よし!これからの宣伝はこれでやるんだ!
 観てもらう人々に俺たちの劇の面白さを知ってもらおう!
 観に来たいって気にさせるんだ!」

味をしめた堀田団長の宣伝戦略は決まった。
しかしきっかけのマヤは呆然としている。

「マヤ!どうしたの?」

「そうか・・・あたしまだパックから抜けてなかったのね。
 自分を忘れてたわ。なんだか久しぶりなのこんな感じ・・・
 今もなんだかパックが体の中にのこる・・・
 そうよ忘れてたわこの感じ・・・取り戻した・・・!」

支配人の嫌味を即座にポジティブにアドバイスに変え、
ぶっつけのアドリブで通行人の注目を集め、
支配人を悔しがらせ、堀田団長の戦略を決めたにも関わらず、
本人は芝居の一環、そして天才の独り言は相変わらず長すぎる。

翌日からは稽古着をアレンジした衣装で劇の形式で宣伝を行う一同。
中でもイケメン・青木麗が扮装して街角に立つとその効果は半端ない。
次から次へと道ゆく女性たちを籠絡していく。
その姿には地下劇場のアイドルから、路上のアイドルへと進化した開き直りすら感じられる。

夜には繁華街にてチラシやポスターの設置を依頼、
さらには速水真澄が差し向けた毎朝新聞にも取材され、
口コミでもその噂は広まっていった。

アテネ座では毎朝新聞を見て悔しがる支配人と一同。

「こいつはすごい宣伝ですよ・・・
 公演の場所から日時までバッチリ掲載されている・・・」

「チャリティー公演とは考えたな・・・あいつら只者じゃないぜ。」

「どうします?あんな約束をして・・・」

「約束のことより自分たちの心配をしたまえ。
 彼らの公演期間中まともに君達の芝居とぶつかるんじゃないのか!」

彼らを説教するのは、劇団つきかげと一角獣の恐ろしさを知る村上さんとかいうおっさんだ。

毎朝新聞の記事により一躍宣伝され、チャリティー公演ということで関心を呼び、
さらには野外ステージという新鮮さ。

「馬鹿な真似をしたな支配人。
 本気で彼らを敵に回してしまうとは・・・
 まだ気づかないのか?
 我々はかれらにくらべ既にスタートから不利な位置に立っているんだ・・・!」

支配人が毎回絶妙のタイミングで彼らを挑発し、
彼らに本気の敵愾心を燃やさせたことは確かであるが、
スタートははるかにアテネ座の方が有利な位置だと思うのだが。

 

てなわけで今回。
支配人の度重なる失策が目立つ。

1回目 アテネ座に出演を希望したマヤたちをあしらい、負けん気を燃やさせる。
2回目 村上さんに怒られ不安になって稽古を見に行くもいらぬ挑発を行なったことで
速水真澄立ち会いのもとアテネ座への出演条件を約束してしまう。
3回目 宣伝に苦戦するマヤを大道芸人と嘲笑ったことが裏目にでる。

この人は先見性も情報力もないうえに、人間性も疑わしい。
一体何が得意なのだろうか。

そして大道芸には大道芸のやり方、と即興で対応するメンバーの実力は侮れない。
天才マヤの実力は言うまでもない。
これまで全国武者修行と称して公演とバイトを繰り返して移動し、
罰ゲームのような演劇人生を送って来た一角獣のメンバーもさすがである。
麗を筆頭につきかげメンバーの対応力もなかなかである。

劇団つきかげの単独公演時代は、
「若草物語」「たけくらべ」「ジーナと5つの青い壺」の三作品、
比較的本格派、シリアスな演劇である。

しかし一角獣との合同で地下劇場で上演された作品はいずれもドタバタのコメディ色が強い。
今回の「真夏の夜の夢」もシェイクスピア作品であるものの、
一角獣テイストがふんだんに盛り込まれた演出だ。
シリアスよりもコメディの方が難しいと思われる。
これまで本格的な芝居が中心だったにも関わらず
地下劇場にて方向性の異なる芝居に順応し結果を出して来たつきかげのメンバー。
さすが、月影千草がその才能を見込んでスカウトされた逸材だけのことはある。

青木麗は相変わらず男前キャラにて人気絶大。
水無月さやかはなんとなくマヤや麗と稽古や宣伝を共にしている。
沢渡美奈は、今回の主要な役にキャスティングされている。
春日泰子は、全く描写がない。
才能を見込まれスカウトされ、上京し、親から仕送りをもらっているにも関わらず、
地下劇場というある種の暗黒面に堕ち、その活動すら描写されていない。
せめて稽古場にはいて欲しいと思うのは私だけであろうか。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第21巻・100万の虹(4)