【ネタバレ注意】ガラスの仮面第22巻その①【本能で知ってるんだ・・】

      2019/11/16

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「真夏の夜の夢」第2幕第1場・アセンズ公の森の中

「なんだ!停電か?どうした!?」

自分の感情に正直な観客たちが騒ぎ出す。
そしてあたりを見渡す速水真澄と劇作家の日向先生。
芝居を見慣れているお前らまで落ち着きなさすぎや。

どこからともなく聞こえる狼の遠吠え、
フクロウの声、鈴虫の音、
そして野外劇場に吹く風が生み出す自然の葉擦れの音。
この突然の暗闇と効果音が、狙い通りの演出だと
観客が気づいたその頃一気に陽明。

ついに登場、妖精パックを演じる北島マヤである。
リズミカルな動きとテンポの良い芝居で舞台と所狭しと動き回る。

「おっしゃるとおり!僕は夜をさまよう浮かれ小坊主!」

マヤの抜群の笑顔が子供達を虜にし、おっさんらを釘付けにする。

「ちょこまかとよく動くなこのパックは。」
「おい、気づかないのか?
 さっきから一度も歩いてないんだぜ・・・あのパック・・・」
「そういえば・・ずっととびはねてる・・・
 立ち止まることはあっても歩くことは・・・・」

感嘆する記者たち。

「たいした足ですな・・・あのパックは・・・
 ただの一歩も歩くことなるちょっとした動きですら軽い跳躍だ。
 そのくせ見ていて不思議とうるさくない・・・
 軽やかな明るい動きだ・・・
 しかも足の動きにリズム感すら感じられる・・・
 どうやってあんなアドリを覚えたんでしょう?あの少女は・・・」

菊川賞作家の日向先生も大絶賛。
まさかこの絶妙の足取りが、
無関係といっても過言ではないなもなき劇団員たちの
一日一時間の奉仕活動によるものだとは思いもよるまい。

「見ていてください紫のバラのひと・・・
 あたしを・・・!あたしのパックを・・・!」

絶妙の動きと芝居で観客を引きつけながらも
心の中は全く別のことを考えている。ええかげんにせえ。

しかしそんな芝居の本筋とは関係ないことを考えているにも関わらず
観客たちはパックのファンになっていくという現実。

「マヤ・・・上達したんだわ。あの子・・・」

なぜか木陰からこっそり見つめる敏腕秘書の水城さんもこの感想。
夜の野外劇場にも関わらず、サングラス風色眼鏡は健在だ。

 

そしてマヤ演じるパックが会場を温めると、
堀田団長演じる妖精王オーベロンと
沢渡美奈演じるタイターニア登場。

団長はまさかの野外ステージ屋根上からの登場。
公園の設備責任者が見たらその危険度にひっくり返るに違いない。

意外な登場に湧き上がる観客たち。
そしてオーベロンとパックの掛け合いに笑いが溢れる。
浮気草を取ってくるよう命令するオーベロン。

「おいきた!
 地球ひとめぐりがこのパックにはたった40分!
 いやっほーい!」

ちなみに赤道一周は約4万キロ。
分速1000キロなので、東京大阪間を30秒。
そのとんでもないスピードを表現したマヤ。

フィギュアスケートのように高速スピンすると影も残さず走り去っていく。
芝居心は運動神経を凌駕するのか。
去り際にはオーベロンのマントを捲り上げるというサプライズ。
その風のような動きに観客は無言となり
流石の堀田団長も、稽古ではやらなかったマヤのアドリブに呆然と立ち尽くす。

「天才だ・・・あいつ・・・
 観客の目というものを知ってやがる・・・
 稽古中の演技などくらべものにもならない・・・
 舞台の上の動きははるかに生命感がある・・
 舞台の上に立つとどう動けばいいのか本能で知ってるんだ・・・」

  • 跳躍の一瞬ののちの回転・・・それだけで観客は目を奪われる
  • つむじ風が巻き起こったような印象を観客に与える・・・
  • 俺のそばをわざとかけぬけ、通るすぎざまマントを跳ね上げ
  • あたかもかぜにひるがえったようにみせかけ素早さを錯覚で見せたんだ・・・
  • 観客の目を翻ったマントにうつし、わずかな好きに舞台袖にさる
  • 怖いのはこれが計算ではなく本能でやっていることだ・・・

マヤの芝居を一瞬で分析し、
これだけも長い感想を述べる
しかも本番の舞台の上でという団長あんたも十分怖い。

観客の目があると一気に芝居がヒートアップし、
稽古では見せなかったやらなかった演技プランをアドリブでぶちこみ
共演者を沈黙させてしまうあいかわらずの舞台あらしっぷりを披露したマヤである。

「舞台の上ではまるで別人になる・・・
 不思議な少女だマヤ・・・君は・・・
 この俺に平気でたてつくただ一人の少女・・・」

突然観劇中にも関わらず、マヤの人物的感想を述べる紫野郎。
あんたも十分不思議や。

「真澄さま・・・」

そしてなぜか木陰から紫野郎を見つめる、変態秘書。
速水真澄にたてつくのはマヤだけではなくこの人を忘れてはならない。
たてつくだけでなく、時にはイジりたおし、皮肉を交え、揚げ足取りすらする。

そんな秘書に見られているともしらず、
速水真澄は本番中に客席の中に桜小路優を見つけるというファインプレイ。

そして舞台の上は恵子さん演じるヘレナが爆笑に次ぐ爆笑をゲットし、
その斬新な演出と新解釈に没頭していった。
野外ステージに集まった観客たちは
ただひとりも帰ろうとはしなかった・・・

 

というわけで今回。
マヤ演じるパックが舞台に登場し芝居はヒートアップ。
パックが観客を引っ張り、
その世界観と演出でこれまでのところは大成功だ。

相変わらずマヤの個人プレーが目立つ。
客が増えれば増えるほど、
稽古無視、段取り無視のアドリブを投入し、
共演者すら沈黙させてしまう。
そのくせ、心はここにあらず。

そして目だったのは堀田団長の解説者スキル。
突然放り込まれたアドリブを瞬時にかつ冷静に本番中に心の中で解説しながら
舞台上では芝居を続けるあたりなかなかである。
彼は役者として芝居もできてアクションもできて力量は十分。
リーダーシップもあり、演出力やキャスティングの先見性もある。
しかも沢渡美奈という美人をゲットしつつある。
髪型はサリーちゃんのパパのくせになかなかやりよる。
読者の皆さんも、堀田団長のことが大好きなはずだ。と思う。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第22巻・100万の虹(5)