【ネタバレ注意】ガラスの仮面第23巻その①【毒・・・】

      2020/01/15

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「ここにいるのは審査員という名の観客・・・!」

モードに入ったマヤとそれを見つめる審査員。
そして扉の外には記者に化けた聖さん。
ここにいるのは不法侵入という名の犯罪者である。

「北島マヤ・・・
 かつて姫川あゆみを抑えて助演女優賞をとった少女・・・
 このセリフの演技をあの子は一体どう演る気なのかしら・・・?」

マヤの芝居に興味津々はライバルの江川ルリさん。
マヤの馬鹿でかい独り言を聞かされていただけに
その結末が気になる。

課題①「毒」

狂気じみた長ゼリフ。
しかしマヤは声を発することなく右手をおもむろに動かす。

「あ・・・」

手を挙げると手首をひねる。

「あ・・・水道・・・!?」

審査員という名の観客は面白いようにその動きを口に出して説明。
審査員ではなくもはや解説者や。

「な、なんなのあれは一体?
 ナベをおいた・・・!
 台所・・・!台所のパントマイムだわ・・・!」

江川ルリさんも負けじと解説。
なんなのといっておきながらその動きは確実に伝わっている。
ナベをおき、コンロを回して火をつける動きが見えている。

「台所のパントマイム・・・
 台所のマイムだわ・・・
 あの子・・・何をする気なの・・・?」

台所のパントマイムやろ。

「毒を手にした人物の感情を込めたセリフの演技・・・
 そうよ・・・
 自分なりの感情を込めてセリフを言えばいいだけじゃないの・・・?
 何をやる気なの?」

毒を手にした人物の感情を込めたセリフの演技やろ。

「ものを刻む・・・
 わかる・・・わかるわあの子の手の動きで・・・
 ナベに移す・・・火加減を見る・・・」

そしてマヤ必殺の白目発動。
無言のパントマイムからの必殺技に
審査員も江川ルリさんも失禁しそうになる。

「なんて暗い表情・・・!
 なんて憂鬱そうな・・・!」

そして戸棚を開けて何かを取り出し手にする。

「毒・・・」

一言で凍りつく室内。
そして室外には他のライバルたちも集まりマヤの演技に凍りつく。
はい圧勝。
続きのセリフはパントマイムを補完する説明だ。

「ど、どうやら台所の向こうの部屋にでも殺したい相手がいるようですな・・・!」

演出家の風魔鬼平先生には部屋の向こうが見えるらしい。
イかれた名前に負けないだけの芝居を見る目がある。

そして壁越しに室内を見るマヤ。

「わたしは苦しみの鎖からときはなたれる・・・」

ビンを傾けるマヤ。
審査員もライバルたちもその傾きに注視する。

「タン!」

全員には、ビンを調理台に置く音が聞こえた。
そして戸棚にビンをしまう。

「わたしの切り札・・・!」

全員無言。
そして姿勢を変えると、いつものマヤに戻って笑顔で一礼。

「あ・・け、結構でした・・・」

「これは審査のためのセリフの演技なんてものじゃない・・・
 1本の短いお芝居だわ・・・!
 毒という題名の一人芝居・・・!」

江川ルリさんだけでなく、他のライバルたちもマヤの演技力に圧倒された。

  • 見事だわあのパントマイム
  • 何もない空間があの子の動きで台所に見える・・・
  • 料理を作りながら殺したい相手のことを考える・・・
  • そして毒・・・!料理に入れれば憎い相手を殺すこともできると実行に移しかけて、そして「ためらい」
  • あの複雑な「ためらい」をよく演じていたわ・・・
  • 罪の意識、憎い相手に対するわずかな思いやり・・・
  • そして毒をまた元の棚に戻す・・・いつでも殺すことができるのだと・・・
  • 台所で料理という日常の動きの中で毒を手にしたものの殺意・・・
  • なんてリアルな殺意なの・・・観ていてこわかったわ・・・
  • 主人公が今後あの毒を使うことがあるかどうかは観ているものの想像に委ねられる・・・
  • 永久に使わないかもしれないし明日使うかもしれない・・・
  • あの子・・・観客に想像の余地まで残したのよ・・・
  • かなり高度な演技力だわ・・・

読者のためにそこまで深読みしてくれるとは
江川ルリさんあんたの解説もかなり高度やわ。
ライバルではなくもはやマヤの熱烈なファンになってしまったようである。

そして審査員たちもこのマヤの演技には驚愕。

「たったこれだけのセリフを殺意をテーマにした寸劇にすりかえてしまうとは」
「台所の料理の演技を見せることによって殺意がなんとも現実感あふれたものになっている」
「観るものの視線を逸らさないあの呼吸、巧みなパントマイム」
「いったいどこでこんなものを身につけたんだ!」
「観ている間中審査員ということを忘れ、一人の観客になっていましたよ。」
「さすが姫川亜弓がライバルと認める少女だけのことはある・・・!」

もはや絶賛しかない。
しかしマヤ本人は

「一人芝居をやっていてよかった。
 こんなところで役に立つなんて・・・」

なんか、100円拾ったくらいの感想である。

 

てなわけで今回。
体育倉庫での一人芝居「通り雨」で鍛え上げたパントマイムが炸裂した。
このパントマイムがリアリティを増幅して単調なセリフの芝居を肉付けし、
セリフや表情との相乗効果で芝居を盛り上げ、
かつ他の演技者との差別化も果たした。
しかしながら天才マヤには具体的な計算がないのはさすがである。

そして冴え渡ったのは江川ルリさんの見事な解説。
初見にも関わらず、マヤの芝居の一部始終を
「何をするの?」とわかっとるくせに、
読者の立場になって念入りにリアルタイム解説。
しかも終演後にはマヤの芝居の細かいエッセンスが
どのように働き何をもたらしたかまでを復習してくれる。

「漫画」という静止画で伝わりにくい「動き」を明確に伝えるためには
今回の江川ルリさんや、いつもの青木麗のような
卓越した解説力が必須なのである。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第23巻・冬の星座(1)