【ネタバレ注意】ガラスの仮面第24巻その①【色は紫がいいか・・・?】

      2020/03/07

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「あたしが王女アルディス?
 花のような王女アルディス・・・!」

「わたしがオリゲルド・・・!
 野心と復讐心に燃える暗い瞳のオリゲルド・・・
 獄中で育った王女オリゲルドをわたしが・・・!」

真逆と言ってもいい配役に驚く二人。
しかし二人の驚きは対照的である。
マヤのアルディスへのイメージは肯定的なニュアンス。
亜弓のオリゲルドへのイメージはやや否定的なニュアンス。
野心と復讐心に燃える暗い瞳をしっかりと持っとるくせに。

「ミスキャストだ!姫川亜弓オリゲルドだって!」
「華麗な王女アルディスこそふさわしいのに・・・!」
「北島マヤが王女アルディスなんてイメージが全然違うぜ!」
「オリゲルドこそ北島マヤのイメージじゃないか・・・!」

取材陣も驚きで騒ぐ。どちらかとマヤに批判的で亜弓に同情的。

「お静かに!お静かにみなさん!
 この配役についていろいろ異論もありましょうが
 我々はこの役をこの二人がどう演じてくれるか非常に楽しみにしております。
 我々はこの舞台をありきたりのものにしたくはないのです。
 その意味から言っても舞台でのこの二人の演技に期待をかけております。」

演出家・風魔鬼平先生の説明が入る。
どうやらイメージ通りの役ではなく
むしろそれを取り替えることによって舞台に意外性を出し、
観客の関心や興味を煽ろうというハラであると取材陣は解釈した。

そしてその光景をみて不敵な笑みを浮かべた姫川亜弓。

「引き続き配役を発表いたします。
 ラストニア国・国王 津田広志
 王妃カタジーナ 東ひとみ
 二度目の王妃ラグネイド 須坂田江子
 そして皇太后ハルドラ 月影千草!」

盛大な歓声と拍手で迎えられる月影先生。
なにせ一世風靡した往年の大女優・紅天女の約30年ぶりの復活である。

「皇太后・・・月影先生が・・・
 先生と舞台と共演できるなんて思ってもみなかった・・・
 先生と同じ舞台に立つなんて・・・なんだかこわい・・・」

なんだかではなくガチで怖い。
それは生物としてまともな反応である。

配役発表が終わり出演者に取材するマスコミ。

「わたくしはまず新たな役に挑戦の機会を与えてくださった
 スタッフの方々に感謝いたします。
 王女オリゲルドはいままでにやったことのない役柄であり興味が持てます。
 今は王女オリゲルドの役柄をどう工夫するか
 どう演じるかそしてどんなふうになりきるか
 その楽しみでいっぱいです。」

さすが姫川亜弓、余裕の優等生的コメント。

「あたし・・・自分が王女アルディスを遣るなんて信じられないんです。
 気品があって花のように華麗で美しく生まれついての王女アルディス・・・
 亜弓さんにこそふさわしい役だと思ってましたから・・・
 でも・・・お芝居って素敵ですね。
 この私がそんな素敵な王女様になれるなんて・・・
 きっと難しい役だと思うけれど
 王女アルディスの仮面をかぶりたい・・・
 そうして舞台の上で生きてみたい・・・
 あたし・・・一生懸命やります。」

マヤなりの等身大のコメントである。

「受けてたった!受けてたったわマヤこの子・・・!」

深読みしすぎの姫川亜弓。受けて立ったらあかんのか。

「今までとは違う・・・
 ほのかな自信がこの子を支えているのが見える・・・
 それでこそ今まで待った甲斐があるというもの・・・
 マヤ・・・この私のただひとりのライバル・・・!」

片思いにもにた熱量で勝手にマヤをライバル視し、
勝手に敗北感を味わい、勝手にマヤの復活を待ち続けた姫川亜弓。
野心と復讐心に燃えている。

そしてつかつかと歩み寄ると、マヤの手を女性とは思えない
「ガシッ!」という効果音で掴む。

「二人の王女、共演頑張りましょうね。
 そして二人で素晴らしい舞台にしましょう。
 ねっ!アルディス!」

「ええオリゲルド」

「その意気だわ。負けないわよ」

握手して勝負を挑む、絶対王者姫川亜弓の意外な雰囲気に驚く会場。

「どうなってるんだこのふたりは・・・!
 ライバル同士じゃなかったのか・・・?
 それにしてもあの亜弓さんがなんだってあの子にそこまでやるんだ・・・!」

ソーシャルイメージとしては姫川亜弓の方が格上で本格派。
にも関わらず、マヤに対してへりくだっているように見えるということか。

「あなたが出てきてくれて一番喜んでいるのは私なのよ。
 思う存分演りあいましょう。稽古の日を楽しみにしているわ。」

去っていく亜弓。

「ええ・・・亜弓さん・・・
 紅天女までの二年の間・・・正確にはあと一年と少しだけれど
 あなたは待つと言ってくれた・・・
 あなたひとりが待つといってくれた・・・
 芸術大賞など望むのも不可能な立場にいたその時のあたしに
 ただあなた一人だけが・・・
 あなたに軽蔑されるような演技だけはしたくない・・・」

どん底から這い上がり、姫川亜弓との共演にたどり着いたマヤ。
待っていてくれた亜弓への感謝を述べると同時に、
「その時のあたし」のあたりに「今は違う」という
若干の自信が垣間見える。
そしてその様子を見つめる月影先生。
月影先生の周りには残念ながらマスコミは集まっていないようである。

 

「日帝劇場出演おめでとう!マヤ!」

「ありがとうみんな!みんなのアテネ座での芝居が成功しますように!」

マヤのアパートではつきかげプラス一角獣のメンバーがささやかにお祝いをしてくれている。
描写されているのは、青木麗、堀田団長とその隣に沢渡美奈、
田部はじめ、水無月さやか、そして春日泰子。
久々に生存確認された泰子。
真夏の夜の夢では描かれていなかったが飲み会には参加しているようだ。

「よかった・・・みんな心配してくれてたんだ・・・
 私一人だけ、アテネ座に出られなくなって・・・
 そうよあの速水真澄のために・・・今に見てらっしゃい・・・」

仲間たちがお祝いをしてくれている最中にも関わらず、
速水真澄への復讐心を燃やすマヤ。

そして向かったのは赤坂クリスタルホテル。
大都芸能制作の新作映画発表会場に乱入し、
アポなしで速水真澄に面会を申し出る。
マヤの奇天烈な行動力と、
ほんまに忙しいのか簡単に会えてしまう速水真澄。

「俺に会いにきてくれたのか。
 よくここがわかったな。」

「大都芸能へ電話したらこちらだっていうもので・・・」

社長の行く先を簡単に口外してしまう会社。

「久しぶりで君に会えてうれしいよ。
 それで今日の用件は?」

「速水さん!あたしあなたなんかに潰されやしませんからね!
 今度日帝劇場に出ることになったんです!
 二人の王女、亜弓さんとの共演です!」

「ほう、それはおめでとう。よくもぐりこめたな」

「オーディションを受けてパスしたんです!
 お生憎だったわね!
 せっかくあたしを劇団のみんなから引き離し
 アテネ座に出られるように仕組んでくれたっていうのに
 あたし日帝に出ることになってしまったんですものね!
 あたしきっと舞台でいい演技をしてみせるわ。
 そしてまた次の舞台に立ってみせる・・・
 いつかあなたなんか見返してやるんだから・・・!」

散々悪態をつかれた速水真澄は微笑むとボーイを呼ぶ

「ああ、きみシャンペンを・・・」

そしてマヤに手渡すと

「二人の王女出演決定おめでとう。
 君の舞台の成功を祈って」

もちろんこの様子を物陰で伺っている秘書の水城さんは健在。
速水真澄のおもしろいところを確実に見逃さないスキルをもっている。

「ところで君に頼みたいことがあるんだ」

「頼みたいこと?」

「君の初日の舞台に俺を招待してもらいたい。」

「あ、あたしがあなたを・・・?」

「そうとも君が俺をだ・・・!
 俺を見返してやりたいといったな。
 それだけの自信があるのなら俺の前で演技できるだろう。
 それともさっきの言葉は単なるでまかせか?」

ムキになるマヤ。

「いいわ!わかりました!
 速水さん初日のあたしの舞台にきてください・・・
 あたし・・・招待券をプレゼントしますから・・・」

「どうもありがとう。席はS席、舞台中央前寄りの席を頼む。
 君の演技がよく見えるようにな。
 いいか、君が下手な演技をすれば俺は途中で席を立つ。
 だが俺の納得のいく演技をしたなら俺は君に惜しみない拍手を送ろう。
 そしてもし君の演技が俺を感動させたなら
 俺は君の望むだけバラの花を贈ろう!」

「バラの花を・・・望むだけ・・?」

「そうとも。大都芸能のこの速水真澄がだ。
 これはいい宣伝になるぞ。
 劇場側も君に一目おくだろうし、
 マスコミも君に注目するだろう。
 君は次の舞台に立ちやすくなる・・・」

一方的にマヤに好条件を突きつける速水真澄。
しかし言葉とは裏腹にマヤを壁際に追い詰め、
右手はいわゆる壁ドン、左手はマヤの手を握っていた。
意味不明。

そして異常事態に気付いたマヤは腕を振り払う。

「わかりました。
 文句なんか言わせない舞台をつとめてみせます。
 それでバラの花をめちゃくちゃたくさん贈らせてやるんだから・・・」

「そうだな・・・色は紫がいいか・・・?」

「速水さん・・・!」

思わせぶりなキーワードを残して速水真澄はクールに去る。

「色は紫がいいか・・・?
 今のは一体どういう意味だったのかしら・・・?
 紫のバラの人・・・」

重要なキーワードだったにも関わらず
そこからマヤの連想は速水真澄のことなどとっくに忘れ、
紫のバラのひとへの感謝と、好演を誓うのであった。

「さすがですわね真澄さま・・・
 あの子に初日の舞台にあなたを招待させるなんて・・・!」

一部始終を見ていた水城さん、速水真澄ん一連を早速解説してくれる。

  • あなたほどの人がわざわざあんな子に招待してもらわなくてもチケットならただでいい席が取れるでしょうに
  • 今度の舞台はあの子にとって演劇界復帰のきっかけとなるもの、失敗は許されない
  • 代わりに成功すればまた次の舞台への足がかりになる・・・
  • つまりあなたはわざわざ憎まれ役を買って北島マヤの闘争心をあおった・・・
  • 招待した手前死にものぐるいで頑張るでしょう
  • 侮られたくない一心で稽古に励むでしょう
  • 天性の才能、それに闘争心が加わると普通の二倍も三倍も上達が早くなる・・・

「そうでしょう?真澄さま
 あなたの思いはみんな私には読めていましてよ・・・
 それほどまでにあなたはあの少女のことを・・・」

相変わらず核心を突いた水城さんの解説。
しかしその表情はやや寂しげに見えるのは気のせいか。
それとも呆れているのか。

 

本人は知らぬが仏。
秘書にその思惑を読まれているとも知らずに、バーで二次会。
カウンターで一人酒。

「どうかなさいましたか?速水さん」

「え?ああ舞台のことを考えていたんだ」

「やれやれまた仕事のことですか?」

「いや・・一人の役者と
 一人のバカなファンのことだ・・・」

「ファンていうものはバカなもんですよ
 その人に振り向いてもらえるなら
どんなことでもしてやろうってきになるもんですからね。

 たとえ振り向いてくれなくても
その人のためならなんだってしてやりたくなる

 純粋でバカなものですよ」

バーテンさん、そのバカが目の前にいるとも知らずに饒舌にバカバカ言う。

「そうだな・・・バカなものだな・・・」

「真澄さま・・・」

カウンターの背後からバカを見守る水城さん。おったんかい!!!!

 

というわけで今回、またしても速水真澄の作戦勝ちである。
マヤから招待券をゲットすることに成功。
詳細は水城さんが解説した通り。

もちろん、マヤの成功と今後の発展を確かなものにするため、
速水真澄というネームバリューを用いるべく、
あえて憎まれ役を買って出たとも言える。

しかし、謎の壁ドンから手を握る・・・
紫のバラのひとの匂わせ行動などを見るに、
単純にマヤにかまってほしい、マヤから招待してほしい、
それだけのようにも見える。

振り返ってもらうためならなんでもする。
バーテンさんの「ファン論」まさに的中である。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第24巻・冬の星座(2)