【ネタバレ注意】ガラスの仮面第24巻その⑤【二人とも失格・・・!】

   

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稽古場に立つマヤ。
マヤ演じる華麗な王女・アルディスと、
次々にアルディスを褒め称える国王や貴族たち。
しかしあまりしっくりこない。
手を叩いて稽古を止める演出家・風魔鬼平先生。

「どうといって悪い演技じゃないんだがね・・・
 きみ王女のつもりで演じてるかね?」

「はいそのつもりですけど・・・」

「ん・・・む、どうも親しみを感じるんだよねえきみの表情。
 一国の王女なんだからね。そう気軽に親しめそうでは困る。いいね。」

そのイカれた名前に負けないだけの的確なダメ出しを与える。
アルディスの優しさを出そうとしたマヤの演技は裏目に出た。

対する姫川亜弓。
セリフの一つ一つ、動きの一挙手一投足が冴え渡り
見るものを凍りつかせ息を飲ませる。

「負ける・・・負けてしまうこのままでは・・・
 二人の王女ではなく、王女オリゲルドの舞台になってしまう・・・」

しかしマヤに負けは許されない。
なんとしてでも互角にならなければ舞台の全てが壊れてしまうのだ。

そして稽古終了。
共演者たちは口々に姫川亜弓の演技とスター性を褒め称える。

「ちがうわ・・私の求めるオリゲルドはあんなものではないわ・・・」

陰鬱に稽古場を去る。
その背中を見つめるもっと陰鬱な月影先生。
この人の場合は疲労とかではなくナチュラルに体調が悪い。

 

そして再び夜。それぞれの生活を取り替えた二人。
マヤは姫川邸にて相変わらずお姫様扱いに慣れずに役が掴めない。

一方の亜弓は地下劇場の暗闇に身を溶かす。

「オリゲルド・・・
 闇よ・・・静寂よ・・・
 もっともっと私を孤独にしてちょうだい・・・
 その苦しみに耐えられなくなるほどに・・・

そして劇場前には亜弓の身を案じた梅乃ばあやが夜な夜な立っている。
お嬢様心配のあまり耐えられなくなったのであろう。頭がさがる。

 

そして翌日、稽古場に集まる一同。
そしてさらに陰鬱になった亜弓さん。
孤独がしみついたのか、それとも疲労が蓄積されたのか。

「ねえあの二人どっちが上手いと思う?」
「そりゃあ亜弓さんだろう」
「あれでもあの子、亜弓さんのライバルだっていうわよ。」

そして共演者たちは二人の王女に興味津々。

「試してみましょうか?」

皆が振り返るとそこに立っていたのは杖を手にした月影先生。

「この二人が今、どちらがよく役をつかんでいるか
 試してみましょうかといっているんです。」

演出家を差し置いて突然演技の試験を始める往年の大女優。
おもむろにお茶を湯飲みに注ぐ

「アルディス、オリゲルド
 わたしはあなたたちの皇太后・おばあさまです。
 さあ私の手からこのお茶を受け取って飲んでごらんなさい。」

「月影先生・・・!」

「どちらがうまく飲めるかしらね?」

驚く二人、ざわつく稽古場。

「どうしたの?二人とも」

「わたしからいただきますわ、皇太后様。」

前に進み出ると華麗な身のこなしでお茶を受け取りお茶を飲む。
その優雅で洗練された動きに息を飲む稽古場一同。

「さああなたもいかが?アルディス。」

「皇太后様・・・いただきます。」

半笑いで月影先生を見上げる。

「・・・・・・」

マヤの演技をみてお茶を渡す芝居をやめた。
これは久々に見る鬼の月影モードか。

「二人とも失格・・・!」

意外な採点。

「わたしは孫のアルディス王女にお茶をあげようとしたのよマヤ。
 あなたのさっきの表情は何?
 顔や態度に緊張感が漂っていて
 私を見る目は皇太后を敬う臣下の目だわ。」

「あ・・・!相手が皇太后様だと思ったらつい・・・」

相手が月影先生だから緊張しただけである。

「それから亜弓さん。
 オリゲルドあなたにとって皇太后は一体どんな存在かしら?
 ほとんど会うこともなかった皇太后。
 そしてこの王国の影の実力者である皇太后のことをどう思っているの?」

「おそれと・・・警戒心を・・・」

「今のあなたにはそんなものは微塵も感じられない。
 皇太后の前にいたのは普通の貴族の少女だったわ。」

後付けの心理を見事に見抜かれてしまった。

「お茶一杯飲めなくて二人の王女が務まるのかしら?
 この次はうまく飲めるようになっておきなさい。」

高笑いで稽古場を去っていく。
稽古が始まる前に勝手に演技のダメ出しをし、
稽古が始まる前に稽古場を出ていく。
さすがこの舞台の影の実力者であった。

 

ちゅうわけで今回。
役をいまいちつかみきれていない二人に対し、
勝手に試験を課した月影先生。
しかしこの二人の回答は、それぞれの特徴やアプローチの違いをよく表している。

優雅で洗練された身のこなしを見せた亜弓。
しかしその動きには「オリゲルドの心」の裏付けはなく
ただの貴族の娘と酷評された。

そして月影先生相手に緊張と恐れを感じてしまい
「アルディスの性格」という裏付けがなかったマヤ。

形から入る亜弓と、心から入るマヤの違いである。
二人ともそのバックボーンにある役柄や立場や関係性が希薄であるがゆえに
形ばかりの動きや、間違った方向性の心といった表現になってしまった。
この二人のアプローチの違いが芝居観の違いを生み出すのだから面白い。
そしてこの二人はそれぞれ互いに、
持っていないものできないものを羨むのだからまた面白い。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第24巻・冬の星座(2)