【ネタバレ注意】ガラスの仮面第24巻その⑥【才能・・・!】

      2020/04/18

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姫川邸に送迎車で帰宅したマヤ。
出迎える使用人は総勢5名。
この人たちは常駐しているのだろうか。
しかもこの前紹介された人と顔が違う。
シフト制か?

相変わらずその生活に慣れず、六畳一間が恋しいマヤ。
ふとリビングからピアノの音が聞こえた。

「やあチビちゃん。」

ピアノを弾いていたのは速水真澄。
なんでも姫川歌子さんの頼みで梅乃ばあやと一緒に
地下劇場へ亜弓の様子を見に行った帰りらしい。

「地下劇場へ?ど、どうしてました亜弓さんは?」

「ライバルのことを気にする前に君はここで何をしてるんだ?
 亜弓くんのかわりに下宿しているだけか?
 きみはちっとも変わらんな。」

「変わらないってどういうことですか?」

「あいも変わらずチビで単純でそそっかしくて短気で小生意気な少女だってことだ。」

「チビで単純でそそっかしくて短気で小生意気で悪かったわね!」

「悪くなんかないさ。俺はちっとも構わんよ。いつものことだ。慣れている。」

二人の意外なやりとりに興味津々のメイドさんたち。

「亜弓くんは素晴らしい女優だ。
 少なくとも今のままでは王女オリゲルドが主役になるだろう。
 さてそろそろ退散するか。目的も果たしたことだし。」

「目的?」

「君がアルディス役としてミスキャストかどうか確かめに来たんだが・・・
 やはりミスキャストだ。」

笑いながら去って行く速水真澄に本を投げつけるマヤ。
そして二階の窓を豪快に開く。

「速水さん!あたしきっとアルディスをやってみせるわ!
 舞台ではあなたにミスキャストだなんて言わせるもんですか!」

「アルディスはどなったり本をぶつけたりはしないぞ!
 気品のある美少女だ!
 はやく役になりきってもらいたいもんだな!」

「今に見てらっしゃい!
 あなたがびっくりするくらいの華麗で美しい王女になってやるから!」

「そういう奇跡に早くお目にかかりたいもんだ」

車で退場する速水真澄。
またしてもマヤの反骨心を煽ることに成功したこと、
そして久々にコミュニケーションできたことにご満悦だ。

 

その頃地下劇場。

「皇太后の差し出した一杯のお茶・・・
 結局私はオリゲルドそのものを理解できていなかったんだわ・・・
 マヤ!負けたくないあの子には・・・!」

昼間のお茶のテストをまだ引きずり、マヤへの敵愾心を燃やす。
このあたりオリゲルドを理解していなくとも才能は十分である。

かたい寝床、冷たい床、粗末な食事、殺風景な部屋の中、冷え冷えとした空気、陽のささない部屋の中。
地下劇場であえて牢獄の暮らしを再現。
食事も缶詰やパンなど中心。
オリゲルドの演技は鬼気を増して行く。
というかただただ、姫川亜弓が疲労し、やつれ、栄養が不足していく。

 

あくる日の稽古場。
マヤの演技は可もなく不可もなく、印象に残らないというのが共演者たちの感想だ。

「はっはっはなんて地味なアルディスだ!
 こりゃ舞台が楽しみですな月影さん。」

「小野寺さん。何をしにいらしたの?」

「ごあいさつですな。
 未来の紅天女たちを見に来たんですよ。」

大都芸能と直接的に関係のない日帝劇場にも顔パスの政治家・小野寺先生。
しかしマヤが飛び込みでオーディションを受けたり、
企業スパイの聖さんが記者に扮して潜入できることから
日帝劇場のセキュリティは甘いのかもしれない。

休憩が終わり、演出家に呼ばれた姫川亜弓。

「気がつかなかったわいつからあそこにいたのかしら?」
「あの目立つ人が・・・」
「なんだかどんどん暗くなっていくわね」
「陰気だし無口になったわ」
「挨拶しても黙ってるのよ」

オリゲルド = 地味で目立たないわけではない。
陰気で暗いかもしれないが、それと引き換えに礼儀を失って行く。
姫川亜弓の方向性大丈夫か。

しかしそんな彼女を見てほくそ笑んだのは月影先生。
マヤは姫川亜弓の足に気づいた。

「あの足・・・あんなに汚れて・・・
 地下劇場で亜弓さんは一体どんなふうに暮らしているというの?」

不潔と不健康に暮らしている。
そしてそこから導き出された演技は稽古場を凍りつかせ、
さすが天才と共演者やスタッフを感嘆せしめるのであった。

「二人の紅天女候補、今度の舞台。
 どちらが紅天女にふさわしいか
 観客が決めてくれそうですな!」

ご満悦の小野寺先生。

「それにしても今度の配役。
 一度は決まっていた主役二人の配役を強引に
 取り替えるよう提案したのは月影さんあなただとか。
 あの地味な北島マヤをよくアルディスに推したものですな!」

衝撃を受けるマヤ。

「誰の目にも明らかなミスキャスト。
 月影さんももうろくしましたね。」

小野寺先生調子に乗りすぎ。
こうなった時彼はいつもギャフンと言わされるのだが。
そろそろ学習してほしい。

月影先生は意にも介さず部屋を出る。

「月影先生!今のはほんとうですか?
 なぜあたしをアルディスに選んだんですか?」

「あなたがアルディスを演れると思ったからよ。」

「どうしてです?亜弓さんの方がずっとふさわしいのに・・・?」

「演出家の風魔先生、この子に説明してやってくれますか?」

そこに現れた風魔先生に説明させる大女優。
自分が提案したくせに。

「北島くん、月影先生はね
 君がアルディス役にふさわしいと断言されたんだ。」

「あたしがアルディス役にふさわしい・・・?
 でもみんながミスキャストだっていっています。
 あたしもそんな風に思って・・・」

姫川亜弓も廊下に現れた。

「それは表面だけのことでしょう?
 わたしがいっているのは才能のことです。」

「才能・・・!」

「亜弓さんはオリゲルドをやるにふさわしい才能を持っている。
 あなたはアルディスをやるにふさわしい才能を持っている。
 自分たちの表面にごまかされて気がついていないだけなのよ。」

「才能・・・気がついていないだけ・・・月影先生・・・!」

「そしてね月影先生はさらに断言されたんだ。
 亜弓くんがアルディスを、君がオリゲルドをやるより、
 その方が一層面白く素晴らしい舞台になる・・・と!
 ま、その説明に納得し、それにたしかに予想外の配役にした方が
 舞台制作上宣伝効果もある。」

結局は才能と金かい。

「でも月影先生、さっきの稽古ごらんになったでしょう?
 あたしちっともアルディスにふさわしくありません」

「それはあなたがまだアルディスをつかんでいないからですよ。
 普通の王女になら知識だけでなれるでしょう。
 でもアルディスは知識だけでは演じられない・・・
 知識以上の何かがいるの。
 アルディスの仮面をかぶるにはどうしたらいいか、想像力を働かせなさいマヤ。
 想像力は知識以上のものを生み出すわ。
 私はちっともミスキャストとは思っていませんよマヤ、あなたも亜弓さんもね。」

風魔先生に仔細は説明させた挙句、
いいところだけは自分でかっさらう紅天女は高笑いでさっていった。

そして二人は、月影先生が言うそれぞれの才能という言葉に戸惑うのであった。
その様子を伺う聖さん。
やっぱり日帝劇場は誰でも会いに行ける劇場です。

「アルディスをやるのにふさわしい才能・・・
 月影千草がそういったのか
 その才能に気づいていないだけだと・・・」

早速自邸にて聖さんの報告を受ける速水真澄。
何か企んでいる。

 

あくる日、姫川邸にいるマヤ宛に贈り物が届いた。
紫のバラとたくさんの箱。
ドレス、ハンドバッグに靴、ワンピースにブラウスにスカート
そして手紙。

「お気に召しましたか?
 新しい役に取り組んでいるあなたにささやかなプレゼントです。
 あなたのファンより」

以下に世話になってるとはいえ、慕っているとはいえ、
知らんおっさんが服やら靴やらを送ってくるのだから
冷静に考えると怖い。しかも姫川邸に。

この一式は速水真澄と聖さんのどちらが調達したのだろうか。

そして早速電話がなる。

「あの方からの贈り物は気に入りましたか?」

「聖さん!どうしてあたしがここにいるって・・・!」

「前に申し上げたでしょう?あなたのことならなんでも知っていると」

それが怖いねん。

「マヤさん、紫のバラの方が今度の舞台出演をとてもお喜びになって
 あなたをはげましたいとおっしゃっています。
 今夜食事にお招きしたいのですがいかがですか?」

「紫のバラのひとがあたしを・・・
 会えるんだ紫のバラのひとに・・・」

まさかの展開に、電話先の聖さんの存在すら忘れる。

「はい!はい!いきます!
 たとえ嵐になろうがマグニチュード8の地震がこようが
 あたし行きます・・・!聖さん!」

 

てなわけで夜。

「プレゼントしてもらったドレスを着たんだけれど
 喜んでくれるかしら紫のバラのひと・・・」

いかにも高級そうなレストラン。

「紫のバラの?ああきいております。
 どうぞこちらへ。」

紫のバラというキーワードで個室の客席へ案内される。

「紫のバラのひと・・
 きっとうんとお金持ちで教養もセンスもあって・・・
 きっと紳士ね・・・
 会えるんだやっと・・・!」

その姿を個室の陰から見守る速水真澄であった。

 

ちゅうわけで今回。
読者は知ってのとおり、アルディスとオリゲルドの配役を進言したのは月影先生であった。
確かにマヤの方がアルディス向きで亜弓の方がオリゲルド向きの才能を持っていると言うのは
言われてみれば納得だが、なかなかその着眼点には至らない。
さすがは紅天女である。

しかもその配役の妙が織りなす芝居の面白さと
意外性による宣伝効果も視野に入れて制作サイドにぶちこむあたり
小野寺先生も顔負けの策士である。

そして極め付けは姫川邸にいるマヤにドレスやら何やらをプレゼントする大盤振る舞い。
なんども言うが変態である。
どれだけ世話になっていようが、
見たこともあったこともないおっさんから服をもらって着るのは
学費を援助してもらうよりハードルが高いんではなかろうか。

そしてそのチョイスは速水真澄か、聖唐人か、
おっさん二人が若い女性向きの服やらバッグやらを手配している様を
想像するだけでなかなかおぞましいものがある。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第24巻・冬の星座(2)