【ネタバレ注意】ガラスの仮面第25巻その①【感覚の再現・・・!】

      2020/04/25

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「紫のバラのひとがくる・・・この席に・・・」

緊張するマヤ。影で見ている速水真澄。
この個室の構造はどうなっているのであろうか。

初舞台から見守ってくれた初めてのファン。
芝居をみて花を贈り、学費を援助してくれたあしながおじさん。
そして今日も服やら靴やらバッグやらをプレゼントして即日のお誘い。
冷静に考えたら恐ろしい。
あったら何を話すか、どう挨拶するべきか、
マヤの胸は高鳴る。

そして部屋に入ってきた足音。

「は、はじめまして!北島マヤです!この度はどうも!」

しかしマヤが顔を上げると案の定速水真澄が1Pぶち抜き。
マヤは知らないが読者はすでに速水真澄が影にスタンバっていることを知っている。
果たしてこの無駄な1Pぶち抜きは必要なサプライズなのであろうか。

「速水・・・真澄・・いえ・・・速水さん」

「やあしばらく。奇遇だな君とこんなところで出会おうとは。」

言うほどしばらくでもないし、
マヤと出会うべく行動している。

どうやら完全な個室ではなく、カーテンで区切られているスペースらしい。
カーテンの向こうには女優など速水真澄の関係者がいる。

「なんでジロジロ見てるんですか!あたしのこと!」

「そのバラ色のドレス・・・よく似合っている。」

自身もしくは聖さんが選んだ服の再確認を徹底する。

「なんだろ・・・この人また優しい目になって・・・
 時にあたしが戸惑うのはこの目の光・・・
 なんだかとても優しい・・・」

マヤをジロジロと見る変質者の目はマヤには優しく映るらしい。

「どうぞこちらでございます。」

そこへ案内されてきたのは上品な中年女性。

「やあ、これは北白川さんじゃありませんか。」

「え?あ・・・あなたはえーっと」

「大都芸能の速水真澄です」

「大都芸能の・・・速水社長の息子さんね」

「ええお会いしたのはずっと昔になりますが」

「そうそうわたしがまだ声楽をやっていた時の・・・」

「今日はどうしてこちらへ?」

「それが・・・招待いただきましたの。
 ほらこの紫のバラのカードがそうですわ」

「紫のバラ・・・」

「名前もないしいたずらかとも思ったのですけれど
 このレストランに問い合わせたら確かに予約いただいていると言うし
 それにとても丁寧なお手紙も添えてあって
 昔舞台に立っていた頃のことをよくご存知のようで
 いたずらとも思えないのでとにかく見にきたわけですわ。」

名前も書いていない誰ともわからん招待状(紫のバラつき)
昔の活動をよく知っている丁寧な手紙、
しかもマヤと同じく当日の誘い。
気になるかもしれないがホイホイやってきた北白川さんである。

「どうでしょう?僕もご一緒させていただけませんか?
 お二人とも初対面のようだし
 よく時は賑やかな方が楽しい。」

ここで速水真澄の強引モードが発動、
マヤ、北白川さん、速水真澄の会食になってしまう。

「初回しましょうこちらは北島マヤさん。
 今度舞台で二人の王女のアルディス役をおやりになるんですよ」

「まー!二人の王女のアルディスをあなたが・・・!」

「そういえば北白川夫人は昔オペラでアルディス姫の役をお演りでしたね。」

「ええ!ええ!懐かしい舞台ですわ。」

テンション上がる北白川さん。
どうやら昔の活動に触れてもらえるのが嬉しいらしい。

「昔アルディスを演った・・・!この人が・・・」

驚くマヤ。失礼やろ。

そしてマヤの元にはウェイターが紫のバラとメッセージを届けた。

「彼女はきっとあなたの役に立ってくれるでしょう。
 素敵な夜を過ごされますように・・・
 あなたのファンより」

「では紫のバラのひとは
 この人をわたしに引き合わせるためにここへ・・・
 こないんだ・・・」

マヤの瞳からは涙が溢れる。

「で・・・なんですの?その紫のバラのひとがどうとか?」
「ええ・・・実は・・・」
「きっとお二人のファンなんですよ。
 新旧二人のアルディス役者を食事に招待して
 引き合わせるなんてイキじゃなありませんか!」

速水真澄自作自演自画自賛。

「北島くん、こちらはオペラ界の花形だった北白川藤子さん。
 12,3年前に病気なさったのをきっかけに引退されて
 今は音楽学校で声楽を教えたり
 教会の聖歌隊の指導をなさったりしてらっしゃるんだ」

速水真澄の策略通り、強引に会食は進んでいく。
病気のくだり、要るか?
なんでも20年以上も前、北白川さんのアルディスは大変評判になったそうな。

「輝くばかりに美しく天使のように優しいアルディス
 気品があって優雅で誰からも愛されたアルディス・・・
 この人がアルディスを・・・」

複雑な表情で北白川さんを見つめるマヤ。失礼やろ。

「どうかなさったの?浮かない顔をなさって・・・」

「は・・・いえ
 自信がないんです。
 だってアルディスってまるっきりあたしと正反対なんですもの。
 どう演じたらいいのか・・・」

「フフ・・・ねえあなた
 わたしが初めてアルディスを演ったのは31のときでしたよ」

「31・・・!そんなに・・・!」

「そんなに・・!」ってなんやねん。失礼やろ。

「あなたみたいに若くもないし可愛いお嬢さんでもありませんでしたよ。」

「じゃあ何か特別な稽古でも・・・?」

ますます疑うマヤ。「特別な稽古」ってなんやねん。失礼やろ。

「いいえなにも。歌の稽古以外はね。
 だってわたしはわたしですもの。
 ただ自分はアルディスだと信じて舞台に立っていましたけれどね。」

マヤの度重なる失礼なリアクションにも関わらず懐の深い北白川さん。

「ねえあなた、このバラの花をどうお思いになって?」

「え?はい、あの綺麗なバラだなあって・・・」

「ではこのバラの花を持って”なんて綺麗なバラ”ってセリフをいってごらんなさい」

「はあ・・・?」

「はあ・・・?」てなんやねん。失礼やろ。
ええ加減腹が立ってきた。

「なんて綺麗なバラ・・・」

だるそうにバラの花を手に取るとセリフをいうマヤ。
すると北白川さん、またしてもバラの花を手に取ると
片手で握りつぶした。
やっぱりマヤの無礼な態度にお怒りなのではなかろうか。

「ではこんどはこれを持って同じセリフをいってくださる?」

「なんて綺麗なバラ・・・」

「ふふ・・・今のあなたのセリフは嘘ね。」

今度はバラの茎を折るとマヤに渡す。
意外とこのおばはん、花をズタボロにする。

「では今度はこれを手にしてセリフを言って見てくださる?
 そう・・・舞台に立ったつもりで」

「なんて綺麗なバラ・・・」

「とても良かったわ!
 今のが演技するということなのよ。」

「あ・・・!」

「あなたセリフをいう時に何をお思いになって?」

「あの・・初めに見たバラの花を頭に思い浮かべて・・・」

「そうねその時の感情を思い出したわけでしょう。
 感覚の再現をやったわけね。」

「感覚の再現・・・!」

「あなたの今のセリフは本物だったわ。
 自分の本当の感情を素直に出せればそれは説得力があるわ。
 観るものを説得するのよ。たとえこれに花がなくてもね。
 わたしは舞台の上で自分が王女だと信じていましたよ。
 王女の心を持って振る舞えばどんな動きもそれらしくみえるものですよ。」

「王女の心を持って振る舞えば・・・」

北白川大先生、マヤの無礼な態度を許す代わりにバラの花を二輪殺し、
感覚の再現を伝授したのであった。
セレブな姫川邸に下宿し、
紫のバラのひとの正体でかつてのアルディスから心を伝授されたマヤ。

対して地下劇場で一人起居する姫川亜弓。

自らが望んだこととはいえ不公平だ。

 

ちゅうわけで今回。
紫野郎の策略にまんまと乗せられ、
食事にホイホイ誘われてしまったマヤ。
そして北白川さん。
マヤにとっては有意義であったが北白川さんはどう思っただろうか。

速水真澄がかつての自身の活動をいじってくれるのはとても嬉しそうであった。
しかし新アルディスの小娘は、かなり無礼である。
にも関わらず王女の心を持って振舞うことを伝えてくれた。
そのビジュアル以上に心の大きな人である。
上品で常に微笑みを絶やさない女性。
その人が片手でバラの花を握りつぶすシーンはなかなかに恐ろしい。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第25巻・冬の星座(3)