【ネタバレ注意】ガラスの仮面第25巻その③【あなた達の演技には足りないものがあります】

      2020/05/10

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なかば強引に風魔先生の許諾を得た月影先生。
稽古をボイコットし、主演二人を拉致した先は川上精肉卸。

「精肉卸・・・なぜこんなところに?」

不審に思うマヤと亜弓を連れて受付に向かう月影先生。

「ああ月影さん、先ほどの電話の件ですね。」

「ええ、係りの人には前からお話しして・・・」

「こちらへどうぞ。主任には内緒にしておいてくださいよ。」

月影先生のトーンと、受付の人の雰囲気から何やらやましさを感じる。

「冷凍庫?」

二人が連れてこられたのは、精肉を保管する冷凍庫。

「さ、中へお入りなさい。」

精肉、というか豚か牛が釣り下がっている冷凍庫に入る二人。
すると月影先生はすっと身を引き、冷凍庫を外部から施錠したのだった。

「先生!何をするんです!開けてください!」

「よくおききなさい!
 あなた達の演技には足りないものがあります。
 気温がないのです。」

いきなり全速力の月影節。

  • ラストニアは北欧・・・北の国です。
  • それなのにあなた達の演技からは冬の寒さも春の温もりも感じられない!
  • 北欧の冬の寒さと厳しさは暖かい東京では想像もつかないほど
  • マイナス20度から30度はよくある気温、時にはマイナス40度にもなるという話。
  • 寒いでしょう!これがラストニアの冬の寒さよ!よく味わいなさい!

もう無茶苦茶やん。
時代とは言え、食料品の倉庫に一部担当者の許可を得て入って芝居の稽古。
しかも「主任には内緒に」ということは、現場担当者の独断である可能性が高い。
あるいは月影マネーをつかまされたのか、恫喝されたのか。
もちろん二人は消毒をしたり着替えたりした描写はなく
普段着のまま冷凍庫へ。
このご時世やったら冷蔵庫に入ってSNSにアップするバイトテロみたいなものである。
しかも月影先生のいう

「マイナス20度から30度はよくある気温、時にはマイナス40度にもなるという話。」

また聞きか。
いったい何度やねん。
ラストニアの冬の寒さとは違うと思う。

しかし閉じ込められてしまった二人、
身を寄せ合いながら冷凍庫の中に立ちすくむ。
温度計によると冷凍庫内の気温はマイナス22度くらいか。
ややマイルドなラストニアである。

とはいえほぼ丸腰で冷凍庫にぶち込まれた二人。
寒いというより手足が痛くなる感覚で震える。

「寒くてじっとしていられない」

「ね、おしくらまんじゅうしない?亜弓さん」

「ええ!」

誇り高き姫川亜弓、二つ返事でおしくらまんじゅう。

「おしくらまんじゅう押されてなくな!」
「おしくらまんじゅう押されてなくな!」

魂のおしくらまんじゅう。

「つ・・・次はマラソンやりましょうマラソン!」

しかし先に倒れたのは姫川亜弓。

「だめよ冷気が胸の中に入って・・・苦しい・・・
 体が凍えて動かないわ・・・
 手も足も痺れて感覚がないの」

待ってましたとばかりに月影先生。

「ラストニア!わたしの国!
 一年の半分は冬将軍の支配するこの国!
 さあ亜弓さん、そこのところのセリフをやってごらんなさい!」

「月影先生・・・!」

「さあ!何をぐずぐずしているの?
 そこはラストニアの冬と同じ温度よ!」

「ラストニアの冬と・・・!」

唇を噛み締めた姫川亜弓。
ラストニアの冬の寒さとは違うと思う。

「ラストニア・・・わたしの国・・・
 一年の半分は冬将軍の支配するこの国・・・」

身体中が氷のような冷たさで痛むなか叫ぶ。

「わたしは王女オリゲルド!
 私の心に永遠に春の来ることはない!」

「すごい・・・亜弓さん・・・」

「氷の剣で凍えさせておしまい!
 戦え・・・戦うのだ兵士たちよ!
 城は落ちる!きっと落ちる!私の手に!
 許さない、誰も許すものか・・・
 誰も信じるものか、あの城を落とすまで・・・
 その日まで私の心の中の吹雪はやむことなく、
 氷も溶けることはない・・・」

渾身のセリフを吐き出すと倒れた亜弓。
そして亜弓を抱きかかえたマヤの眉毛も鼻の中も凍っていた。

「そうよ・・・これがラストニアの冬の寒さ・・・」

ラストニアの冬の寒さとは違うと思う。

すると冷凍庫を開けてくれた月影先生。

「さあでてらっしゃい、二人とも。」

亜弓を抱きかかえたままのマヤ。
二人に暖かい光と空気が差し込む。

マヤに抱きかかえられたことに気づいた亜弓。
慌てて身を離す。ツンデレ。

「どう?マヤ、外へ出てきた感想は?」

「あたたかい・・・
 外の空気がこんなにあたたかいなんて・・・」

小学生並みの感想。

「さっきのセリフの続きをやってごらんなさい。
 アルディスのセリフを。さあ!」

冷気から解放しても特訓からは解放しない月影式。

「ラストニア、わたしの国・・・!
 一年の半分は雪と氷に閉ざされた冬将軍の治めるこの国
 わたしは王女アルディス。
 けれどわたしは知っている。
 春の女神の微笑みが冬将軍の剣よりも強いということを。」

マヤの演技の変化に驚く亜弓。

「冬将軍の治めるこの国のすべての民にとって
 わたしは春の女神の娘でありたい。」

「はい結構!今の呼吸を忘れてはなりませんよマヤ!
 いまのあなたのセリフは本物でした。
 本物の感情に裏打ちされていて聞くものの心を説得します。」

ただ冷凍庫から出てきてセリフを言ったら
珍しく絶賛の月影先生。

「亜弓さん。オリゲルドの心はあの冷凍室の中にいたときのもの。
 雪と心い閉ざされたままの冬の心・・・
 そしてマヤ、アルディスの心と存在は冷凍庫から出てきたときにあなたが感じたもの。
 暖かさと安らぎと幸せに包まれた春の心・・・」

「感覚の再現・・・!
 先生はあたしに感覚の再現をやらせたんだ・・・!
 こんな役の掴み方もあったの・・・?」

この前北白川先生に教わった感覚の再現を噛みしめるマヤ。
こんな役の掴み方はあったものではない。
軽めの反社会行為・テロ行為である。

見事それぞれの王女の心を会得した二人。
二人を連れて喫茶店へ来た月影先生。
しかし月影道場のしごきは終わらない。

「これからあなた方に一週間の時間をあげましょう。
 一週間経ったらわたしは一つのテストをしましょう。
 そのテストであなた達が役作りに成功していれば
 元の芝居の稽古に戻ってもらいましょう。」

稽古から拉致しただけでなく、稽古に復帰するのも月影決定かよ。
もうやりたい放題やな。

「それはいったいどんなテストなんですか?月影先生。」

すると小道具のロザリオを広げる先生。

「これは皇太后のロザリオ。
 アルディスとオリゲルドがこれをどうやって手に入れるか
 テストはそれだけです。
 問題はアルディスらしく、オリゲルドらしく、ということです。
 では一週間後。」

去っていった月影先生。
一週間稽古をボイコットするのだろうか。

ふと我に帰る二人。
二人で喫茶店でお茶してる状況だ。
「ラストニアの冬」風の特訓を乗り越えた二人に
奇妙な連帯感が生まれる。

おしくらまんじゅうの思い出や、
お互いの取り替えた生活についての感想。

「ね?チョコレートパフェ食べる?わたし好きなの。
 あのチョコレートがかかった生クリームのところがいいのよね。」

いきなり普通の女子になる姫川亜弓。
そしてチョコレートパフェ大盛り二つを頼む、体育会男子になるマヤ。

 

急速に仲良くなった二人は地下鉄で別々の方向へと帰る。

「亜弓さん!一週間頑張りましょうね」

「ええ。次に会うときはライバルよ」

この姫川亜弓の答え、意味わからん。
今日の馴れ合い仲良しは一時の偽りの姿ということであろうか。

地下鉄で衆目を浴びる姫川弓。

「ライバル・・・そうよあなたはわたしのライバル・・・!
 このわたしの認めるただ一人のライバル・・・
 そして他の誰よりもわたしの魂の一番近くにいる・・・
 負けたくないわ、マヤあなたには・・・」

やはり今日の馴れ合いを否定し、ライバルであることを言い聞かせる。
本日会得したオリゲルドの心に戻そうと必死である。

「亜弓さん、あたしのライバル・・・
 光り輝くように綺麗でなんでもできて天才で
 演劇界のサラブレッド・・・
 ありがとうあたしのことライバルだといってくれくれて・・・
 次に会うときあなたはオリゲルドね。
 王女アルディス・・・感覚の再現・・・」

マヤの心も若干アルディス寄りになっているのがおもろい。
そしてこれまでは雲の上の人と思っていた亜弓をついに
「ライバル」と言い放ってしまった。
姫川亜弓が認めたとはいえ、実力的には妥当とはいえ、
その手のひらかえしっぷりが恐ろしい。

 

ちゅうわけで今回。
精肉の冷凍庫でのおしくらまんじゅう、
結構有名な名シーンである。

冬将軍が支配するラストニアの寒さに近い冷凍庫内に二人を監禁、
失神寸前のところでセリフの稽古を行わせ、
その冬と春の感覚を身につけ
アルディスとオリゲルドの心を会得させた。

冷凍庫内にほぼ無許可で立ち入り(主任には内緒)
なんの説明もなく普段着の二人を極寒の冷凍庫に監禁。
凍死寸前で感覚の再現を実行。
ほぼ犯罪である。
しかし二人は湧き上がって来た王女の心に感嘆した模様。
そこはもはやDVを受けながらも洗脳されている妻のような感じか。
これまで蝶よ花よと育てられ
スパルタな稽古を自ら課すことはあっても、
人から強いられることはなかった姫川亜弓まで
月影式スパルタに飲み込まれているのが面白い。

しかし寒さをしのぐためとはいえ、「おしくらまんじゅう」てどうよ。
ラストニアの寒さを十分に味わうための冷凍庫やのに、
温まろうとする二人。

筋トレしとるのに、重たいからといって荷重を軽くするようなものである。
この二人、課された課題を少々ずれた観点で乗り切ろうとする天然のフシがある。

マヤは家出に始まり、その浮世離れした言動で敵も多い。
亜弓は、親の七光りと呼ばれないために、親の所有する別宅へ転居するという本末転倒。

そして二人の目標でもある紅天女は日々反社会的行為。

芸能界はおそろしい。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第25巻・冬の星座(3)