【ネタバレ注意】ガラスの仮面第25巻その⑤【俺との賭けに勝ってくれ・・・!】

      2020/05/23

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「あの月影千草が姫川亜弓と北島マヤを二人だけ特別に
 演技指導するという話をきいたかね?真澄くん」

「いえ、初耳です小野寺先生。」

速水真澄に「二人の王女」の現状を報告に来る小野寺先生。
この人の言動が裏目に出なかったことはない。

「ミスキャストなのは誰だってわかることだ。
 あのばあさん、配役を自分が決めただけあって引っ込みがつかなくなったと見える。
 どんない演技指導したところでもって生まれたものはかわらんよ。
 同じ舞台に立てば姫川亜弓の方が光るに決まっとるんだ。」

「この二人の王女で成功できなければ
 北島マヤは演劇界から無視されるでしょうね」

「そうとも!そこだよ真澄くん。
 同じ紅天女候補でありながら姫川亜弓の方が役者として上だと
 みんなが知ることになるんだ。」

「やはり北島マヤは姫川亜弓にはかなわない。
 演劇界はそうみなすでしょうね。」

「そうとも今度の芝居は王女オリゲルドの一人舞台になるぞ!
 月影千草のいった期限を待つまでもなくあの子は自滅だな。」

ご機嫌な小野寺先生。
そしてほくそ笑む速水真澄。

「どうしたんだね?真澄くん」

「ただあの子の場合最後まで油断しない方がいいと思いまして。
 最後の1%まで何が起こるかわからない子ですから。」

「最後の1%か・・・」

これまで散々マヤに大逆転をされ痛めつけられたにも関わらず
学習能力のない小野寺先生。
そして「二人の王女」のオーディションに参加するよう仕向けたのは速水真澄。
自身の敵が身近なところにいることになかなか気づいていない。

 

そして一週間後。
アルディスとオリゲルドのテストの当日。
共演者やスタッフも興味津々で倉庫の様子を外から覗く。

「では早速テストを行いましょう。
 この皇太后のロザリオをまずアルディスが皇太后から手に入れてください。
 次にオリゲルドはアルディスからこのロザリオを手に入れてください。
 テストはそれだけです。」

右手にロザリオ、左手に杖、そして仮面をかぶる月影先生。本気や。

「行動を起こすにはまず動機があります。
 マヤ、アルディスはどういう動機でこのロザリオを手に入れたいと思うでしょう?」

「アルディスの動機・・・
 そのロザリオがあまりにも美しいので欲しくなったのが動機です。」

「亜弓さん。オリゲルドは?」

「ねたみからです。」

「よろしい!はじめ!」

突然始まる寸劇。
脚本もないしセリフも決まってもいない。
あるのはアルディスとして、オリゲルドとして、そして皇太后としての心と役柄。

「皇太后のロザリオ・・・なんて大きなルビー
 美しい素敵なロザリオ・・・
 アルディスあたしはアルディス・・・
 そこに皇太后、おばあさまがいる!」

自分に言い聞かせたマヤ、不意に月影先生の頬に口付けという荒技。
これには姫川亜弓もびっくり。

「誰です!そなたは一体・・・」

「アルディスですわおばあさま!ほら!」

皇太后の手を自身の顔に当てる。
盲目の皇太后という設定もクリア。
そしてここから筋書きなしの王宮コントが始まる。

ロザリオをねだるアルディス。
しかしそのロザリオには思い出が。
皇太后が若かりし頃、アルディスの祖父にあたる先代の国王に嫁ぐ前、
さらにその母、つまり先代の皇太后にもらったという設定。ややこしい。
ほんでさらに国王が生まれた時に、誕生を祝って首にかけたそうな。
さすが月影先生、ふたりに過酷なテストを実践しているだけに、
自身の小道具の裏ストーリーは完璧である。

「では・・・そのロザリオはおばあさまにとって
 とても大切な宝物なのですね・・・」

「ええそうですよアルディス」

ふと我に変えるマヤ。

「どうしようとてもねだれない・・・
 おばあさまが宝物のように思っているロザリオを・・・
 アルディスにはできない・・・!」

「どうしました?マヤ」

月影先生も芝居を中断。

「できません月影先生・・・そんな気持ちになれないんです・・・
 ほんとは甘えてお願いしようと思っていたのに
 おばあさまの大事な思い出をとりあげるなんてとてもそんな・・・」

満足げな月影先生。

「アルディスはとても優しい少女ですよ。
 そうでしょうマヤ?
 アルディスならきっとそう思ったことでしょうね。」

見事である。マヤが芝居できないのではなく、
アルディスの心を持っているから、皇太后にねだる事ができなかったのだ。

「それがアルディスの気持ちなんですよマヤ。
 ついでに皇太后の気持ちも教えましょう。
 脚本にもある通り、皇太后にとってアルディスは
 唯一心を許して愛することのできる可愛い孫です。
 さあ、アルディスの気持ちを素直にいってごらんなさい」

コント再開。

皇太后の思い出を奪おうとしていたことを謝るアルディス。
愛するアルディスに対し、ロザリオを渡す皇太后

「どうせ私はそう長くはこれをかけてはいられないでしょう。
 私の代わりにいつまでもこれをだいじにしておくれ」

月影先生が言うと何とも迫真のセリフや。

「ありがとう、大切にします。
 おばあさまの代わりに・・・」

何とも自然にロザリオを手に入れたアルディス。
演出家の風魔先生も感嘆、ギャラリーも喝采。

「次はオリゲルド、私の番・・・
 アルディスの手からロザリオを奪う、その動機は妬み・・・!」

コント再開。

「まあ綺麗!そのロザリオをどうなさったの?」

皇太后から先ほどもらったロザリオをネタに僻むオリゲルド。

「仕方がないわね私は誰からも愛されてはいないのですもの」

「そんなお姉さま、みんな好きですわ。アルディスは愛しています。」

「ほんと?では私にそのロザリオをいただけないかしら?」

「そんな・・・これは・・・」

即興にしてはなかなかのコント。
代案として別の首飾りをプレゼントを提案するも僻んで却下。
誰からも愛されるアルディスと牢獄で育った自身を比較し、
卑屈に振る舞うことでアルディスの同情を買う。

「あたしへんだ・・・どうしたのかしらこの気持ち。
 オリゲルドがかわいそう・・・」

マヤの中のアルディスの優しさに訴える。

「これを差し上げるわオリゲルド。
 相手があなたならおばあさまもきっと文句は言わないでしょう。」

「ありがとうアルディスあなたはやっぱり優しいのね。
 ねえアルディス、これをくださったこと、この場で忘れてくださる?
 他の人にも話さないって約束してくれる?」

「オリゲルド・・・」

「これを直接おばあさまからいただいたって信じていたいの
 おばあさまがまだ私を愛してくださっているんだって信じていたいの。」

「ええいいわ約束するわ」

ここで振り下ろされる月影先生の杖とともにコント中断

「アルディスの今の気持ち・・・」

「よかったお姉様あんなに喜んでくださって
 その方がアルディスは嬉しい・・・
 おばあさまもきっと許してくださるに違いないわ」

そして再び杖が床を叩くと自動的にオリゲルドの気持ち。
お前らぶっつけで段取り良すぎる。

「馬鹿なアルディス、まんまとこのロザリオを手放した・・・
 誰からも愛されるあの子が妬ましかったわ。だから取り上げてやりたいと思った。
 それに・・・このラストニア国の影の実力者・皇太后ハルドラ・・・
 その皇太后のロザリオを私が身につけていることを知れば
 人々は皇太后が私の後ろについているものと思うに違いない。
 皇太后ハルドラの信頼の厚い愛する孫娘オリゲルド・・・
 このロザリオは利用できるわ・・・!」

「それまで!
 よろしい二人とも・・・元の稽古場に戻りなさい」

「やれやれ一時はどうなるかと思った・・・」

安堵の風魔先生。
キャスト変更を申し出た上に稽古ボイコットと主役二人を拉致されたのだ。

湧き上がるギャラリーたち。

「亜弓さん痩せたと思わないか?」
「そういえば、稽古がハードだからやつれたんじゃないの」

地下劇場での不摂生不健康、そして夜な夜な反社会的行為でやさぐているとは誰も知るまい。

 

そして近付く本番。
マヤは姫川邸で音楽聴いて茶飲んでケーキ食って本読んでる。
下宿開始当初よりも雰囲気が変わったと、メイドさんたちも噂している。

そして地下劇場では5キロの減量に成功した姫川亜弓。

「わたしは完璧なオリゲルドを演ってみせる・・・」

そして大都芸能速水真澄の元には
約束通り、マヤからの招待券が。

「舞台中央前より7列目・・・いい席だ
 素直といおうか馬鹿といおうか・・・
 俺の挑戦を受けてたったか・・
 演れ・・・!マヤ!
 そして俺との賭けに勝ってくれ・・・!」

素直で馬鹿なのはこの男である。
そしてせめて自分ところに所属してる姫川亜弓にも一言欲しい。

 

と言うわけで今回。
見事二人の王女はその心をつかんだわけであるが、
演っていることはほぼ即興コントである。
しかしそのコントをぶっつけ本番一発勝負で見事演じ抜いた三人の女優
さすがである。

しかも途中素に戻ったり、
月影先生の合図でテンポよく今の気持ちをいったり、
段取りの良さまで抜群である。

しかしこの二人が王女の心を得るまでのアプローチ。
かたや充実したバラ色のオフ、
かたや不健康からの減量と反社会的行為

何とも不公平である。
そして小野寺先生は自らの地位を確約するために姫川亜弓を推し、
速水真澄は姫川亜弓のことなど気にかけてもいない。

オリゲルドならずとも、姫川亜弓が僻み妬み、
オリゲルドの素質あり、と言われてしまうのも納得である。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第25巻・冬の星座(3)